石垣蔦紅『青き地平線』

老いの日は日日是好日老いの夜も愉快なりけり夢また楽し

 

めぐり合いとは愛すること。

この地上、何一つさえぎりもののない地平線のおおらかな青。

二人いっしょに老いの日々を温かく支えながら歌う。ハワイ在住歌人の試みる短歌とTANKAの世界。

 


oh,how I wish
I could melt
into the blue horizon,
drawing up my forehead
to the airplane window

(このままに青き地平線に溶け込みてゆきたし機窓に額寄せつつ)

 

四六版並製 2000円・税別


浅田隆弘歌集『四季の譜』

ひとひらの蓮の花びら水に散りうすくれなゐの小舟となりき

朝まだき人影のなき園内の回転木馬みな宙に浮く

木もれ日のなかをわが影歩みをり我をはなれし人のごとくに

雪の上に赤き椿の一弁が命あるかに輝きてあり

 

何ものにもしばられることなく、気ままに自分の思うままに感じたままに短歌作りに励んでいます。作品の出来不出来は別にして、短歌を作る過程が楽しみです。夢中になって自分の描きたいことをいかに表現したらよいのか、推敲をかさねることは苦しいけれども楽しいことでもあります。           ――あとがきより

 

四六版上製カバー装 2500円・税別


伊良部喜代子歌集『夏至南風』

 

南風(はえ)に吹かれ女身籠るそのむかし風の父待つ美(うま)し児いたり

戦わず勝たず敗れず生き来しを責むるが如き今日の夕映え
しらしらと明るき冥府あるというわが生れし島の真砂に
何もかも押し流しゆく大津波 かりそめの世の真実のこと
死者は青き海底(むゆう)に行くとぞ海底を抜けまた人の世に生まれ来るとぞ
産土は沖縄、移り住んだみちのく仙台。今なお残る戦争の傷跡、そして震災の悲惨。もはや私の中から何かが抜け出してしまったのか。
自らの魂の在り処を探し取り戻すために。
歌の霊異を信じながら歌う。
四六版上製カバー装 2500円・税別

五十嵐順子『奇跡の木』

奇跡の木(Survivor Tree)と呼ばれ一本の梨の木残る 証言者として

 

グラウンド・ゼロの復旧作業中に瓦礫の中から発見されたこの梨の木は、当初深刻なダメージを受けていたということですが、手厚い手当をされてよみがえり、大きく枝葉を伸ばしていました。人生の困難に直面したとき、この梨の木の幹の手触りを思い出し、支えとしたいという思いもあります。

                  〈あとがきより〉

 

みどりごのしゃっくり見んと若き父母その親たちが取り囲みいつ

うす青くパレスチナ暫定自治区見ゆただ静かなる対岸として

畑から冬瓜を抱いてくるときにこっそり夫は笑っていたか

子に負われ捨てられにくることもよし黄葉の峠越えつつ思う

くりかえす「あなたは私の雨」という手紙のことば幾度も胸に

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

 


麻生千鶴子歌集『白い道』

絵の題は「水のほとり」と記したりいつか住みたし水のほとりに
船の荷を解けばかさりと音のして旅順の丘に摘みし吾亦紅
葉桜の影濃くなれる曲がり角かの日の花は白く咲きいし
駅までは行かずはづれの踏切に人を送りき初夏のこと
零したる水を掬ひしおろかさもなべてさむ八十四歳
確認しておきたいのは、麻生さんの作品の基本的なトーンが常に前向きな姿勢にあるといふことだ。これは何も麻生さんがらくらくと人生を過ごしてこられたからではない。当然、様々な困難を抱へながら生きてこられたはずである。
しかし詩に対するときの選択として、明るい面から切り取りたいといふ姿勢がこれらの作品を作らせてきたのである。改めて、その姿勢の尊さを思つてゐるところである。
馬場昭徳(解説より)
四六版上製カバー装 2500円・税別

 

 


岩尾淳子歌集『岸』

校舎から小さく見える朝の海からっぽの男の子たち、おはよう
ほんのりと火星の寄せてくる夕べちりめんじゃこをサラダに降らす
あんまり思い出したくないんだ戦争は、血を噴きそうな先生の喉
とけそうな中洲の緑にこの世しか知るはずもない水どりの群れ
絡みつく猫を日暮れに押しのけて立ちたるままに冷酒をそそぐ


握りしめれば手のひらから消えてしまう三十一音。
短い歌が遠い鈴の音のようにこころに響く。
歌を詠む人がいて、その歌を読む人がいる。
そこに伝わるほのかな温もり。
歌集を編みながらそんなことを思った。(あとがきより)
四六版上製カバー装 2500円・税別

青き実のピラカンサ

小鳥屋のことりの声が聞きたくてプラットフォームの端つこに立つ
半桶(はんぎり)の飯に合はせ酢かけゆけば待ちゐし団扇三つがあふぐ
「高砂」の掛け軸が好きなをさなごは先づ指さしぬ翁の方を
スポイトに与ふるは水、やはらかき水、犬は五滴のみづを飲みたり
どうしてもザリガニ釣れぬ子がひとり煮干しの下に重りを結はふ
裂き織りに義母のもんぺを織り込みぬ朱色の布もときには入れて

日常のささやかな情景のなかに、過ぎ去った記憶のなかに掬いだす、あたたかな詩情ー。

人びとや自然と交感するやわらかな心が紡いだ歌は、誰もが抱えているかなしみをゆっくりと癒し、やがて未来への架橋となるだろう。
四六版上製カバー装 2500円・税別

大谷ゆかり歌集『ホライズン』

夜なべする君へうどんの満月が傾かぬようゆっくり運ぶ

鉛筆と定規の似合う雨の朝ななめななめに線生まれくる

目の奥にムラサキウニの鳴くような偏頭痛せり今日は満月

父母の言葉もこもこ着せられて蓑虫となる実家の茶の間

つるつるとしたもの多き世の中に桃は貴重な手ざわりをもつ

百を越すCAD起ち上がり自販機の開発室が息づきはじむ

 

ことさらドラマチックに作られているわけではないのだが、それぞれの歌の中にドラマがある。心安らぐ温かなドラマだ。登場人物が歌の中でイキイキと動いている点も、いい。

(藤島秀憲 帯より)

 

四六版上製カバー装 2500円・税別


糸川雅子著『詩歌の淵源 「明星」の時代』

近代短歌の淵源としての「明星」は、その創刊が明治三十三年と聞くと、確かに遥かに遠い過去のことに感じられてしまうかもしれないが、振り返ってみると、それは、思いのほか近くに、地続きに広がっている世界なのである。

そして、その豊穣さから、現代の詩歌が多くの恵みを受け、多くの果実を実らせてきたことを思わせるのである。

 

「はじめに」より

四六版並製カバー装 2500円・税別


梅地和子歌集『小窓を見つめる』

孤独感をはるかに超える冷酷な宇宙に生きる動悸苦しも

身体が冷えてふるえる夜におもう春の彼岸にたたずむ一人

微光さえ雲ににじみて消えてゆく鴉一羽の横切る時間

死がそこに扉をあけて待つを見ん真夏の夕べ心臓()れる

よき歌を生みたきこころ湧ききたりすべて金色の五月の夕べ

 

人は誰でも、たとえ玄冬の時節にある人でも、心はときめく。何故か。「歌」は、遊びは、宇宙の息吹、宇宙のリズム、生と死との溶け合いのなかで息づくものであるからだ。「文台」を大切にして、さらに、珠玉の作品を残すことを祈る。良い出会いに報いるためにも。

飯岡秀夫・序より

 

四六版並製カバー装 1200円・税別


赤木芳枝歌集『シドニーの空』

大陸の虹をくぐりて飛行機は母国の空へ去りゆくらしも

葉の色に同化せし虫ちらほらと朝光に見るキャベツの畑

豪州へエアメール給ひし師の文は歌に始まり歌に終はりき

三日月がふくらみ月になるといふ孫と豆腐を買ひに行く道

ここまでの水位も何ぞ生き生きと里芋の葉の緑がそよぐ

 

睡蓮の巻き葉くるくるあやつるは鮒か泥鰌か傘置きて見る

 

 

日本から遠く離れた大陸での日常を詠むことから始まり、日本に戻ってからも長くその国を想いつづけていることに深い味わいがあるといっていい。

晋樹隆彦・跋より

 

四六版上製カバー装 2500円・税別 

 

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落合瞳歌集『鎌倉は春』

遠住める子らに送らん絵葉書の末尾にしるす鎌倉は春

 海も空も絵本の中に見たような青に染まりし岬を巡る

初出勤の若きら溢るる駅頭に春全開の気は漲りぬ

雲連れて西から東に行く風を横切りて人は釈迦堂目指す

客待ちの人力車夫の影法師リズムとりおり鳥居見上げて

ただの主婦ただの嫁ただの母なりきただのわたしに悔い少し持ち

小さき頭もむっちり柔き手も足も降りつぐ五月雨のほの明かき中

 

平穏な日日が事もなく流れていく。それでいい。そのままがいい。深呼吸を繰り返すように、生の時間の(あぜ)にたたずみ、そっと掬いあげてきたものたち。それを歌と呼ぼう。歌に私を、私を取り巻くすべてを精一杯語らせよう。

 

 

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

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櫟原聰評論集『一期一会』

現代短歌を俯瞰しつつ、古歌の宇宙へと飛翔する自在さ。

文法から口語短歌を明快に分析するあらたな着眼点のたしかさ。

前登志夫門下の歌人が物静かに綴る

さらなる熟成へと向かう論と考察の展開!

  

・主な内容

前登志夫の歌と思想

存在の(すみ)()

『前登志夫全歌集』に寄せて

『樹下集』の頃

「私」論の地平

奈良の歌

ほととぎすの歌

古歌の歌人たち

 

四六版並製 2500円・税別

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赤松佳惠子歌集『いとほしき命』

 

幸せにあるやと受話器の兄の声すなはち父母の心と思ふ

この家を仕切れるわれが猫並みに「おい」と呼ばれてゐる不文律

猫二匹人間二人のこころ四つどれかが常にはみ出し加減

ショッピングカート以外に頼るものは無し外出のたび涙にくるる

体調不安・遠出不安に縛られてほんにわたしはあかんたれなる

 

飾ることがなく伸びやか、真摯な詠風のなかに人生のほろ苦さも感じられて、赤松さんのヒューマンな声をどの作品からも聞くことができる。

 

林田恒浩・跋より

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逸見悦子『野あざみ』

 

 

荷を送り発ちし子の部屋広々と三月のカレンダー風にゆれおり

 

すべてキャド駆使する職場になりし今われと製図台細々残る

 

花蜘蛛のいつしか傘の内側に止まりて共に参道下る

 

菜の花の黄色封じて送りくれし母よ彼の日よ今に抱きしむ

 

リズム良き足音駆けゆく窓の下あれは五分刈り青年の音

 

 

明け番の夫の挿したる野あざみの位置整える夜の食卓

 

 

逸見さんは平成三年に「歌と観照」に入会し、平成七年に新人賞にあたる、「歌と観照社賞」を受賞した。「野あざみ」は、おそらく作者の好きな花。山野にも郊外にも見られるが、紫の花の色はさえざえとして、野の花の強い生命力を感じさせる。

五十嵐順子・跋より

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

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安藤直彦『佐夜の鄙歌』

 

夏さればきよら流れの滑石(なめいし)にわれは鮎釣るその床石に

かたくり山に雪は明るく降りながらわれは来たりぬ咲くとなけれど

竜胆は平に添へてあるものを挿しのべてほそく鮎ほぐす指

ひさかたの光に音のあるごとく石をうちつぐ雪解のしづく

人の死をかなしびきたるわが(なづき)をひとゆすりせり朝の地震(なゐ)    

 

鄙に在っては、山川草木、鳥虫魚たちとの交感にあそび、

時として、産霊の神々に言問いながら、

伝統詩型の流麗な調べに、個と普遍の歌世界を喚び込んでやまない。

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

 

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おの・こまち『ラビッツ・ムーン』

 

水のようなドレスが着たい月の夜 光目指して烏賊昇ります

 

手合わせて水汲み運ぶおさな子の砂の穴いつ満ちるのだろう

 

卵割る指の加減を知らなくて殻は孵らぬいのちと交じる

 

脚本に「ああ」と書くのは楽しくて「ああ」という声一人一人の

 

空見上げ飛びたいウサギの耳は羽ソソラソラソラ月にかえろう

 

あをによし奈良の都の万緑に劇団ひとつ立ち上ぐる君 前登志夫 

 

月のウサギよ跳ねてごらん。

暮らしの隙間のメルヘンを物語るように、

定型という小さな楽器が演じ始める。

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

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今川美幸『雁渡りゆき』

これの世に抱かるるための髪を梳くたちまち髪さへ咆哮すらむ 

みづからは輝くはなし裸身こそ盛装なればすずやかに佇つ

わが裡にひとひらの(こう)あらざれば恋あらざれば生きざらめやも

耳はもつともあとに死すとぞ この夜更け死にきれぬ耳あまた浮游す

訣れいくつ重ねきし身をあらあらとひき寄せて詠む うたは恋歌    

火の酒を口移されぬ たましひの冥き韻きを雁渡りゆき

 

かなしみをこそ詠え。多くの死者たちとの和解のために。

うたは恋歌がいい。雪の夜に沈み、青空に抜けていくしらべとともに。

やわからな言葉と思念の深さとで幻視する世界が闇の向こうで輝き始める。

 

四六版上製カバー装 2300円・税別

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石川浩子『坂の彩』

星凍る空垂直に降りてきてサッカーゴールさえざえとあり

若きらは初夏の大気を切り裂いて一、二、三、四坂登りくる

キッチンは春のみずうみ かの世から父来てゆらり釣糸垂れる

独り身は寂しくあるか花水木坂の上にも坂の下にも

 

眠る前のバニラアイスの一匙を口に溶かせり 天上は雪

 

坂――風景の坂、心象の坂、人間の坂。

その向こう側は誰も知らない空間。

たとえばそれが希望のみえる明るさであってもいい。

現実と虚構とのせめぎ合いが迫真のうた世界を鮮やかに彩る!   

 

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

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梅本武義歌集『仮眠室の鳩』

誤爆なぞ当然のこと見つつ注す目薬さえもまともに落ちず

明らかに我も要らざる一人なりリストラ策を練りつつおれば

ひよどりの遠啼く夕べ腕を振り脂肪燃焼志願者歩む

山畑に竹を燃やせば谺して火遊び好きの孫ら駆け来る

洗濯物干す妻どこか若く見ゆ貴重なるかなこの窓の位置

 

梅本さんの歌にはどことなくユーモアがある。客観的に自己をみる姿勢が戯画的な表現につながるのか。この余裕、大人の男を感じさせる。「大人の男歌」である。

久我田鶴子・跋より

 

四六版上製カバー装 2400円・税別

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今泉進遺歌集『片翅の蝉』

片翅の失せたるゆえか捨てられて道に身じろぎながら蝉鳴く

拓かれて今は田もなし川俣事件ここにありしかありてかなしむ

脱ぎし服片づけくるるわが妻よありがとう長かりし勤め終えしぞ

秋風にかざして立てば風車のごとくわが五指なびくと思えり

妻問いにゆくか赤げら赤帽をかずきて森に波うちて消ゆ 

麻痺というあわれを知らず疑わず幼とりたりわが左手を

 

生きるということは「光」と「闇」の織りなす世界を走りきることであろう。今泉進の短歌の世界にはまぎれもない「光」と「闇」がある。昭和から平成の時代を誠実に生きた歌人の最後のメッセージ。

田中拓也帯文より

 

 A5版上製カバー装 2600円・税別

 

 

 

 

 

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岩井幸代歌集『アダムとイヴの手』


 

 夫逝きて家は四角のただの箱薄羽蜉蝣の持ち去る家庭

 

絡み合う君と我が四肢白亜紀の海に漂うひとすじの藻

 

教会の塔の先より明け始むドナウは黒き眠りのなかに

 

冬の夜のラフマニノフの「ヴォカリーズ」心に積もる雪の眩しさ

 

アルゼンチンタンゴ流れる古きカフェ仄暗き灯に沈むひととき

どうしようもなく悲しくて、悲しい思いを書いているうち短歌になったので、短歌を真剣に勉強しようと決めたのだそうです。まっすぐな人だと私は思いました。切ない感動を与える歌集です。  角宮悦子

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

 

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岩井幸代歌集『アダムとイヴの手』

 

夫逝きて家は四角のただの箱薄羽蜉蝣の持ち去る家庭

絡み合う君と我が四肢白亜紀の海に漂うひとすじの藻

教会の塔の先より明け始むドナウは黒き眠りのなかに

冬の夜のラフマニノフの「ヴォカリーズ」心に積もる雪の眩しさ

アルゼンチンタンゴ流れる古きカフェ仄暗き灯に沈むひととき

どうしようもなく悲しくて、悲しい思いを書いているうち短歌になったので、短歌を真剣に勉強しようと決めたのだそうです。まっすぐな人だと私は思いました。切ない感動を与える歌集です。

 

角宮悦子

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

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岡一輻歌集『狂詩曲-rhapsody-』

花手折り供へむ仏もあらずけり 身裡に餓鬼を養ひいるに

多宝塔にのぼりしままの鼠なり 揺れに怖づつつ逃げるのならず

大型の業務用の冷蔵庫 かなしきものや値段の五円

八熱のうらに八寒地獄ある 後の世しらずわれら踊りき

痩せ猫を紙の嚢に入れ閉ぢる 泯びの唄と海に棄てたり

腹中にたゆたふ菩薩ひきあげり 切り刻みたり溜池に棄つ

 

遠い日の時間〈全共闘騒動の時代〉に若きらが漂流していた。地獄極楽を行き来し血糊が付いた時間のなかで変質し石化。そんなものに囚われ、ひたに吁鳴き続けてきた男が、今その暮らしの断片を掬いあげ短歌と映した。作品に見える著者の自己打擲、粘着質な文体は強烈で衝撃的だ。その質感は戦後青春のひとつの淡い模様であり、それへの遅れた〈三下半〉だろう。また豊穣の今生にあって人が忘れようとしている深層からの声文だとも云える。  帯文より

 

 

四六版並製カバー装 1000円・税別

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小川佳世子『ゆきふる』

▪︎第34回ながらみ書房出版賞受賞!

 

ゆきふるという名前持つ男の子わたしの奥のお座敷にいる

なかぞらはいずこですかとぜひ聞いてくださいそこにわたしはいます

カザフスタン生まれの米国人夫妻庭を非常にゆっくり歩く

はらわたをいくど断ちてもまだなにか切れないものはそのままにして

お葉書の数行の字の「大きさ」の中に棲みたく思ってしまう

 

ゆきふる・・・・その名前を私が呼べば、

永遠にきよらかな生を私に歌えとこたえる。

ただ一つ確実なことは、

今なお私も歌の天空を飛翔し続けているという事実。

世界はあまりにもまぶしすぎるから。

 

 

現代女性歌人叢書④ 2500円・税別

 

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小笠ミエ子歌集『日月』

夫ゆきて日月(ひつき)経ぬれば淋しさに時効あるかのごとく人言ふ

すすき原を風わたるときいつせいに穂先たふして真白となれり

月満ちて生まれ来れりをみな児は膚うつくしき桜色して

松落葉しき降る道のふかぶかと()(うら)にやさし海へ通ひぬ

道に迷ふ夢をまた見ついつの日か徘徊なさむ我にあらずや

 

むらさきの濃き長茄子の三本を旅の鞄にをさめ帰り来

 

日が過ぎる。月が通り過ぎていく。すべては忘却のかなたへと。

おだやかな心には、おだやかな光景がおのずから宿る。

この世の中のすべてを受容し、ひたむきに歌と向き合う至高の時よ!

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

 

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岡本育与歌集「秋なのに秋なので」

眉月の風に飛ばされそうな空張り付くようにその位置保つ

全(まった)かるものの少なきこの世にて水面を照らす落暉の豊かさ

生きている喜び素直に歌いつつ如月の空に初雲雀鳴く

地の底に宇宙の音の生(あ)るるごと水琴窟の音は透明

星光を小さき花びらに受けながら夜を白々と秋明菊咲く

 

英語版も出してきた著者の第六歌集。不穏な時代にあって、危機意識が風化されていくことを怖れる。あらためて自然のもつ生命力に帰依することで、想像力を培う実像。

篠弘

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

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碇博視歌集『ざぼん坂』

ざぼん坂に蝋梅が咲き約束をしたかのやうに粉雪の降る

立ち行きし人の席には空白の像(かたち)のありて長く目をやる

平飼ひの対馬地鶏が一斉に敵見るごとくわれを見るなり

焼かれたる『一握の砂』は灰の花頁の数だけ花びらを持つ

われを統ぶる銀の電池は八年の命を繋ぎ動き出したり

教会の床にガラスの色が落ち赤き衣の聖者を踏みぬ


歌ふことによつて対象との距離を測り、そして自分の心に受け入れてゆく。

短歌とい表現形式のもつとも大切な働きを碇さんはその歌作りの最初から手中にしてゐた。

馬場昭徳・解説より


四六版上製カバー装 2500円・税別

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尾崎朗子歌集「タイガーリリー」

恫喝のやうに降る雨帰らねばならぬ一つ家まだわれにあり

ていねいに窓の結露を拭ひたれば硝子もわたしもすこし温もる

純情を暴走させることもなくタイガーリリーは胸に人恋ふ

アキアカネひとつ群れより零れ落ちわが中空に光(かげ)を曳きゆく

反論はしないけれども会議前トイレに眉根をよせる練習

 

尾崎朗子さんの作歌への情熱はすばらしいが、その炎の色は涼しい。さわやかな少女のような憧れと、社会的正義感とが同居しているところに持ち味がある、うたう対象に正面から向きあうまじめさが、明るく弾んだ抒情を生んでいるが、それが時にユーモアともなる。仕事をもつ女性らしいスピーディーな運びで結語をきめる正直さは天性のものだ。

馬場あき子

 

四六版上製カバー装 2400円・税別

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上村典子歌集「天花」

文具屋の縦罫横罫あゐいろに秋のノートの無音は韻く

ひととわれ持たざる太郎まろまろと月の太郎は泛きあがりくる

乗り継ぎに走りくだりしおごほりの一番ホームもう用はなし

親切にあづきをのせてわかちゐし二歳は父と天花(てんげ)の庭に

雛の日の土曜ひながくあたたかしゆふかげと聴くジョアン・ジルベルト

 

光と影とのこまやかな明滅。それがこの世に在るもののすべてを照らし出す。たとえば、こらえきれない生の苦しみ、疼き、そして希い。

いま、歌という透明な灯を天の深みにともす!

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

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池原初子歌集『七歳の夏』

民謡の安波の真はんたは山深き絶壁にして海を見下ろす

ちちははよ御祖先(みおや)も出でませ陽の下に遊ばむ今日の清明祭(シーミー)一日

教科書より集団自決の軍命を削除せよとふ歴史危ふし

舞台に座し糸車(ヤーマ)廻せばいにしへの女の生業(なりはひ)胸に迫り来

焼け出され着の身着のまま逃げ惑ひ捕虜となりしは七歳の夏

 

戦後七十年という大きな節目に、池原初子は歌集を上梓した。唯一地上戦となった沖縄で生れ育ち戦禍を潜り抜け、その歳月を振り返る。

玉城洋子・跋より

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

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太田昌子歌集『栴檀の花』

中学にこの春送りし児童(こ)等の分届けばしきりに会いたくなりぬ

山深き英彦の坊の跡にして居ながらに聞くうぐいすの声

梅園の野点ての席に風花を一片受くる熱き茶碗に

歳晩に金婚の鐘を相撞けり吾が町香春の平安いのり

栴檀の花散りやまず池の面を覆いつくして風にたゆとう

 

栴檀の大樹の下を通って毎日散歩する、春には美しい花をつけて母校の周りにある樹、著者にとってこの栴檀の樹は暮しの中の大切な点景です。

 

中原憲子・序より

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

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大塚健歌集『経脈』

へばりつく藻のごときものふり払ひ得ざればかこの沼に棲み古る
過去の人未来の人もまじりて嬉しくなればこをかけたり
眼が開かないと思つてるうちに死んだと声すさうか死んだか
永遠にちぢまらなぬ微差微差ゆゑにむだに希望をいだかしめつつ
しあはせはなるのでなくて感ずるに過ぎぬと暖炉かこむ幾たり

ものを見る。相手を見る。自分を見る。
人生の深まりとともに内側が透けて見えてくる。
見えすぎるがゆえに苦しく、さびしい。そして何より楽しい。
人間心理の微妙さ、複雑さを温かく定型の器に盛る。
その絶妙な色と形。
さて、これからは何を盛り込もうか?

四六版上製カバー装 2400円・税別

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石井ユキ歌集『海と原野』

ひと跨ぎほどの流れに添ひながら常世の花か珊瑚草さく

野分たつウトナイ沼の白鳥が真実さむしと白き息吐く

手に囲う草蜉蝣の冷たさや夏の日暮れの秋のとば口

かなしみを声あげ泣きしことなくてわが少女期の離岸流あをし


右眼を瞑り左眼で現実をとらえている。

右眼は現実の彼方のまぼろし、左眼ははるかに広い世界がはっきり見える。実と虚を見事に表現している。

山名康郎


四六版上製カバー装 2500円・税

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市川正子歌集『石礫』

詠みがたきものあるゆえに歌を詠むささら揺れくる麦の穂波は

原子炉を汚染水にて冷やす構図映像なればたやすく流る

母の背に応召の父を見送りし遥かなる日の辻明の辻

村を去る者を見送り立ちつくす火の見櫓は父の後姿(うしろで)

空海の『風信帖』の「風」の字を指になぞりて遠く旅する

灯の下に見ゆるものだけ見る今宵わが翳ひとつそこに在るなり

 

『辻明』から立ち上がってくる作者像は、たくましい行動力と経験の智慧をあわせ持った朗らかで知的な女性の姿である。

七十代を迎えた今も悩める若者の電話相談に心を傾け、反動化する時代に怒り、畑仕事に勤しみ、時おり襲う死と孤独の影を見つめ、気まぐれな伴侶のような猫を愛し、ふと海外の旅に出る。そういう日々が微妙な心の陰影とともに自在に歌われた一巻である。

島田修三

 

A五版上製カバー装 2600円•税別

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伊藤純歌集『びいどろ空間』

まくらがの古河(こが)の庵の栃の木の幹は太かり葉は茂りおり

ひぐらしを耳の奥処に棲まわせてたましいふかくふかく青みゆく

曲名は記憶の果てに漠としてあの日おまえが弾きたるショパン

万物は日暮れてやさし振り向きてただ吹く風を確かめてみる

見はるかす駿河平に金色のきよらを放ち日のくたちゆく

空は空の悲しみを持ち光つつかげりつつ青し今日の明るさ

 

 

「群帆」代表を引退された師後藤直二を、幾度か訪問するが、「まくらがの」と枕詞を使う格調高い韻律は、師への限りないオマージュになっていよう。
大原葉子•跋より

 

四六版上製カバー装•2500円税別

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岡井隆著『新わかりやすい現代短歌読解法』

誰でも短歌を作っていくとぶつかる疑問の数々。

むずかしく考えることはない。できるだけたくさんのいい歌と出会うこと。そして、こんなふうに読み解けばいい。じっくりと味わえばいい。

現代短歌を牽引し続ける歌人の、明快にして核心をえぐる短歌説法!


 

現代短歌講座

 破調の歌とはなにか

 字余りの話をしよう

 リアルな表現について

 若い人の歌について

 連作のつくり方について

 毎日かならず一首

 

講演とインタビュー

 辞書を楽しく使う方法

 私の出会った歌人たち

 よい歌の条件を考える

 愛の歌とはなにか

 新しい歌と古い歌

 3・11以後歌は変わったか

               目次より


四六版並製 2800円•税別

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浅田隆博歌集『四季を呼ぶ声』

澄みとほる朝の空気の清ければ空の高みに悲しみのわく

道端の凹凸乏しき石仏の顔をほのかに冬日のてらす

同じ木の同じほつ枝に今日もまた朝日をあびて四十雀鳴く

暁の草生のなかにからすうりいまだ萎れず白く咲きをり

 

現在、私自身が作っている短歌もいってみればエンディングノートなのかもしれないと思いました。短歌を作るということは、自分の分身を生み出すことに他ならないからです。また短歌は自分自身を写す鏡でもあります。従ってこまかい技術的なことはさておき自分を人間的に高めてゆく必要があります。ーあとがきより

 

 

四六版上製カバー装 2500円•税別

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荻本清子歌集『夕宴』

ひらひらとひらひら残り葉そよがせて冬木は氷の華になるべし
樹の陰に微睡み樹皮の臭いくる初夏の風に身を預けおり
人も虫も葉裏に翳り生きゆくを愛しきことを思いいずるに
かがやきて言葉が飛翔するときの山なみ夏の雲を追い越す
星空の広がる野面に飼い犬と仰ぎ見し銀河今に澄みおり

  おおらかな心で森羅万象を見つめる眼差し。
  見るものすべてが歌の言葉となり、
  しらべとなる。

ゆっくりと成熟してゆく    
宇宙の果実のように、気高く、清浄に。   
四六版上製カバー装 2500円•税別  

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井上寛江歌集『新桑繭』

四つ目垣に翅を休める秋あかねふいにゆばりす夕焼けの空
働きし手チャルダッシュ弾きし手我慢の手硬直する手を握りしめたり
秋明菊は風に揺れいてひとりゆく夫亡きあとのわれの坂道
筑波よりのぞむ八溝山の盆地霧たなびく里を真綿に包む
雪明りにほのかにみゆる雛の面昭和をともに生きし雛たち

作者は実に自由にのびのびと歌っている。しかも歌材は豊富で変化に富んでいる。としてもだれもが経験する日常•生活の範囲を出るものではない。こういう歌の累積こそ、個性的と言えるのかもしれない。たのしい歌集である。 岩田正


四六判上製カバー装 2500円•税別

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小川菊枝歌集『せせらぎ』

紅葉の深まる一樹見上げ佇つ入り日に映える明日は散る色

ここ幾日夢路にありと思ふまで桜しらしら沼辺にかすむ

娘が着て今また孫が着るわれの編みたる紺のセーター

木洩れ日を踏みて巡れる名水の流れ涼しき武家屋敷跡

燻りて抗ふ身ぬちの虫あれば気の済むまでは燻らせおかう

 

小川氏は倦まず弛まず、文字通り一歩一歩着実に詠み続けてきた。本書の作品に見られるような、一件地味な作風•作品の底に漂う詩情は、長く精進を重ねた、偽りの無い成果である。

野地安伯•序文より

 

四六判上製カバー装 2600円•税別

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大建雄志郎歌集『風の回廊』

削ぎ落とし筋骨のみなるチェーホフの散文の簡 短歌にぞ似る

英国に〈目的なき塔〉なるが所々にあり余分なることまた文化なり

かなしみは溢るるほどだが溺るるはさらにかなしく蔵ひて生きむ

花は地に落ちしあとからが本物と或る画家の言葉忘れがたしも

紫陽花の蒼なくば梅雨も寂しからむ麦酒に枝豆われに我が妻

 

チェーホフを愛しながら、大建さんは、ビジネスの世界で極限の緊張も乗りこえてこられた。むしろ、努力の陰に文学への心寄せがあったというほうが現実であろう。長年の苦労満載の体験さえ、志を貫いてのちの創作姿勢に生かされている。…今野寿美

 

四六判上製カバー装 2500円•税別

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岡本智子歌集『天上の紅葉』

伯母ケ峰の一本だたらも杖をつき天上の紅葉見上げてをらむ

美容室の大き鏡の中にゐる二上山雄岳の前にすわれり

水色の空は螺旋に高くなり夏も終わりへと動いてをりぬ

開け放つ三階の窓に入り来たる蜻蛉ありわれは嬰児を抱く

背景宮沢賢治殿、二万数千の星を運びし銀河鉄道

見上げれば月と星ありはろばろと大歳の闇に包まれてゐる

 

山深く分け入って出会う紅葉はこの上なく美しい。あたかも天上からの賜り物のように。かつて作者の作歌世界を「しらべがふくよかで美しく、一人の純真で、感じやすく傷つきやすい女性の修羅」と先師•前登志夫は評した。詩歌の時空にひびく清新な抒情。

 

四六判上製カバー装 2500円•税別

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岡田令子歌集『青き壺』

みほとけに遠き己が浴槽に両手を合はす木になりたくて

目瞑れば夢の辻たつ梅林の蕾の間に青き海あり

「わが骨は海に流せ」と口ぐせの父よさびしき白梅香る

肉叢を削ぎ落とすまでの怒りもて春の汀に脚洗ひ

肉塊のくづるるごときさびしさぞ赤き人参おろしつつ

蒼穹に紛れゆかむか青き芥子物憂きまでのこの明るさよ

 

 

先師•橋本武子とのめぐり会い。基地の街•岩国での長い暮らし。さまざまな偶然の重なりが人生であるとすれば、歌とは流れゆく河、その清冽な水を自らの乾いたこころに満たすおおいなる壺。

 

四六判上製カバー装 2500円•税別

 

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植田美紀子歌集『ミセスわたくし』

岩盤浴終えて帰りのうどん屋にすっぴんのわれの啜る素うどん

目のふちを掻く快感におぼれつつ聞いていますのポーズは保つ

塩茹での刑を逃れし菜の花が廚の隅に満開となる

生き物はかくれんぼ好き鉢の下に蚯蚓、団子虫、私も入る

 

 

ミセスわたくしとは誰か

 

妻として母としてときに娘として。勤め人として、ときどきは〈ひきこもり事務所代表〉として。いくつもの顔を精力的に生きる多面的な生は、置き換えのきかないただ一人の「わたくし」の人生。多忙な日々の中で、自然を見つめ、人に出会い、みずからを振り返る作者の眼はつねに好奇心をたたえ、その言葉は率直で向日性にあふれている。充実の日々を、軽やかに鮮やかに刻む第一歌集。

大口玲子

四六判上製カバー装 2500円•税別

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昭和9年生れ歌人叢書4『まほろばいづこ 戦中•戦後の狭間を生きて』

こうした仲間をもてることは、私たちのこれからの生をより豊かに、温かくしてくれると思う。

戦後、奇跡のようにつづいた戦争のなかった時代にも、最近は変化が兆しはじめている。

そうした時点において、本会の意義は一層重要さを増している。各自の戦中•戦後の体験記であり、戦争の無い世界への熱い祈念である本書が、会員のみならずひろく一般にも読まれ、後の世代の平和に貢献できるよう、心から願っている。結城文•序より

 

軍歌からラブソングへ         朝井恭子  

少年のころ              綾部剛   

灯火管制               綾部光芳

鶏の声                板橋登美

ニイタカヤマノボレ          江頭洋子

戦の後に               大芝貫

語り部                河村郁子

昭和二十年八月十五日         國府田婦志子

戦中•戦後の国民学校生         島田暉

空                  椙山良作

確かなるもの             竹内和世

村人                 中村キネ

太平洋戦争ー戦中•戦後         花田恒久

氷頭                 林宏匡

記憶たぐりて             東野典子

少年の日の断想            日野正美

宝の命                平山良明

空に海に               藤井治

戦中戦後               三浦てるよ

椎葉村にて国民学校初等科の過程を卒う 水落博

夏白昼夢               山野吾郎

生きた時代              結城文

ひまの実               四元仰

 
並製冊子版 2000円•税別
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磯田ひさ子歌集『還る』

還ることあきらめたるか七夕の短冊に何も書かざる少女

苦しめる友も救へず死に近き母も救へず雪降りしきる

秀でたる一首なければわが後はただ善き人として消ゆるらむ

借財をしたたか負ふ身に牛を引き仁王立ちなり左千夫の写真

 

還るー嬰児へ、いや未生以前の世界へと。悲喜こもごもの日常も、世の中の激しい変化も、天変地異も、すべてはこの世に生きて歌うことのあかし。

歌誌「地中海」での長い作歌の時間は成熟を遂げつつ、おおらかで温かい言葉としらべを自らの内に呼び込んでやまない。

 

四六判上製カバー装 2600円•税別

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石川輝子歌集『水無瀬川』

不意によぎる時雨にうたれ炎なす狭間のもみじ蒼白となる

池底よりわく水あれば氷河期の浮水植物はまなうらに咲く

かえで葉の翳あやなせば含羞のおもて湧きくる峡の石仏

バラ色の未来ゆめ見しわが影のいたく小さく夜の道をゆく

 

鮮烈な歌集『シネマ』を遺した新芸術派の石川信雄、その実妹の第一歌集。一人旅を愉しんだみずみずしい初期作品で、のびやかに各地の風土を称える。透明な感受性に注目する。(篠弘)

 

四六版並製カバー装 1200円•税別

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大崎瀬都歌集『メロンパン』

メロンパンのなかはふはふは樫の木に凭れて遠き海を見ながら

生き物のまぶたはうすし目を閉ぢて春の光に充たされてゐつ

内側からてらされてゐるマネキンのからだに似合ふ浅葱の下着

棄てられぬものを入れおく缶は棺ふたするたびに別れを告げる

本当は生きてはゐない日々だから葡萄は喉をすべり落ちたり

 

若くして先師•前登志夫と出会う。その分厚いデーモンのような詩魂をどこかで受け継ぎながら、清新でナイーブで屈折した独自の世界を生きて、歌う。人生の陰影はいよよ濃くなっていくが、深いかなしみすら、作者のなかでは軽やかで透明なしらべへと昇華されていく、そんな不思議さ、自在さ。

 

四六判上製カバー装 2500円•税別

 

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北村芙沙子•中川禮子•結城文訳 ウィリアムIエリオット監修『茂吉のプリズム』

『赤光』Shakkō  Red Light

 

かがまりて見つつかなしもしみじみと水湧き()居れば砂うごくかな

crouching 

I observe the sand moving

as the water

springs up

feeling its sadness deeply

 

kagamarite

mitsutsu kanashi mo

shimijimi to

mizu waki ore ba

suna ugoku kana

 

 

死にしづむ火山のうへにわが母の乳汁(ちしる)の色のみづ見ゆるかな

in a volcano,

quiet as death,

I can see the water­

its color,

my mother’s breast

 

shi ni shizumu

kazan no ue ni

waga haha no

chishiru no iro no

mizu miyuru kana

 

四六判並製カバー装 2000円•税別

電子書籍版…1000円

 

title "Prism of Mokichi"

written by Mokichi Saito

translated by Kitamura FusaKo & Yuki Aya & Reiko Nakagawa & William Elliott

 

Mokichi Saito is the most famous tanka poet in Japan. 

He was born at 100 years ago, and he made the foundation of Japanese  modern tanka poetry. 

 

We have translated into English his first poem book.

 

2160yen

e-book…¥1000

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大西百合子歌集『峡にふる雪』

細々と歩めるほどの雪を掻き人の世につなぐ路開けておく

たてがみのごとくに髪をなびかせて冬のベンチにわれは旅人

刈り草の匂ひに杳き母ありて火の手のごとき峡の夕映え

更けし夜の風音ならむか全身を耳にして吾も山の生きもの

雪見障子に雪の舞ひをり琴の音の早春賦はわたしをめぐりゆく風

 

島根県青谷町山根。しずかな山峡の里で一人うたを詠み続ける。「あなたの歌は深い。歌が深いということは心が深いということです」との先師•前登志夫の言葉がどれほどの励みになったことだろうか。峡とはこの世と異界とをつなぐ聖なる結界だ。

四六判上製カバー装 2625円•税込

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大熊俊夫歌集『神田川春愁』

生業のなき日は心のびのびと歌書•歌集読み古書街歩く

わが家の垣の青葉に沿ひて過ぐきのふ雨傘けふは日傘が

夕空を音もなく過ぐる飛行船おほかた人は名を残すなく

 

衒いなく自らの日常を詠んで多くの共感を呼んだ前歌

集から、さらに滋味と渋みを加えて新しい世界を切り

開いて行こうとする著者の、真摯な姿がどの歌からも

強くうかがわれる心地よい歌集である。 林田恒浩

 四六判上製カバー装 2625円•税込

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大竹蓉子歌集『花鏡之記』

思はざる嘆き押しくる世にあれど花は無心に爛漫の春

疾風吹く平久保岬春くれば薊の花に虹色の昆虫

あらざらむことと思ふにある奇遇月は萬象の眼に宿る

自生地の尖閣に咲くうるはしき紅頭翡翠蘭夢に顕つ

花を観る花に問はるるひたごころその行くかたや花野

惻陰の心ごころに守られて来たる歳月 金環日食

 

無心に咲く花々の色香にあふれる個性•神秘的な生殖の営みには、

いっそう畏敬の念が深まります。

それらは人生の青春の美しさに等しく眩しくもあり、廃れゆく過程に見る老残の美も蓋し見逃すことができません。

すべからく人もまた老境の心理によって、美醜いずれかに傾くか、との思惟に至ります。(あとがきより)

 

A5判上製カバー装 2625円•税込

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王紅花歌集『星か雲か』

池のほとりに椅子を運びて座りしが何を見てゐむ 星か雲か

その時の気分に過ぎず 流れ来しかなぶんを溝川より掬ひて放つ

飼猫を探しゐるとふ貼り紙のその猫はきのふわが庭に寄りき

ゆうぐれの庭にコスモス揺れてゐて何故だかものすごく寂しい

カー•ナビに誘導されて広き墓地の迷路を進む 亡母に会ふため

 

植物を愛で、昆虫の生命に細やかな目をそそぐ。

視線は時に、蜉蝣や蛾の腹にまで至り、ふしぎな感性と美によって研ぎすまされている。

 

四六判上製カバー装 2625円•税込

 

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榎本光子歌集『ふれ太鼓の街』

ふれ太鼓が遠くひびけり軽やかに心の憂さを捨てよと聞こゆ

われと子の絆となりし連絡帳古りて黄ばむを手にとりて見つ

釣を好む夫がつね行きし上総の海に散骨をと言ひ君涙ぐむ

 

ふれ太鼓がひびき川風が通う両国の地。

税務会計事務所を開き、半世紀近い歳月を作者はこの地で迎えた。女性の自立を願い、それを成しとげた著者の第一歌集。

激変する日本の社会経済の中で苦闘する人々に、税理士として寄りそって北作者のまなざしは、あくまでも優しく温かい。

虚飾を排し、生活の真実とは何かを問いかける作品集である。

雁部貞夫 帯文より

 

A5判上製カバー装 2730円•税込

 

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石橋美年子歌集『母と暮らせば』

この夏を逝かしむ蝉の絶唱よ無頼の我の手足さびしき

白粥にクレジーソルト少しふり胃腸の休養母と暮らせば

食細き夏の昼餉は冷麦を言葉飾らずうましと母は

人生に帰途の美学はありときく欲なき母へのひとさじの粥

 

老いてゆく母とともに暮らし、

介護し、看取り、そして母の

永眠までの長い時間。

作者はやさしく、

温かいこころで精一杯に歌い続けた。

 

四六判上製カバー装 2625円•税込

 

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上田吟子歌集『つばめの射程』

ひるがへりひるがへりつつ空を斬るつばめの射程にわが家はありて

われといふみなもといづく大和三山をはるかに見つつ明日香風聴く

夜の闇を風にのりくるほととぎすチチハハ欠ケタカ雨夜ハ寒イゾ

夢いくつこぼして人は生きゆくや春のみぞれを掌に受けにつつ

「國」といふ文字木簡のいでし田に千年むかしの泥の匂ふも

 

鳩のような丸い目は、いつも好奇心にかがやいている。嫁した明日香を基点に、外へと向ってゆくこの人のエネルギーは、どこから発しているのだろう。牧師であった父は、娘たちに「きん•ぎん•さんご」と名をつけた。「ぎん」は吟子。“佳き歌うたえ”今日も父の願いに導かれるかのように、吟子さんは詠いつづけている。

———久我田鶴子

 

四六判上製カバー装 2625円•税込

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今関久義歌集『四天木の浜』

片寄りに松の秀なびく雲低し風にあらがふからすが一羽

許されてわれはあるらし妻病むといへども共にけふ望の月

明かすべき人ひとりなし幽囚の思ひに耐へて配膳を待つ

海鳴りの太古の響き入れ替はる大き玻璃の重きを引けば

ちちのみの膝をたらちねの乳を知らず老残一期きはまらんとす

 

自然をそのまま言葉にしているのであるが、えいえいと読みつづけてきたその世界には、いつのときも、反骨精神が息づいているのではないか。  大河原惇行 序より

 

四六判上製カバー装 2625円•税込

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地中海青嵐グループ合同歌集Ⅱ『青嵐』

くずの花咲く川土手の草いきれほそくみじかくきりぎりす鳴く 

中須賀美佐子

三枚の田によろこびとはじらいの早苗が揃い風にふかるる   

檜垣美保子

夕暮れのヒマラヤ杉の一本昼よりもなお際立ちてみゆ     

深山嘉代子

赤い薔薇あなたの持てる花言葉今の私に少しください     

藤井満江

ひとはただ影とし峠越えしならむおほきおほき残月の朝    

松永智子

 

青嵐グループ、三十一年ぶりの合同歌集

四六判上製カバー装 2625円•税込

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小黒世茂歌集『やつとこどつこ』

石を抱く木の根の恋をおもひてはくをんくをんと裏山は泣く

八月の真夜にしやがめば亡母ゐて壷は最後のひとり部屋といふ

涙目のごとく湖冷ゆ うた一首を成仏させれば虹に青濃し

びいいーんと夜気すみわたり大峰の月は謀反のやうにあかるし

ビニールの疑似餌に掛かる真鯛にてやつとこどつこで引きあげし祖父

 

日本人のこころの深層に迫ろうと、古代幻視の旅を続ける。

うたとは、そんな風土との言問いと鎮魂のなかで自ずから生まれる。時として呪文のごとく、あるいは哄笑のごとく。そして聖なる語り部のごとく。

 

46判上製カバー装 2625円•税込

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宇佐美矢寿子歌集『黒揚羽の森へ』

■平成24年度 茨城文学賞(短歌部門)授賞!

 

黒揚羽、青筋揚羽の翅黒き蝶を舞わせて過ぎる八月

月光を胸の隙間にみたしつつ深海魚のごとく今宵眠らん

火の硝子に息吹きこめし風鈴の鳴るはかすかな風の呼吸か

ああ空も傷を負いしか裂傷のごとき三日月きりりと照る

星空に近きひとつの窓灯る祭りの後のような寂しさ

かなかなの澄みいし日暮れ父よちちいかなる声に返しくるるか

 

感覚の特異性

 

宇佐見の作品の魅力はいくつものコスモスの広がりにより、叙情を裏打ちした内容が深くなってることであろう。

鈴木淳三 跋より

四六判上製カバー装 2625円•税込

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小木宏著『歌人の戦争責任』

歌人の戦争責任

 一、いまだにあいまいな戦争責任

 二、戦争、結果責任

 三、戦争責任

 四、歌人の戦争責任

  (1)昭和裕仁天皇の責任

  (2)内閣情報官•井上司朗

  (3)陸軍将軍•齋藤瀏

  (4)「新体制」に能動的に迎合した歌人•太田水穂

     帝国議会議員•吉植庄炊亮

 五、著名歌人たちの戦争責任

  (1)折口信夫の戦争責任

  (2)斎藤茂吉の戦争責任

 六、反省しなかった歌人たち

 七、宮中歌会始と歌人

 おわりに

 

木俣修と戦争

 一、傷つけられた魂

 二、「孤独」を生きる

 三、迎合者としての生

 四、歌人としての信念

 

歌人と戦争詠ー渡辺良三『小さな抵抗』を中心としてー

 はじめに

 1、捕虜刺殺を拒否した二等兵

 2、戦争行為への懺悔

 3、戦争行為の残虐性

 4、戦争行為と短歌

   ①渡辺良三の場合

   ②川口常孝の戦争詠

   ③宮柊二『山西省』から

   ④渡辺直己の戦争詠

 5、作品から見る渡辺良三の反天皇

 6、おわりにー短歌と戦争

四六版並製カバー装•1050円(税込)

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太田豊歌集『時の秤』

合併後残れる者も出てゆきし者も辛酸を嘗めし年月

現代の閉塞の中をそれゆえに儲かる商ひきつとあるはず

右顧左顧ところ構わず平こらす踊念仏のふだ配るごと

職場にて一人励みぬ優れたる人と社員に思はれたくて

親しげに会社に通ひ綻びを見つけ合併の楔打ち込む

取引の未収七百万取り立てを頼まれ苦し六十四歳

 


近現代の短歌に欠如するものがある

とすれば、それは経済観念だろう。

私たちはいま経済を切り離したところに住むことは出来ない。

太田豊氏の歌集『時の秤』は生活凝視の歌であるが、

現代の経済と切りむすぶ歌でもある。  島崎榮一•帯より

 

A5判上製カバー装 2730円•税込

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足立晶子歌集『ひよんの実』

■平成25年度日本歌人クラブ近畿ブロック優良歌集

 

青空にひよんの実吹いて遠い日の風の中へ中へ行くなり

すこしづづ水を零してゐるだらう震へ止まざる地球は今も

落ちてゆく椿を持つてゐるやうな昼の半月なかぞらにあり

すんすんと青田に鷺をばらまいて天地無用の今日の青空

大切な茶碗が割れておしまひの今日の終りをふつと笑ひぬ

レタス箱におさなご積んで自転車は星かなにかを零してゆけり

 

かぎりなく続く青空。遠い日の記憶のように。

いのちの奥に底光りする純粋なたましいを抱きかかえつつ、

透明な光の輝きにむかって、作者の眼差しはどこまでもやさしい。

 

四六判上製カバー装 2520円•税込

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大島史洋歌集『遠く離れて』

山深く住むならねども目を閉じて峡吹きおろす風と思うも
積まれいし書類がいつしかなくなりぬ癌を病みいる同僚の机
生きている者のおごりは世の常の離反のごとく病む人を見る

職を退き、閑居の日々を送ろうとする歌人のこころに去来するさまざまな人生の鳥影。
それらを静かに受けとめ、淡々と詠む。
生涯の師•近藤芳美への回想、ふるさとのこと、母の病いと死など。
感性鋭く、批評性をたっぷりと蔵した大島短歌はいま滋味と渋みを加えつつ、新境地へと向う!
A5判上製カバー装 2835円•税込
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内野光子歌集『一樹の声』

雨来たる敗戦の日にして野に立てば五輪の金も国家もいらず

乱歩展年譜に父の生涯を重ねつつともにこの街にあり

人垣を分け入り探す池袋古地図に生家の町名はありむ

町内会副会長乱歩が残す四月十三日空襲羅災者配給控

競うがにくれないの花の天を突く日なかに兄を見舞わむとして

 

自分自身が動かない以上、言葉が発信できない、

言葉は無力だ。

しかし、その言葉を発信したら、きっと私と同じ思いの他者と連なることができる。

A5判上製カバー装 2835円•税込

 

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小潟水脈歌集『扉と鏡』

たばこ一本ただただカラカラ回りをりエスカレーターここでおしまひ

証明写真と同じわが顔嵌まりたり帰り来て入る部屋の鏡に

子は親の背を見て育つと言はるるが嘘つけ本の背表紙ばかり

雪だるま石の目くぼませ融けながら困つたやうに夕闇に座す

色かたち覚えることなく朝晩にこの位置にある歯ブラシを取る

 

日常の営みの中で心にとまったモノや事柄を記録する。

しかし、日常をそのまま日常としてすませることはしない。

その記録のかたちが歌という小詩型を選んだ瞬間、

心の時空は日常を越えて自在に飛翔し始める!

 

四六判上製カバー装 2625円•税込

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石井幸子歌集『挨拶-レヴェランス-』

つま先にわれを立たせて柔らかな地球と引き合ふ真夏の体

樹や示唆は悔しさとして蔵ひおけ石垣被ふ濃緑の苔

天上の深度計かもしれなくて糸まつすぐに蜘蛛おりてきむ

どのやうに生きたかつたか残りたりしやぼん玉液夕日にかざる

竜宮の使ひはいずこへ行きしならむふぢ色に澄むひむがしの空

 

 

こころの内側の小さな窓。

やわらかな風が吹き通い、木の葉が揺れ、親子連れの明るい笑い声。

そんな小窓から、そっと開かれた世界に向って挨拶を交わす。

歌が自ずから応える。

 

四六判上製カバー装 2625円•税込

 

 

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岩尾淳子歌集『眠らない島』

こころなら聞こえているというように向きあったまま海鳥たちは

あたたかいコンクリートに自転車を寄せておく海の眠りのそばに

陽のあたるながい廊下をゆくようにさみしさがきて抱擁終えぬ

鳥たちがようやく騒ぎ始めてもあなたはいつも眠らない島

逆光にしずくしている海鳥をかつて入り江に見たことがある

 

こころが聞こえるとは、なんと美しい言葉だろう。

海鳥たちのこころと作者の心が響き合っている。

内海の穏やかな風景は、読者の喜びとして

胸に広がるのである。        加藤治郎•跋より

 

46判上製カバー装 2625円•税込

 

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井村亘歌集『星は和みて』

顔のなき白衣の群れに囲まれて無影灯下の執刀はじまる

井の底ひひかり溜めをりおとうとの駈けてまろびし杳き日のまま

春の野のほのかに紅きほとけのざ摘みて帰らな子の坐りゐむ

底紅の宗旦木槿はや咲けばひと日ひと日を虔しみて生きむ

 

『星は和みて』は著者の住む大和の河合町星和台に基づく。

この地で詠んだなかでとりわけ生老病死に伴う歌に感動を覚える。

畢竟、短歌は晩歌と相聞歌につきるかも知れない。

-前川佐重郎「序」より-

 

A5判上製カバー装 2800円•税込

 

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大野とくよ歌集『永遠とう』

生きて再び誰にか逢わんほんのりと夕闇匂う木蓮の花

さまよえるここと一途に何を欲す天上界に咲く桃の花

夏の日にゆらり輝く芙蓉の花うす紅にこころ盗られておりぬ

あと幾年生きなんとする空のなか笑顔に向きて口ごもりたり

真実なるこころのひだをときあかす歌ノート風が剥がしてゆきぬ

 

生へのかぎりない慈しみ。

桃の歌人の心はおおらかに、静かに成熟を続けている。

みずみずしい言葉の果実をもぎ取る器となって。

 

「大自然の畏怖より逃れ難い現実、それを心に病めるからこそ、

その大自然界に向って生きる叫びを、私は自らの短歌に

なしとげたいと思ったのである。」(あとがきより)

 

A5判上製カバー装 3000円•税込

 

 

 

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伊藤一彦著『月光の涅槃』

=好評につき再版いたしました!=

 

太陽と月と緑と海の風土。

そして、口蹄疫の悲惨をも味わった南国の地、宮崎。

産土の地に根を下ろし、地霊の声に耳を澄ませ、

その始源に輝くさまざまな光を掬い取り、

歌びとのまことの心を今もなお発信し続ける。

 

牧水をこよなく愛で、

酒を、文学を、風土を愛で、

思索の深まりとともに綴る。

 

四六版上製カバー装 二八〇〇円•税込

 

 

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泉田多美子歌集『紫花菜』

危うしと思う高さに吹かれつつ今しほぐれむ夕顔の花

嘘をつく幼と叱りいる吾と淋しき窓に来る雨蛙

すぐそこと教えられたる所まで夕暮れてゆく道の遠さよ

明日の米買えぬ苦労をしてみたい坂田三吉その妻小春

獣らにありて人には無きものか冬の眠りと言うを思えり

 

なんの気負いもなく、

自分の背丈ほどの歌を詠む。

簡単なようでいて、現代においては困難な歌の道かもしれない。

そんな道をゆっくりと歩んできた。

先師•石田比呂志のきびしい指導に応えるべく、より作歌の高みをめざす。

 

四六判上製カバー装 2625円•税込

 

 

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岡崎裕美子歌集『発芽』

=完売=


したあとの朝日はだるい自転車に撤去予告の赤紙は揺れ

小さな嘘が大きな嘘になってゆく 私を見ているあなたの瞳

乗換えも面倒このままずっとこの川を渡って君のところへ

 

『発芽』は、くり返し恋愛場面(あるいは性愛場面といった方がいいかもしれない)を小説風に仕立ててゐる。一首で、ある一場面といふこともあるし、一連で掌篇小説を書いてゐることもある。  岡井隆解説より

 

四六版上製カバー装 2625円•税込

 

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浅田隆博歌集『四季の轍』

春光の陽光をうけて境内の墓石の脇に木瓜の花咲く

いくつもの銀やんまとぶ照りつける稲田のうへを見回るごとく

黄葉の公孫樹の枝乃先端に見張るがごとく鵯とまる

木立には小雪の降りて四十雀の高き囀りよくとほり来る

 

私にとってたんかは親しい友人となっています。

何でも打ち明けることの出来る親しい友人を得たような気持ちであります。

想像の喜びと親しい友人と語り合う喜びが私を幸福にしてくれます。

老後の沈みがちな心に対して人生にはりが出たような気がします。  ーあとがきより

 

四六版上製カバー装 2625円•税込

 

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いとう茜歌集『イエローカード』

うすあかき果肉のような月のぼり一本の矢をわれは欲るなり

夢なれどひとを殺めて逃れ来し 群肝を刺す寒の村雨

ふかぶかと吸いこまれゆく雲雀かな空にもあれよ引力の罠

無名にて死にゆくわれか夜もすがら地を穿ちいる直情の雨

 

人間の業と宿命の交叉する日々。ひとくれの土でさえも祖先と呼ぶことをためらわぬ作者の感性は、生きとし生けるものへの挽歌と祈りに満ちている。晋樹隆彦

 

四六版上製カバー装 2625円•税込

 

 

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磯前ヒサ江歌集『雪に冴え』

月は朧雪に冴えいる大樹あり魁夷描きし永遠の無言歌

五線譜を縦に並べるかたちして裸木無言の調べをたもつ

裸木と雪の奏でる無言歌をひとつ聴き覚え里を下りぬ

 

私は、魁夷画伯の絵を好み`冬華`の静寂に魅せられ、歌を詠み親しんでいます。

『雪に冴え』という歌集名は、`無言歌`の中のその歌から名付けました。(あとがきより)

 

A5版上製カバー装 2625円•税込

 

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井野佐登歌集『朝の川』

朝の川渡りつつある五十歳代 思ひもみざりし院長として

笑ひ顔並ぶがごとく富有柿が箱に詰められ友より届く

よれよれの我のこころが見えている袈裟の鏡の顎の淋しさ

この今のこころに渡る風ありて廊下の床をやをら拭き始む

学生の時に書ひたる鳴子こけし愚痴聴き地蔵として卓に置く

こののちの夢の続きを叶へよと献腎献肝運ばれてゆく

 

早朝の川を渡る。

すがすがしい風、まばゆい陽の光。

おおらかに、そしていさぎよく五十代の人生の川を渡る。

歌という言葉としらべの川だ。

いしとして、歌人として、みずからの行く末を静かに問い続ける。

A5判上製カバー装 2800円•税込

 

 

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伊藤一彦著『月光の涅槃』

太陽と月と緑と海の風土。

そして、口蹄疫の悲惨をも味わった南国の地、宮崎。

産土の地に根を下ろし、地霊の声に耳を澄ませ、

その始源に輝くさまざまな光を掬い取り、

歌びとのまことの心を今もなお発信し続ける。

 

牧水をこよなく愛で、

酒を、文学を、風土を愛で、

思索の深まりとともに綴る。

 

四六版上製カバー装 二八〇〇円•税込

 

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大野利夫歌集『比企の嵐山』

ひとつ神のゆえに戦ふ民ならむわれら千万の神神を持つ

禁圧を受けしたばこの受難史に平成を加ふ路上禁煙

背嚢に紙の碁石をひそませていくさの海を渡りゆきにき

理に叶ふ新語と思へど整はぬリズムに困る「満地球」とは

よき処みせむが悪手間もなくに頭を下ぐる碁石を返して

 

著者の「游」その人は、何を識り何をする人か。

広く、奥深く、とてつもない大きさ。

その存在の凄さと『比企の嵐山』で存分に出会えることだろう。

御供平佶

A5版上製カバー装 2835円•税込

 

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芦田敏子歌集『鈴綱』

さるすべり梢咲き撓む紅や原爆忌すぎ終戦日過ぐ

もみじして雑草も終りをかがやけば瞠るべきこといまだ多かり

朝々をシテを気魄に紐結ぶ白きエプロンぱしりと干しぬ

父母と逅ひ父母と別れしこれの世にふととき満ちて桜咲くなり

 

「鈴綱」とは、日本の神々の社の前にある鈴のついた綱のことである。

著者の住む大和には国の歴史を彩る神社がたくさんある。

これも大和の歌人としてのひとつの寄辺であり、また矜持と言えるかもしれない。 前川佐重郎•序より

 

四六版上製 2730円•税込

 

 

 

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池田はるみ著『あほかいな、そうかいな』

ほんま、あほかいな。あほやなあ……

心の底の「大阪人」が、やんわりとつぶやく。

日常の時間をスイスイと漕いでいく

清新なユーモアと発送の中で生まれ出たエッセー集!

 

四六版並製カバー装 2300円•税込

 

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小田倉玲子歌集『夕凪の時』

吾を呼ぶ姑が振りいる鈴の音がきこえるような夕凪の時

血縁の中にひとすじの道ありて焼香の順しづかに移る

 

静かな夕凪の時間は他界を垣間見せてくれる。

姑が鈴を振り私を呼ぶ。

もうこの世にいないはずの姑の鈴音が。

病い、老い、看取り、別れ。さまざまな日常の事柄も作者の心の浄化によって豊かな美の形象へと帰られてゆく。

 

四六版上製カバー装 2625円•税込

 

 

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泉谷虚舟歌集『虹のメルヘン』

十二センチのピンクの靴が玄関より消えてふたたび二人の暮らし

寒空に虹かかりたり、修羅われに、光見よとて虹かかりたり

月の地平を昇る遊星瑞瑞し、秋田の雪も銀に光るか

ホスピスの患者のことを老医師は語らんとして、ふいに泣きたり

 

短歌の師木俣修先生や荒谷皓先生、それに仲間からは動植物や大自然の現象、たとえば花の名や季節の微妙な変化のことなどをどんなに教えてもらった事でしょう。

まとめて言えば皆様の繊細な感受性や知性が私のような者の心を培って下さったのです。ー著者あとがきより

46版上製カバー装 2300円•税込

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岡本尚真歌集『残照の空』

うみ山のあはひほのかに霞ひき家並ぬむるふるさとの昼

からりからり朴の枯葉のすべる音聞きつつ独酌の酒あたたむる

 

 

残照の空。茜色をはらんだまばゆい光のゆらぎ。

その空を泪ぐましいばかりに仰ぐ作者がいる。

はや八十路を歩む老いの姿。

されど、この命。生かされてあればこそ、

歌もろともに森羅万象なべて輝け!

 

A5版上製カバー装 2730円•税込

 

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井村亘歌集『星は和みて』

顔のなき白衣の群れに囲まれて無影灯下の執刀はじまる

井の底ひひかり溜めをりおとうとの駈けてまろびしとほき日のまま

春の野のほのかに紅きほとけのざ摘みて帰らな子の坐りゐむ

底紅の宗旦木槿はや咲けばひと日ひと日を虔しみて生きむ

 

『星は和みて』は著者の住む大和の河合町星和台に基づく。

この地で詠んだなかでとりわけ生老病死に伴う歌に感動を覚える。

畢竟、短歌は晩歌と相聞歌につきるかも知れない。ー前川佐重郎「序」よりー

 

A5判上製カバー装 2800円•税込

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大和田孝子歌集『空の釣り人』

人みなの去りしのちの釣人は夕映えの空に糸を垂れをり

鳶舞へば腕を広げわれも舞ふ山の上(へ)の雲夕焼けるまで

佐久の空にどつかと坐る浅間領よ火を噴かず我が一世過ぎゆく

にんげんの終の姿のかなしければ屋上にでて寒の星仰ぐ

 

編集者として評論集『山河慟哭』を世に送り出し、歌弟子として歌誌『ヤママユ』とともに歩んできた三十数年。

先師•前登志夫の言葉ー「歌を生きる」。

それは、夕映えの空に向かって釣糸を垂らすことかも知れない。

四六版上製•2625円税込

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宇留野むつみ歌集『父のマント』

満州の広野と思う今朝の夢父のマントにもぐりていたり

たぐりゆく記憶の底につねにある父のぬくき掌母のさびしさ

満州国の崩れゆきし日ひまわりが照明弾なる光に浮きぬ

子を負いてひとかたまりの影となり雪夜を歩みし記憶がかえる

 

大きな父の「マント」。

愛情深い父母の姿。

満州国の終わりの日のひまわり。

幼い心にくっきりと刻まれた愛と戦争の記憶がうたわれている。米川千嘉子(帯文より)

 

46版上製カバー装 2625円•税込

 

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太田裕万歌集『おじさんINインドネシア そしてそれから』

  一年は掛かったようだ あの国の言葉で寝言いわなくなるに

  ジャカルタはここより暑いでしょうねと大方が聞く軽く否定す

  冬薔薇きいろくひとつ空に伸ぶおやじの歳を三つおいこす

  四六版並製カバー装 2000円•税込

 

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石栗徳子歌集『白蕾ふふむ』

  はつ夏の風に清まり入る茶室小暗き床に白蕾ふふむ

 

白い花を愛するという石栗さんの好みは彼女を知っている人には十分に納得がいく。清廉な人だからである。(伊藤一彦 跋文より)

四六版上製カバー装 2520円・税込

 

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