梅原ひろみ歌集『開けば入る』

判型:四六判上製カバー装

頁数:232頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-113-0

梅原ひろみ第一歌集。

 

バイクの海泳ぐがごとし午後五時の車のなかに眼つむれば

 

見渡せばとほく雨呼ぶ雲のありドンコイ通りを吹き上がる風

 

出張の上司と新人タム君とわれはダナンに蟹を割りをり

 

ベトナム戦争後三十余年を経たサイゴンに日本の工具販売会社の駐在員として赴任、八年を過ごした作者の自在な現地詠が新鮮である。

ベトナムの太陽、風邪そしてスコール、さらにはバイクに埋まる街の喧騒。そんな中で、精力的に仕事をこなしながら、自分を励ましつつ研ぎあげてゆく旺盛な好奇心が見どころである。

帯文ー佐佐木幸綱

 

 

 『開けば入る』より5首

誇り高き男が茶店に切り出せる三月の返済繰り延べ依頼

 

この人の行き詰まりたる一因の我が怠慢が点滅しをり

 

激しつつ我に説かむと産卵する海亀のやうな顔となりたり

 

「信じる」といふ語を最近よく使ふ金勘定にもつとも似合ふ

 

始末書など何枚でも書くと思ひおをり本気で生きてをらぬ証拠か