石井ユキ歌集『海と原野』

ひと跨ぎほどの流れに添ひながら常世の花か珊瑚草さく

野分たつウトナイ沼の白鳥が真実さむしと白き息吐く

手に囲う草蜉蝣の冷たさや夏の日暮れの秋のとば口

かなしみを声あげ泣きしことなくてわが少女期の離岸流あをし


右眼を瞑り左眼で現実をとらえている。

右眼は現実の彼方のまぼろし、左眼ははるかに広い世界がはっきり見える。実と虚を見事に表現している。

山名康郎


四六版上製カバー装 2500円・税