ながらみ書房は1985年開業、二千点以上の歌集歌書を出版してきた出版社です

 


NEWS

▼第16回前川佐美雄賞

奥田亡羊歌集『男歌男』(短歌研究社 2017年4月発行)に決定しました

▼第26回ながらみ書房出版賞

岩尾淳子歌集『岸』(ながらみ書房 2017年6月発行)に決定しました。

▼高山邦男歌集『インソムニア』

高山邦男さんがNHK「目撃!にっぽん」で特集されました。以下でも視聴することが可能です。
http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2018084748SC000/?capid=nte001

 

また高山さんの歌集『インソムニア』も在庫ございます。

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またAmazonの弊社のページでも販売しております。

▼おすすめ歌集・歌書紹介

高山邦男歌集『インソムニア』大好評につき、第三版となりました。

 

『御供平佶歌集全四冊』平成30年度埼玉県歌人会賞!!年譜付き。

 

松村正直著『樺太を訪れた歌人たち』小黒世茂著『記紀に游ぶ』好評です!

新刊歌集歌書



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短歌往来2018年6月号

短歌往来6月号目次

 

◎巻頭作品21首

春の祈り/篠 弘

 

◎特別作品33首

山桐咲く/清田由井子

紫陽花館まで/加藤英彦

 

 

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【特集】

第16回前川佐美雄賞・第26回ながらみ書房出版賞発表

 

受賞の言葉/奥田亡羊

受賞の言葉/岩尾淳子

 

●前川佐美雄賞受賞作

『男歌男』50首抄/奥田亡羊

●ながらみ書房出版賞受賞作

『岸』25首抄/岩尾淳子

 

選考を終えて

佐佐木幸綱

三枝昻之

佐々木幹郎

加藤治郎

俵 万智

 

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◎1ページエッセイ

◆遠い人、近い人―チョン君のつぶやき/島田修三

◆ニューウェーブ歌人メモワール―私の初期「未来」/加藤治郎

◆うたの小窓から―歌の道変り/田中教子

 

◎評論21世紀の視座

『ニューウェーブ』をめぐって/大井 学

 

◎今月の視点

なぜ私は「何もしない」か/吉岡太朗

 

◎作品7首

夜桜/吉村睦人

和豆香山/藤川弘子

さくら/楠田立身

菜の花の雨/平林静代

水切り/松坂 弘

みどりごのふぐりのやうな/小島熱子

花明かり/野地安伯

秋津辺の道/鈴木千代乃

アキバにゐる/中地俊夫

はこべ/南 鏡子

父のアルバム/鶴見輝子

 

◎作品13首

誰何/田村広志

時間/今川美幸

永遠の夕日/高島 裕

青い空といふ薔薇のまへ/兵頭なぎさ

ロンジンの春/甲村秀雄

ひかりをあるく/森川多佳子

春ながら/桂 塁

酒蔵通り/矢澤靖江

ライオンと子羊/清水正人

孤独力/鶴岡美代子

これでよかったのか/石垣蔦江

 

◎作品8首

大磯の吉田茂邸/金子正男

盟友/前田えみ子

無用ノ介/若松輝峰

異国の友/蓮見安希

小さき涙/冨岡悦子

海霧/豊岡裕一郎

荘内半島の春/横山代枝乃

夕船にゆく/池田裕美子

緑陸橋/小林敬枝

セブンデイズ/柾木遙一郎

花よりも華/小山田ふみ子

直事/茂木敏江

 

◎今月の新人

カーブ/安野ゆり子

 

◎連載

◆結社の顔ー鮒/湯沢千代

◆<歌・小説・日本語>中島敦「憐れみ讃ふるの歌」/勝又 浩

◆世界を読み、歌を詠むーカナの婚宴/坂井修一

◆若い短歌作者へ 茂吉からの手紙―若き編集者・門人 佐藤佐太郎への親書/秋葉四郎

◆メロディアの笛Ⅱ/渡 英子

◆浪々残夢録―歌と口語/持田綱一郎

◆時言・茫漠山日誌よりー夭折の歌/福島泰樹

◆編集者の短歌史(最終回)―退社から独立の日々/及川隆彦

 

◎新刊歌集歌書評

前登志夫著『いのちなりけり吉野晩禱』/前川斎子

岡井隆歌集『鉄の蜜蜂』/江田浩司

尾崎左永子著『佐太郎秀歌私見』/大辻隆弘

永田和宏歌集『午後の庭』/沢口芙美

鷲尾三枝子歌集『褐色のライチ』/後藤由紀恵

前田康子歌集『窓の匂い』/大松達知

有沢 螢歌集『シジフォスの日日』/長澤ちづ

井上美知子歌集『甘樫丘より』/一ノ関忠人

玉城寛子『島からの祈り』/渡辺幸一

鈴木通子歌集『モノクローム』/碇 博視

 

◆作品月評―4月号より/阪森郁代

◆評論月評/高山邦男

◆全国‘‘往来‘‘情報

◆編集後記

 

◎表紙画/大岡亜紀

◎本文カット/浅川 洋

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渡辺泰徳歌集『底生生物』

ものを観察するー真摯でやさしい眼差し。

こころの底に堆積する泥のようなものが、

時として勘定をもち、美しく輝き始める。

歌はそれをそっと掬い取る不可解な器だ。

 

ベ ン ト ス

底生生物は哀しきものよこの世より積み来るものを黙し食いおる

 

 

 

『底生生物』より 5首

 

薔薇の字をそうびと読むと知りたりし憂い少なき少年の日に

専門語封印しつつ語らえばわが過去なべて扁平となる

うつくしき周期律には逆らえぬ 核分裂は手なづけられぬ

みずうみの岸に白馬は似合いたり北バイカルに洗われていし

春まだき人間の土地に来たるもの見おろし岬に尾白鷲とぶ

 

A5判上製カバー装 2500円(税別)

 

 

 

 

 

 

 

 

多田政江歌集『風の呼吸』

第一歌集に相応しい瑞々しい相聞歌に本集は拓かれてゆく。

誰しもの胸の奥に仕舞われている青春の日々の思い出を、そっと呼び起こすような歌たちであり、純粋さ、直向きさがどの作品からも伝わってくる。 ―平林静代 帯よりー

 

 

『風の呼吸』より5首

 

まっ青なこの空きみに届けんと山のポストに絵はがき落とす

 

照明の消えたる靴屋のショーウインドーピンクの長靴歩き出さぬか

 

車内灯消して行き先<回送>に終バス今日はすでに過去形

 

さわさわと風の呼吸が変わるころ梨より林檎が美味しくなりて

 

イスラムのチャドルの女吐く息も声も殺して黒衣の中に

 

 

四六判上製カバー装 2600円(税別)

 

 

 

 

 

 

 

田川喜美子歌集『何処へ』

田川喜美子第二歌集!

 

的確な描写、強い定型意識、批判精神、ユーモアなど、竹山広から学んだものは数知れないと思うが、すべての基本は見ることにあるのではないだろうか。

 

ー藤島秀憲・解説よりー

 

『何処へ』より5首

 

田川さんのさんの発声低くして竹山広の声はこだます

 

七十五歳の相聞歌よししんしんとお息吸ふて読む『千日千夜』

 

ぼんやりと煙草をふかしゐる夫が知らない人に見える夕くれ

 

晩年の私をさがすやうにして日くれて窓の硝子を磨く

 

目が合つて待つてくれるは長崎の百円電車よ春の町ゆく

 

四六判上製カバー装 2500円(税別)

 

 

 

 

 

 

 

 

橋本千惠子歌集『未完からの出発』

 

 

橋本千惠子第二歌集『未完からの出発』より五首

 

芽吹き来し青耀へる生を見すわが身のめぐり黙なすもの等

 

英一を追慕の声のつづく中雪の降りきて心にこもる

 

怒られし記憶なきままもの言ひの静かなりしと父を思へり

 

十二万体刻む希ひに荒彫りのひとつ笑ひの仏をのこす

 

身のめぐり幾人逝きぬ白萩のゆれのかそかに風の吹き過ぐ

 

 

定価2500円(税別)

短歌往来2018年5月号

【お詫び】

長澤ちづ氏による外塚喬歌集『散録』の書評が、編集部の不手際により、4月号と5月号の両方に掲載されてしまいました。謹んでお詫び申し上げます。

 

 

短歌往来5月号 目次

 

◎巻頭作品21首 

<伊右衛門>/米川千嘉子

 

◎特別作品33首

土佐から讃岐へ/島崎榮一

えいゑんに/恒成美代子

 

◎1ページエッセイ

■遠い人、近い人⑰「叔父さんたち」/島田修三

■ニューウェーブ歌人メモワール④「出発の時」/加藤治郎

■うたの小窓から⑤「言語破壊」/田中敦子

 

◎評論シリーズ21世紀の視座

「棒立ち、だったのか」/柳澤美晴

 

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【特集】水面かがやく春のうた

■作品10首+愛唱歌

お日待ち/玉井清弘

胸にめざめつ/春日いづみ

春のうた/大島史洋

薄桃色の/駒田晶子

春/大下一真

わらうまぶしさ/鈴木英子

中之島/真中朋久

ひかり及びて/内野信子

しばざくら/大井学

七つ星/貝沼正子

ミシガンの空/栗明純生

巣立ちの春/玉井綾子

ひかる水/北神照美水の庫/久葉 堯

吉野山/青戸紫枝

キャッチボール/栗原浪絵

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◎作品7首

磐梯の胸/波汐國芳

樛木忌/永田典子

谷地のかげ/仲 宗角

原人/松川洋子

眠れざる木があれば/外塚 喬

淡き虹/青木陽子

友逝く/大塚寅彦

象嵌/小野雅子

ケカチ遺跡/古屋 清

鳥の歌/滝下惠子

 

◎作品8首

西洋タンポポ/片岡 明

春野/藤田 冴

透明なドローン/永谷理一郎

賑はひのなか/安部真理子

ふたりの朝餉/身内ゆみ

眸のなかで/宮野克行

うやむやに暮れゆく平成/白倉一民

駿河トラフ/髙木絢子

骨を食む/桑田今日子

徳島短歌/楠本邦利

初夏の品川/鈴木りえ

 

 

■追悼-安森敏隆

安森敏隆の葬儀/光本恵子

 

■歌人回想録ー小高賢

小歴/草田照子

小高賢のうた50首抄/草田照子 選

むなしさを超えるもの/吉川宏志

 

◎連載

■<歌・小説・日本語>

歌稿「遍歴」について/勝又 浩

■<世界を読み、歌を詠む>

故郷/坂井修一

■<若き短歌作者へ 茂吉からの手紙>

熱き血の歌人 原阿佐雄への助言②/秋葉四郎

■メロディアの笛Ⅱ/渡 英子

■<浪々残夢録>

桜の我がアンソロジー/持田綱一郎

■<時言・茫漠山日誌より>

弔辞/福島泰樹

■<編集者の短歌史>

退職までの数日間/及川隆彦

 

■今月の視点

物語る新人女性歌人/大野道夫

 

◎今月の新人 作品5首本の象り/晴山生菜

 

◎新刊歌集歌書評

伊藤一彦歌集『遠音よし遠見よし』/高島 裕

丸井重孝著『不可思議国の探究者・木下杢太郎』/酒井佐忠

山田震太郎歌集『ゆめのなかほど』/美濃和哥

外塚喬歌集『散録』/長澤ちづ

なみの亜子歌集『「ロフ」と言うとき』/小黒四茂

野一色容子歌集『自堕落補堕落』/尾崎まゆみ

正古誠子歌集『卯月の庭』/花山多佳子

川口慈子歌集『世界はこの体一つ分』/前田康子

茂木純歌集『三池から』/小木 宏

宇田川寛之歌集『そらみみ』/石川幸雄

鶴田伊津歌集『夜のボート』/田村 元

渡邉千恵歌集『神帰杉』/佐佐木頼綱

千葉聡著『短歌は最強アイテム』/染野太朗

蓮見安希歌集『青にとけゆく』/喜多弘樹

 

◎作品月評

3月号より/阪森郁代

 

◎評論月評/高山邦男

 

◎全国往来情報

◎編集後記

◎表紙絵/大岡亜紀

◎本文カット/浅川 洋

 

 

 

 

 

短歌往来2018年4月号

 

巻頭作品 飛ぶことよりも/栗木京子

特別作品 

アリガタウ・有り難う/社澤光一

 生きてはみたが/千々和久幸

  

◇1ベージエッセイ

 遠い人近い人 ―トマトのハウスペル/島田修三

 ニューウェーブ歌人メモワール―紀野恵と「未来」/加藤治郎

 うたの小窓から―コンセプト/田中教子

 

 評論21世紀の視座 記憶と文学/古谷智子

 

 特集』 ① 沖縄の旅とうた 作品七首+エッセイ

あらためて平和を祈る/青木春枝

大浦湾/井口世津子

音/伊志嶺節子

爆音/小木宏

糸数アブチラガマ/小林芳枝

平和乞う沖縄/沢木奈津子

瀬嵩の浜/島 晃子

島の景島の珍味/晋樹隆彦

ここです辺野古/玉城洋子

平和の礎/丹波真人

 沖郷を感じる旅/中村節

滅びの滝に/林田恒浩

コーチャン/松谷東一郎

地底の門/御供平吉

されかうべ/南響子

沖の音/和田沙都子

 

 

『特集』 ② 追悼/松平修文

芸術は祈りだ/王紅花

白鳥の歌/福島泰樹

悲しくてなにも見えない/加藤英彦

烟の少女は実在した?/黒岩 康

『トゥオネラ』の韻律/松本典子

 

作品七首

水石/横山横

ひとすくひ/時田さくら子

/椎名恒治

素心蠟梅/大竹蓉子

流れ/平山良明

昼の岬/山本雪子

大東京炎上、大正十二年/雁部貞夫

偶成/小橋美沙世

雪の日の計報/鹿取未成

 

■作品八音 

ふるさとの線/宮原勉

仁太坊/山下敬子

残されしうからたちよ/二方久文

有楽椿/荻原桂子

老いて純愛/米山高仁

誰か告げんか/碇 博視

曾根崎北詰/田土成彦

そらみつやまと/菊川啓子

百日紅/古川あい

強気と弱気/城 俊行

転轍機まで/阿部尚子

神さぶる人類/福田淑子

 

連載 〈歌・小説・日本語)  中島敦の歌/勝又浩

連載世界を読み、歌を詠むの イタリア/坂井修ー

連載|若い短歌作者へ 茂吉からの手紙  熱き血の歌人原阿佐緒への助言/秋葉四郎

連載  メロディアの笛Ⅱ/渡英子

連載 浪々残夢録の 国学と黒船 『夜明け前』の歌/持田鋼一郎|

連載|時言・茫漠山日誌より 狼の歌/福島泰樹

連載|編集者の短歌史 石川一成さんの輪禍/及川隆彦

 

今月の視点  生活者の悲しみ/名嘉真恵美子

 今月の新人 作品5

過去形/浜崎結花

 

 ■新刊歌集歌書評

福島泰樹歌集『下谷風煙録』/清田由井子 

水原紫苑歌集『えびすとれー』/今野寿美 

時田則雄歌集『エゾノギシギシ』/黒岩剛仁 

結城 文歌集『富士見』/松坂弘

伊勢方信歌集『ピアフは歌ふ』/馬場昭徳

外塚歌集『散録』/長澤ちづ

山田富士郎歌集『商品とゆめ』/中根誠

和清歌集『去年マリエンバートで』/ 公人 

青戸紫枝歌集『海の石鳴る』/柴田典昭

内野信子歌集『つまくれなゐ』/阿木津 英

藤田 冴歌集『湖水の声』/美濃和歌

永井正子歌集『風の者』/橋本忠

鈴木りえ歌文集『夕映えの湖』/斎藤佐知子

 

■作品月評 二月号より/阪森郁代

 

 ■評論月評/高山邦男

■全国往来 情報 

■表紙絵/大岡亜紀

 編集後記

 本文カット/浅川

 

河村郁子歌集『彩雲』(昭和9年生れ歌人叢書8)

 

 

この歌集は作者の飽くことのない好奇心が作らせた一冊と言えるかもしれない。子供の時に昭和の戦争を体験し、少女がから娘になって行くころに戦後の学ぶ自由を身につけ、高度成長期に経営者となり成功を収め、平成の世の平和を楽しまれたひとりの女性の人生が分かる。新しい年後を迎える準備に入った現在から思えば長い年月のようではあるが、一瞬だったとも思える時間がたくさん詰まっている。大らかな歌に深い味わいがある。

 

ー解説・池田はるみーより

 

四六判変型並製 1800円(税別)

玉城寛子歌集『島からの祈り』

洞深く埋もれし息の切れ切れに私はこ・こ・よ南風も眇眇

 

芙蓉咲くに「土人」の声に散らされて滾つ怒りも泥にまみれる

 

墜落のニュースを聞きて今日もまた狂わんほどに空ばかり見る

 

六月の摩文仁の崖を這いのぼる波涛は二十四万の非戦の叫び

 

九条を抜け殻にして笛を吹く宰相の行く手にハーメルンの道

 

 

ここには多くの社会的事象が詠われています。

とりわけ沖縄に関する作品が多く詠まれています。

かえり見れば、私たちの追い求める姿とはあまりにかけ離れた沖縄の現実が、私の心を揺さ振り衝き動かしたのだと思います。

多くの島人の心が安らぐ日まで、また私の生が続く限り、このことは詠い続けていかなければならないと今日も空を見上げています。-あとがき よりー

 

四六判上製カバー装 2500円(税抜)

曽我亮子歌集『夕陽のまつり』

 

杳き日に父くちずさみゐし「イッツァ・ロングウェイ」あなたの正義胸に緩む

 

幼らを招きて小さき雛の膳ならべて笑ましし母恋ひ止まず

 

父の忌も過ぎて流離の思ひあり寂しき吾等の初夏ならむ

 

寸松庵色紙臨書しをれば春の鳥鳴き過ぎてゆく寂しき曙

 

夏の夜の夢かとぞ見るハッブルの捉へて送る銀河の葬送

 

 

曽我さんは若き時からこつこつと一人で歌を作っていらしたようだが、私の知っている曽我さんの歌はここ十年ほどのものである。

しかも曽我さんは私事を話されないので恋愛時代や結婚生活について私は何も知らないのだが、大恋愛の末に結ばれたらしい夫とも当然ながらさまざまな葛藤があったのだろう。

その影の部分を臆さずうたっているところに、私は歌人としての曽我さんの心意気を見るのである。

鹿取未放・「跋」より

鈴木通子歌集『モノクローム』

 

 

障害ある児は別れし父親を出張中といまだに言うも

 

障害ある二児持ちたりと語るとき人おどろきて我を見給う

 

子を残し去りし夫よなれもまた母と別れし少年時代

 

語らいはつきることなし障害者の友と障害者の母なる我と

 

夕映えの華やぎもちて急ぎゆくかけがえのなきひとときのため

 

 

家族を置いて去って行った父親を、出張中と告げる児を視つめている母親の心情は察して余りあろう。

その優しさが、作者をして鬱の病を持たせてしまった一因であることを思うと、誠にせつない。

 

四六判上製カバー装 2500円(税抜)

井上美知子歌集『甘樫丘より』

亡母の家も見ばやと登る甘樫丘に踏む土匂はむばかり

 

生駒市に住む作者の産土は明日香である。その産土の臍のような甘樫丘より、作者は世界を眺め、その眺めの奥に匂いたつ亡き父母や妹がいた風景を遠望する。達観した境地から、自らの老いを、そして生々流転する世を、ときにユーモアをまじえつつ詠む。

帯文・萩岡 良博

 

四六判上製カバー装 2500円・税別

短歌往来2018年3月号

◉巻頭作品21首
元旦前後/内藤 明

◉特別作品33首
隙 間/佐藤孝子
流星群をながめゐる犬/ 小林幸子

一ページエッセイ
遠い人、近い人⑬ー嘘つく人々/島田修三
ニューウェーブ歌人メモワール②ー岡井隆に師事する/加藤治郎
うたの小窓から③ー短歌における詩の革新とは/田中教子

21■評論 世紀の視座○
鑑賞法衰弱の時代に/阿木津 英


50人に聞く2017年のベスト歌集•歌書[特集]

歌集歌書群◎『散録』/『時禱集』/『世界黄昏』/『風のおとうと』/『花桃の木だから』/『葭莩歌集』/『含笑』/
『遠音よし遠見よし』/『奇跡の木』 /『硝子の島』/『八十の夏』/『夏の領域』/『商品とゆめ』/『トゥオネラ』/
『ピアフは歌ふ』/『景徳鎮』/『御供平佶歌集 全四冊』/『風の渚』/『連灯』 等

◎回答者 大井学 柳 宣宏  寺尾登志子 三井 修  恒成美代子
清水亞彦 森本 平   日野きく 江畑 實  水城春房  大熊俊夫
楠田立身  石川幸雄 中野昭子 平山公一 結城千賀子  鵜飼康東
酒井佐忠 光本恵子 山野吾郎 鈴木竹志 彦坂美喜子  甲村雅俊
山田吉郎 松永智子 香山静子 大山敏夫 梛野かおる  河野小百合
遠山景一 山田悦子 浜口美知子 生沼義章 川田茂   吉野節子
塚本諄 松田愼也 後藤恵市 大崎安代 君山宇多子 小寺三喜子
鈴木得能 小泉初代 黒岩剛仁 安田純生 宮原勉   小塩卓哉
鶴岡美代子 加藤英彦 逸見悦子


◎作品七首
思いつながん/大野とくよ
まず結論/藤岡武雄
こ ゑ/三井ゆき
ゆきゆきて/古谷智子
宝 物/萩岡良博
思ひ出し笑ひ/足立晶子
足 跡/大朝暁子
俯くひと/飯沼鮎子
叱る言葉/馬場昭徳
黄の彼岸花/草柳依子

◎作品十三首
冬 日/安藤直彦
雨花石/鹿取未放
犬の記憶/島内景二
ここは清澄/畑 彩子

 

セブ島の料理/服部 崇
白い象/岩尾淳子
巻 雲/三本松幸紀
小さき角/佐藤 晶
鳥/森 水晶


◎作品八首
競走馬/平田恵美
スーパームーン/淺田隆博
天宇受売命/桝田紀子
光を吸ひて/秋葉雄愛
傘 寿/池原初子
木枯の句/久留原昌宏
水門へ水門へと/筑波笙子
春に向く/椎木英輔
春の突端/福原美江
無 題/綾部 剛
オリオン星雲/岡 貴子
癒えて一年 /東野典子


■連載ー結社の顔⑫
白 夜/海野幸一
■連載ー〈歌・小説・日本語〉⑩
『山月記』をめぐって/勝又浩

■連載ー世界を読み、歌を詠む⑨
勇 気/坂井修一

■連載ー浪々残夢録○
歌と時代/持田鋼一郎 ー

■連載◯
メロディアの笛Ⅱ/渡英子

■連載ー若い短歌作者へ 茂吉からの手紙⑬
助力者山口茂吉への親書④/秋葉四郎

◉今月の新人ー作品5首
金魚のいない金魚鉢/浦 晶

■今月の視点
伝統の断絶ではなく/小島熱子
■連載ー時言・茫漠山日誌より○
大鉄傘の歌/福島泰樹

■連載ー編集者の短歌史◯
新聞社の退職を決意/及川隆彦
68

■新刊歌集歌書評
秋葉四郎歌集『樹氷まで』/岡崎洋次郎
道浦母都子歌集『花高野』/藤原龍一郎
俵 万智著『ありがとうのかんづめ』/三原由起子
高野公彦著/聞き手 栗木京子『高野公彦インタビューぼくの細道うたの道』/上村典子
横山三樹歌集『九階の空』/永井正子
千々和久幸著『酔風船Q氏のいたずら日記』/桑原正紀
柴田典昭歌集『猪鼻坂』/田野 陽
平林静代歌集『点の記』/中西洋子
大辻隆弘著『新版 子規への溯行』/魚村晋太郎
米山髙仁歌集『不死鳥』/依田仁美
岡崎裕美子歌集『わたくしが樹木であれば』/川本千栄
野口あや子歌集『眠れる海』/横山未来子
栗原浪絵歌集『藍色の鯨』/江戸 雪
荻原桂子歌集『灯の文字』/五所美子

■作品月評ー一月号より/阪森郁代
■評論月評/高山邦男
■全国〝往来〟情報
■編集後記


表紙写真/黒沢忍
本文カット/浅川 洋◉巻頭作品21首

 

短歌往来2018年2月号

◎今月の視点 『男魂歌』という快事依田仁美 

 

◎巻頭作品21首

犬の横顔/梅内美華子 


◎一ページエッセイ  

遠い人、近い人14  網野菊の味わい/ 島田修三 
ニューウェーブ歌人メモワール1   一本の道/加藤治郎
うたの小窓から2 短歌の本来と革命/ 田中教子 
  
◎今月の新人

 薬と鍵/ 藤原 奏
  
◎特別作品33首 

たそがるる頃の街並 /三枝浩樹
イサファガス/ 大松達知

◎評論シリーズ 21世紀の視座

 『 氷点』の辻口啓造は歌人だった/ 田中 綾

 

◎特集

オメデトウ 戌年生れの歌人  
作品6首 

冬と犬/ 四元 仰 
 犬張子/中村キネ 
 雪と犬と /米田憲三 
 格 /星野 京 
 新しき雪/ 伊吹 純 
 行きみち /中須賀美佐子 
 華麗なる逃避 /伊田登美子 
 眷 族/ 大芝 貫 
 白き犬/ 蔵田道子 
 同級会 /國府田婦志子 
◎作品12首

 冬/森山晴美 
 光る海/時田則雄 
 戌年に/結城 文 
 漂 流/下村光男 
 いますこしわらふ/上村典子 
 百 神/山中律雄 
すべて預けず/小川真理子
 チンアナゴ/松村正直 
 反骨の戌/中野たみ子
 記念の時計/塚本 諄 
◎作品6首 

いのち /朝井恭子 
 昭和一桁に /西田郁人 
 風立ちぬ、いざ /塚田沙玲 
遠吠え/ 前村泰子 
 シェパードへの思い/ 關アツ子 
 地表に杖/清水 篤 
 咲く花の /くぼたかずこ 
 コアラ抱く /川崎百合枝 
◎作品12首
六度目の扉/植村俊宏" 
 何にしたがふ/浜口美知子
 犬蓼の穂と八犬士/小林幹也
 戌の四季/佐藤千代子 
 犬の暮らす星に生まれて/田中章義
 さりながら/藤元靖子
 節 目/小林敦子
 別の種族/森垣 岳 
 犬に追われた日/山崎聡子
 戌年家族/久保とし子
作品6首

天の羽衣/本多順子 
 元日の空/阿部真太郎

岩田帯/片岡なおこ 
 あたらしき年も白杖で /苅谷君代 
 漁師ことば/ 熊岡悠子 
 湘南に住む /露木悦子 
 愛し犬 /河村郁子 
 末 世 /朝倉 賢 

 

◎追悼 岩田 正 

秀歌は憶えなさい/田村広志 

 

■連載■
◎結社の顔

朝 霧―山村泰彦 


◎〈歌・小説・日本語〉

 二人称の東西 /勝又浩


◎世界を詠み、歌を詠む

 燃える茨 /坂井修一


◎茂吉からの手紙 

 助力者山口茂吉への親書 3 /秋葉四郎


◎メロディアの笛II

白秋の昭和/渡 英子

 

◎浪々残夢録 
伝統の力——御供平佶歌集全四冊 /持田鋼一郎

  
◎編集者の短歌史 

永田和宏・河野裕子夫婦の歓送会/ 及川隆彦 

 

◎新刊歌集歌書書評
 大島史洋著『短歌こぼれ話』/柳 宣宏 
 小見山 輝歌集『神島』/島崎榮一 
 奥村晃作歌集『八十の夏』/中地俊夫 
 永田和宏歌集『私の前衛短歌』/山田富士郎 
 萩岡良博歌集『周老王』/日高堯子 
 島崎榮一歌集『含笑』/林田恒浩 
 山本雪子歌集『楤の木』/甲村秀雄 
 草田照子歌集『旅のかばん』/古谷智子 
 鹿取未放歌集『かもめ』/香川ヒサ 
 長嶺元久歌集『百通り』/森山良太 
 佐藤モニカ歌集『夏の領域』/松村正直 
 鈴木香代子歌集『あやめ星』/小島ゆかり 
 

◎作品月評

十二月号より /阪森郁代 
 ◎評論月評/高山邦男 

 

◎全国往来情報

 

◎編集後記

 

表紙写真/黒沢忍

本文カット/浅川洋

短歌往来2018年1月号

◉巻頭作品21首   
〆切お化け/永田和宏


  ■1ページエッセイ   
遠い人、近い人⑬ー背番号3/島田修三
酔風船○ー美しい文章を/千々和久幸

うたの小窓から①ー今、57577について/田中教子 


 ◉特別作品33首  
びょうびょう/加藤治郎
雲の寄る日/ 坪内稔典

 

[特集1] 「30代歌人の現在 を読む 
何を犠牲にするのか/江田浩司ー23  
「個人の明瞭な顔立ち」が見えた/香川ヒサー29  
主題と変奏/大井 学ー35  
  [特集2]新春作品集  
◎作品七首  
時 代/横山岩男
岩田正先生逝く/菅原恵子
筑紫晩秋/池本一郎
月影に問う/髙島静子
連 鎖/森 淑子
残ん世/志垣澄幸
冬 青/久我田鶴子ー48  
やがて菜の花/木村雅子
日々の動きの中に/大橋栄一
こぬかあめ/沖ななも
けふも雨/竹安隆代
波のてのひら/前川多美江
◎作品十三首  
小 旅― 高岡・氷見―/本阿弥秀雄
青藍の海/比嘉美智子
箱根登山鉄道と猪/柳 宣宏
時間の嵩は/影山美智子
往けば耳冷ゆ/岩崎聰之介ー 
夜廻り猫よ/久保美洋子
稲藁仕舞ふ/水本 光
夜の窓/檜垣美保子


 ◎作品八首  
九十九里浜小景 /川口城司
米搗きばつた /内野潤子
筏にのつた子ども /加藤 走  
秋 草/小寺豊子
十月桜と講演/柏原宗一
ノヴェンバー・  ステップス/岩井幸代
馬のしだりを/大塚 健
亡き母/平田恵美
穭穂/若松喜子
いたどりの花/さいかち真
母よ ありがたう/池田美恵子
それぞれの緑 /山本りつ子


  ◎作品十三首  
水の路/熊谷龍子
あはれ核武装論/若菜邦彦
逆十字架/江畑 實
鍵を確かむ/細溝洋子
最上川の白鳥/冨樫榮太郎
スティールブルー/水井万里子


  ■追悼ー福田龍生  
「子は手をあげて」の少年/爲永憲司
■連載ー結社の顔⑩  
朱竹/伊勢方信
■連載ー〈歌・小説・日本語〉  
庭園談義/勝又浩

■連載ー世界を読み、歌を詠む⑦  
木・岩・雲/坂井修一

■連載ー浪々残夢録○  
歌と時代/持田鋼一郎

■連載
メロディアの笛Ⅱ/渡英子

■連載ー若い短歌作者へ 茂吉からの手紙⑬  
助力者山口茂吉への親書②/秋葉四郎  
■連載ー時言・茫漠山日誌より
下谷風煙録/福島泰樹 
 ■連載ー編集者の短歌史
追悼号の逸話と大家特集/及川隆彦
■新刊歌集歌書評  
江田浩司著『岡井隆考』/森井マスミ
松村正直歌集『風のおとうと』/楠田立身
服部崇歌集『ドードー鳥の骨』/黒瀬珂瀾
松本典子歌集『裸眼で触れる』/上村典子
畑 彩子歌集『虫の神さま』/三井 修
上條雅通歌集『文語定型』/恩田英明
淺田隆博歌集『四季の譜』/田野 陽
小谷博泰歌集『シャングリラの扉』/丹波真人
さいとうなおこ著  『子規はずっとここにいる』/結城千賀子
石垣蔦紅・ギルバート J ペリー歌集  『青き地平線』/安田純生
伝田幸子歌集『冬薔薇』/光本恵子
桝田紀子歌集『夜香木匂う』/三輪良子
古川あい歌集『わすれぐさ』/花山周子
国定里子歌集『各務原』/梶田順子


◉今月の新人ー作品5首  
我の犬君/御手洗靖大

 

■今月の視点  
新しいレトリックの可能性/大西久美子  
  ■作品月評ー十一月号より/阪森郁代
■評論月評/高山邦男
■全国〝往来〟情報 ー142  
■編集後記 
  
  
表紙写真/黒沢忍  
本文カット/浅川 洋  

蓮見安希歌集『青にとけゆく』

寡黙にいのちと触れ合いながら、草木も人間も、私すらも透けて見える日。

 

かぎりなく深みを増す青の世界へ

 

自在に、そして、かすかに紛れてゆくのみ。

 

四六判上製カバー装 2400円(税抜)


山田震太郎歌集『ゆめのなかほど』

ぎらぎらとした本格的な夏がやってくる。私の好きな夏である。少年の時から、この季節は気に入っている。怠けていても、あまり目立たないし、時間がたっぷりと流れている感じで、生きているという実感があるからである。山田震太郎『夏をつかむ』より

 

四六判上製カバー装 3000円・税別

鈴木りえ歌集『夕映えの湖』

 

著者の作品は、対象への暖かく優しい視線を特徴とする。歌い方、題材の捉え方がつねに肯定的である。もしそれが無意識の結果だとすれば、作者の人間性の根本に世界に対するそのような愛と肯定感があるという証であり、短歌を作る上での意識的な態度だとすれば、そこに作者の歌に対する認識と作歌哲学があるだろう。 

谷岡亜紀・解説より

短歌往来2017年12月号

 

◎巻頭作品21首

ストレートで。水はいらない/都築直子

◎特別作品33首

草叢/香川ヒサ

石と骨/奥田亡羊

 

■ ーページエッセイ

◎遠い人、近い人

記憶の中の面影/島田修二

◎酔風船

さようなら/千々和久幸

◎花和尚独語

ツワブキ/大下一真

 

■評論

◎21世紀の視座

学校教育亡短歌、田中拓也

 

◎「特集』題詠による詩歌句の試みー日本の秋

秋の葬送/ジェフリー・アングルス

低きほむら/百々登美子

無月雨月/高橋睦郎

休むに似たり/仁平勝

秋の光/安宅夏夫

凪/松本典子

 

こんな秋/中上哲夫

老人走る/小島ゆかり

日輪/齋藤愼爾

晩熟/片岡直子

盤るる/水原紫苑

夜の歌/浦川聡子

神無月の空/北爪満喜

素焼きの皿/野田かおり

かりぬひ/安里琉太

 

◎作品十三首

葉隠/小林峯夫

深度計/上村典子

蝶生きるこの一瞬に/飛高敬

大岡信氏の時間を/冬道麻子

灰色的花/五十嵐順子

ダニエル・ダリュー/丹波真人

偏奇館焼亡/美濃和司

あをインコ/高旨清美

琵琶湖の風/野田恵美子

 

◎作品八首

父の顔/石田照子

縄文人/石井利明

初秋の青/藤井幸子

一滴のうた/伊良部喜代子

風蘭/三平忠宏

黒きカバン/乾醇子

水のでんごん/武藤敏春

ゆかり先生/堀越照代

蒼白き月/金丸玉貴

魂あらふ/浜守

はじめての恋/麻生千鶴子

 

■今月の視点

「バールのようなもの」と「バール」/谷川電話

 

■連載

◎世界を読み、歌を詠む

渾沌/坂井修一

◎若い短歌作者へ茂吉からの手紙

助力者山口茂吉への親書/秋葉四郎

◎メロディアの笛Ⅱ/渡英子

◎浪々残夢録の 影山正治と短歌/持田鋼一郎

◎時言・茫漠山日誌士より

山崎博昭追悼、五十年!/福島泰樹

◎編集者の短歌史。 一九八四年的春/及川隆彦

◎歌誌漂流/鈴木竹志

◎結社の顔

新雪/橋本忠ー

◎<歌・小説・日本語>

日本語の一人称/勝又浩

 

◎歌人回想録

笹井宏之

小歴/筒井孝司・中島裕介

笹井宏之のうた50首抄/中島裕介

あなたがねむる数万の夜へ/加藤治郎

 

◎新刊歌集歌書評

香川哲三著『佐藤佐太郎純粋短歌の世界』/田野陽

栗木京子歌集『南の窓から』/尾崎まゆみ

三井 修著『うたの揚力』/光本恵子

中川佐和子歌集『花桃の木だから』/小島熱子

川崎あんな歌集『EXIT』/黒瀬珂瀾

久久湊盈子歌世界黄昏』/田村元

加藤 走歌集『風よ、ここに』/彦坂美喜子

若松喜子歌集『砂嘴のソクラテス』/喜多弘樹

柊明日香歌集『そして、春』/今川美幸

 

 

◎作品月評

十月号より/阪森郁代

 

◎評論月評/高山邦男

 

■全国往来情報

■編集後記

 

表紙画/黒沢忍

本文カット/浅川 洋

内野信子歌集『つまくれなゐ』

『つまくれなゐ』五首

 

つまくれなゐと母の呼びゐし花が咲きこころ惹かるる一軒となる

 

草の実を扱きて握る手のひらにいまだ疼けるのゆめ

 

ゆきむしのひとつ流れてまたひとついづく邑のうへにか雪降る

 

木末よりいつきにひらきゆくコブシ讒説はしる早さといづれ

 

催花雨の来そうな空をともに見て一会とならむひとと別るる

 

四六判上製カバー装 2500円(税別)

藤田冴歌集『湖水の声』

この豊潤な一冊を読んで来て、なほこの上、作者にいふことがあるであらうかと考へました。作者は、充分に謙虚なのでありますから、これを言ふには、多少、誤解をおそれず言ふ必要がありますが、「完全を求めないこと」といふ言葉が、私の脳裡をよぎりました。すこし、あらつぽく、リアリズムと喩法とのアマルガムを、これからいよいよ、期待したいと思ひます。岡井 隆・栞より

 

四六判上製カバー装 2500円(税抜)

萩原桂子『灯の文字』

 

運動場に満ち照る()の文字瞰てをれば夢ゆめ過疎の町と思はず

 

 

 

作歌に、評論に、さらに絵本の読み聞かせに、宮崎県高鍋町で意欲的に活動する荻原桂子さんの充実の第二歌集である。「灯の文字」の歌は「高鍋城灯籠祭り」に関わる作であるが、荻原さんにとっては五句三十一音の短歌の言葉こそが、自らの心を明るく照らす「灯の文字」ではあるまいか。この一冊はそう読者に思わせる。                          伊藤一彦

 

四六判上製カバー装 2500円(税抜)

 

くぼたかずこ歌集『お気に召すまま召されるままに』

わたくしも老舗の歳になりました分けてあげましょ一年二年

唐紅

 

人生の交叉点ですこの店はアラフォー女子にみたびの恋か

薄桜

 

しゃがすみれたんぽぽすいせんはなだいこんこぶしは白く友よさよなら

薄桜

 

ゼラニウム。秋、冬、春、夏、また一年。ツバメの街に日々は過ぎゆく

杜若

 

 

とんとんとん。

時をのぼりおりし、日々を彩るうたがここにある。

友を送るうた、母のうた、酒場のうた、

心を尽くすうた・・・。

ドキュメント短歌380首。

 

四六版並製カバー装 1500円・税別



栗原浪絵歌集『藍色の鯨』

『藍色の鯨』には歌作を始めてからの栗原さんの人生が反映されており、彼女の表現のセンスがそうした暮らしの折々を詩的香りに包んでいる。この歌集の特徴はまっすぐに前を見つめる健やかさにあるが、その特徴を支える軽やかな文体がこころよい。       三枝之・跋より

 

四六判上製カバー装 2500円(税抜)

大島史洋『短歌こぼれ話』

 

仄暗い古書店の奥から、じっと神保町界隈を静かに眺めている眼。その眼は、広く短詩型文学の世界を渉猟しつつ、わかりやすい言葉と表現で珠玉のエッセイとなる。

 

読後感の何とも言えぬさわやかさをとくと味わってください。

 

四六判並製カバー装 2000円(税抜)

短歌往来2017年11月号

◎巻頭作品21首

透明の傘/前川佐重郎

 

◎特別作品33首

パスワード/今野寿美

浅間も泥鰌も記憶切れ切れ/渡辺松男

 

■1ページエッセイ

◎ 遠い人、近い人

近所のお兄さん/島田修三 -

◎酔風船

無い物ねだり/千々和久幸

◎花和尚独語

ヤマノイモ・むかご/大下一真

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

■特集「篠弘」

◎評論

人間関係の歌/内藤 明

篠弘の社会詠/吉川宏志

◎篠弘の5首

玉井清弘、栗木京子、黒瀬珂瀾、 小島ゆかり、大井 学、松平盟子

 

篠弘50首抄/三枝昂之選

等身大のリアリティ/三枝昂之

 

■エッセイ うたと評論について

奪われたものの回復/大辻隆弘。

強靭な精神の人/沢口芙美

篠弘年譜/富田睦子

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー◎作品七首

灯台草/松平修文

検見川の蓮/永田典子

朝日さしきぬ/安田純生

風/松永智子

とぎれとぎれに/石橋妙子

百日紅/橋本忠

夏の記憶/小石薫

後の月/中川昭

病床/市原志郎

遠く吹く風/伊吹純

 

◎作品13首

白きニンフ/綾部光芳

再稼働/桑原正紀

ストームチェイサー/尾﨑朗子

メドックマラソン/本田稜

平成二十八年五月七日、民子歌碑祭に列して/逸見久美

退職/栗原純生

かあとんぼ/大原葉子

錆色の時/田村元

種箪笥/大地たかこ

 

◎作品8首

丹塗りの小箱/永平綠

黄に咲く花ら/脇中範生

驟雨/堀部知子

安珠はアンカー/福島久男

可笑しなこと/森藍火

阿弥陀遭遇記/前川博

写真集/吉田員子

乾いた時間/武田素晴

『雪の記憶』まで/篠田和香子

ICUにて/宮本清

半夏生/石井ユキ

不確かな年月/水門房子

 

■連載

◎<歌・小説・日本語>

連歌のこと、補遺/勝又浩

◎「世界を読み、歌を詠む」

邯鄲/坂井修一

◎若い短歌作者へ茂吉からの手紙

才媛杉浦翠子への場合(続)/秋葉四郎

◎メロディアの笛Ⅱ/渡英子

◎|浪々残夢録

保田與重郎と万葉集・ニ/持田鋼一郎

◎時言・茫漠山日誌

予備校ライブ/福島泰樹

◎編集者の短歌史

前田透先生の死と俵万智さんとの出会い/及川隆彦

◎歌誌漂流/鈴木竹志

 

■今月の視点

因縁/柳澤美晴

■今月的新人

作品5首 ハートの3だーれだ/嶋 真太郎

■新刊歌集歌書評

永田和宏作品集Ⅰ/池田はるみ

前川多美江歌集『水よ輝け』/島内景二

吉村明美歌集『幸福な時間』/池本一郎

伊良部喜代子歌集『夏至南風』/屋良健一郎

岩尾淳子歌集『岸』/川野里子

遠藤由季歌集『鳥語の文法』/前田康子

野田恵美子歌集『風のあしあと』/佐伯裕子

斎藤千代歌集『四月一日。』/西村美佐子

麻生千鶴子歌集『白い道』/久保美洋子

■作品月評

九月号より/阪森郁代

評論月評/高山邦男|

■全国往来情報

■編集後記

 

表紙写真/篠弘

本文カット/浅川 洋

 

山本雪子歌集『楤の木』

人生には幸せな時間が流れている。

見るもの、聞くもの、そのすべてが輝く光を帯びているはずだ。

掬い取るように、丹念に、日常の出来事を詠みながら、

しなやかに刻まれてきた年輪は、くっきりと確かな歌の姿を見せてくれる。

 

四六判上製カバー装 2500円・税別

萩岡良博歌集『周老王』

 

雪の森に雪けむり立つきらきらと時間はときに見ゆることあり

 

もみづる日をみなご生まるたまきはるくらきうつつのあかりとなれよ

 

しづくして虹消えはてし宇陀の野の伝承ひとつ緑青を噴く

 

譫妄の父泣き語る戦ひの空をほととぎす啼きてわたれり

 

いくたびも問ふ森に問ふいくたびも霧に洗はれもみぢするため

 

母は沼おぼろおぼろと深みゆきてぬきさしならぬまでにいとほし 

 

 

たしかに聴こえる。

大和宇陀の野や山から、ひそかに伝わってくる古代歌謡のひびき。

古代のまぼろしが時として日常の中に紛れ込みながら、骨太い詩魂を形成した。

 

いったい、家族とは何か、同胞とは何か、世界とは何か。

 

 

A5版上製カバー装 2500円・税別


鈴木香代子歌集『あやめ星雲』

肉体をもたぬいのちは涼しからんあやめ星雲もはるけき人も

 

 

いのちに触れる。

今ここにあるいのち、

森羅万象を流れ行くいのちを歌う。

他界のまなざしをもって、

日常の生の起伏を見つめる時、

あたらしい鼓動が歌に宿り始める。

 

病廊をゆくいもうとは角曲がりふいに消えたりわれはおののく

祈るほかなけれど指は組まざりき此岸に一本の綱手繰るため

木もれ日の道はしばらく続きおり次の悲へゆく序奏のように

 

自閉症アスペとアガペ似ておりぬ独りの愛は独りにかえる

ゆるらかに水抱くコップ一生かけわれら不可逆の水運ぶなり

 


鹿取未放歌集『かもめ』

 

受胎告ぐるどの天使も羽たくましくひざまづくとは支配に似たり

締め切り日は〈世界終末〉の後にありテーブルのうへに卵が一つ

プログラミングされをるのみにてケータイに〈夜更かしでね〉と囁かれをり  

学会に行きて戻りてさらに行く子に見えない()()をただ振つてゐる

タンパク質ファミリーの図を見てあれば賑やかにして邃し身体

A、C、G、T A、C、G、T かもめはかもめ空があをいよ

 

言葉の連鎖は命の連鎖。

豊穣にして切っ先の鋭い言葉と言葉の相剋。

心たゆたい、屈折しつつ歌の曠野に一人称の影を落とす。

 

ゆっくりとほどかれていく魂の痛ましさの声を聴く。


清田由井子著『歌は志の之くところ』

いのちと自然、社会とのかかわりの中で、

歌を詠むとはどういうことなのか。

その根柢をつねに問い続け、成熟していく心と思想を、

火の国阿蘇から発信し続ける、渾身の歌論。

歌とは述志の文学である。

 

<本書・目次より>

抒情としての今日性

前衛歌人のメモワール

否定から肯定の思想へ

いかにあるべき女歌

うたは「訴え」―豊饒の涙をつづる―

黒の彼方

歌の根柢―八十年前の雪―

魂の原野―福島泰樹論―

ひそかなる花野の闘い―安永蕗子論―

いさちる渚の歌人―谷川健一論―


石井喜久子『更紗石』

銀嶺の赤城は雄々しさながらに関八州をべるごとくに

冬に月の魂しづめとぞ筆もてば墨の香しるく匂ひつつ立つ

亡びしは滅びの色の草もみぢ更地のままに秋立ちにけり

()の孫はけふははたちの祝膳かこめばほのぼの溢れくるもの

子らは去りふたりの老いにゆるゆると時は流れて小寒となる

 

過ぎ去っていった歳月のなかで、陰翳をもってよみがえる旅の記憶、亡き人々の顔、そして山河草木。目を閉じて、深く静かにこころをめぐらせれば、かれらは歌のすがたとなって現れてくる。

 


大原葉子歌集『だいだらぼふ』

 

潰れるかも知れぬ銀行しよひこみて見舞ひくるるよこの青年も

風のなき黄落の森の華やぎは日雀とび去りゆきてさらなり

川水にななめに降り込む雪のかげ千の小魚の走れると見き

松ぼくりもつと落とすと石抛る幼よいくつもよき恋を得よ

農道の草に捨てある山椒魚 生とも死とも()とも(せう)とも

 

 

巨人伝説の山とのおごそかな対峙。

そこに歌の発想の始源をしかと定め、

大きくしなやかに拡散してゆくしらべ。

 

思念の深みから探り出す、

 

たしかな現実の手ざわり。


藤元靖子歌集『はらはら零る』

白い花を探して歩く 今朝はすぐ見つかるものをさがして歩く

棒切れで自分の周りに円を描く くるっと一まわり元へ戻れた

悲しみは色なく音なくわたくしを流線形にのこしおく風

夕かげに木の葉一枚かえすように帰されたなら紛れればよい

忽ちというにはあらず十日月の傾きながら西へ巡る間

 

自然にさりげなく寄り添い、

その深い懐にそっと抱かれる。

淡々として、平明に、自在に。

 

そんなふうに歌を詠む

言葉は木の葉、しらべは風


辻尾修歌集『海を見ながら』

十一時二分を知らする何もなき船旅にゐて両眼を(つむ)

月に一度島に教へに来てくれるピアノ教師を釣りでもてなす

人文字に分校の子ら足らざれば親もまじりて航空写真撮る

バナナ売らぬ土地日本になけれども越してゆきたる二歳に送る

シスターの運転で来しシスターは手土産持ちて眼科に入りぬ

一万六千人の冥福祈るサイレンが一万五千人のわが町に鳴る

 

 

 

事柄の大小を問はず、相手に近いところまですつと心を寄せることが出来る。このことは想像力と関係するのだらうが、辻󠄀尾さんが歌を作る上で、共感性の強さが大きな力になつてゐることは間違ひない。

馬場昭徳解説より

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

 


短歌往来2017年10月号

◉巻頭作品21首

釜伏山/御供平佶

 

 

◉特別作品33首

ビッグ・ブラザーより愛をこめて/ 藤原龍一郎

蒼のひびき/荻本清子

 

一ページエッセイ

遠い人、近い人ー人生の一日/島田修三

酔風船ー悲歌の時代/千々和久幸

花和尚独語ー秋明菊と豊道和尚/大下一真

 

 

[特集]玉城徹

 

◎主な内容/最も前衛を意識した歌人/戦争体験を重く持っていた  「アララギ」的な写実への反発/玉城さんの歌はなぜ「わからない」のか毒づき歌では右に出る人がいない/近代絵画からヒントを得て 「生活の再刻」には関心がない/「もう一つの前衛」という方法

 

■座談会 『玉城徹全歌集』を読むー玉城徹は前衛歌人だった!

篠 弘×森山晴美×恩田英明×阿木津 英

 

 

■評論

玉城徹の方法ーデッサン論/柳 宣宏

玉城徹のうた50首抄/高橋睦郎 選

抄出にあたって/高橋睦郎

 

玉城徹の一首

 小池 光

 内藤 明

 今井恵子

 江田浩司

 大辻隆弘

 大井学

 西村美佐子

 佐々木六戈

 遠山景一

 

 

 ◉作品七首

 朱 夏/春日真木子

 水涸れし/来嶋靖生

 夏座敷/筒井紅舟

 蚊母樹/水落 博

 女の技/下村道子

 介護の果て/松田愼也

 二都往反/黒木三千代

 共和国讃歌/鵜飼康東

 晴れよ/野地安伯

 窮 鼠/久々湊盈子

 

 

◉作品十三首

 元素図鑑/谷岡亜紀

 常 設/魚村晋太郎

 ゆふすげの丘/村松秀代

 わが老いの必要悪/佐藤和夫

 マントルピースの前に/石井みどり

 奈 良/櫛田如堂

 精 霊/浦河奈々

 

 

◉作品八首

 石獅子/運天政德

 八月八日 /前田弥栄子

 父祖の地 /田中内子

 蕊 /近藤芳仙

 アダージョ /平石眞理

 ベランダ /髙山美智子

 時鳥の詛語 /内田紀満

 認知症テスト /伊藤泓子

 星と月と /陣内直樹

 夢まぼろし /岡本瑤子

 

■連載ー世界を読み、歌を詠む 屍に美酒を/坂井修一

 

■連載ー結社の顔 花 林/樋口忠夫

 

■連載ー〈歌・小説・日本語〉 連歌のこと/勝又浩

 

■今月の視点 風土が生む短歌/本田一弘

 

■連載ー浪々残夢録 原日本文化についての一視点/持田鋼一郎

 

■連載 時言・茫漠山日誌より 死病を抱え/福島泰樹

 

■連載 編集者の短歌史 年のことども/及川隆彦ー118

 

■連載 歌誌漂流/鈴木竹志

 

■連載 メロディアの笛Ⅱ/渡英子

 

■連載ー若い短歌作者へ 茂吉からの手紙 才媛杉浦翠子への場合/秋葉四郎

 

◉今月の新人ー作品5首 濡れたる手/永山凌平

 

■新刊歌集歌書評

松平修文歌集『トゥオネラ』/平井 弘

光本恵子歌集『紅いしずく』/遠山利子

塚本靑史著『肖てはるかなれ』/松平盟子

五十嵐順子歌集『奇跡の木』/村島典子

西勝洋一著『短歌の周辺』/天草季紅

大地たかこ歌集『青き実のピラカンサ』/大口玲子

篠田和香子歌集『雪の記憶』/清水亞彦

宮本 清歌集『いとちゃんの息子』/上條雅通

滝口節子歌集『春落葉』/池本一郎

鎌田芳郎歌集『城山の楠』/森山良太

礒辺朋子歌集『蜜入り林檎』/山本登志枝

 

■作品月評ー八月号より/阪森郁代

■評論月評/高山邦男

■全国〝往来〟情報

■編集後記 

 

 

表紙写真/いりの舎提供

本文カット/浅川 洋


桝田紀子歌集『夜香木匂う』

 

私は、短歌とはそれが気の利いた高等な表現手段ではなくても、だれでもが素直にみんなと伝達し合える文学なのだ、とつくづく思うのである。それは、全ては自分の日常の言葉で、それを短歌表現に託する心の強さとして働くからである。

浜田康敬・跋より

 

四六判上製カバー装 2500円(税別)

国定里子歌集『各務原』

公園の桜の大樹五十年けものめく幹につぼみあふれつ

農をせし彼の日の麦を疎み来て弥生の店の麦の穂いとし

梅雨曇り俄の照りに白昼のわが身の影は足元にあり

英国など早く侵略し公然とひと迫ひはらひ国を盗みき

西瓜食み黒き種のみ判別すその様にして詐欺の解れば

 

国定里子さんの歌は独特だ。

多くは生活周辺の嘱目であるが何を歌っても歯切れがいい。

省略の文学であることを心得ているからであろう。

近現代の秀歌をなぞるような傾向は何処にもない。影響を拒否しながら作歌する強靭な姿勢とともに純朴な美しさがある。

島崎榮一

四六版上製カバー装 2300円・税別

 

 


石垣蔦紅『青き地平線』

老いの日は日日是好日老いの夜も愉快なりけり夢また楽し

 

めぐり合いとは愛すること。

この地上、何一つさえぎりもののない地平線のおおらかな青。

二人いっしょに老いの日々を温かく支えながら歌う。ハワイ在住歌人の試みる短歌とTANKAの世界。

 


oh,how I wish
I could melt
into the blue horizon,
drawing up my forehead
to the airplane window

(このままに青き地平線に溶け込みてゆきたし機窓に額寄せつつ)

 

四六版並製 2000円・税別


畑彩子歌集『虫の神様』

あかときに蜩鳴けり ふるさとは大き緑の虫篭なれば

海沿いの墓地へとつづく坂道を大潮坂と祖父のみ呼びき

山手線乗って降りればあとかたもなく新宿は消え果にけり

青空を三日見ないと死ぬという息子よ今日はくもりのち晴れ

「はる」という詩の音読を繰り返す次男の声が食卓照らす

 

文字通りの知力、胆力に長けた著者の久しぶりの第三歌集。Ⅰ部は出産や育児が主題だが、対象への距離を保って客観的な軽快感がある。Ⅱ部、Ⅲ部では虫のような小さな生命へのつよい思い入れをみせ、また身近な人々との交歓を通して自ずと自覚されてゆく生の時間との葛藤もあって、文学を志した日の青春性の回復がはかられてゆく。

かつても生半可な苦悩などはいわなかっつた著者の、ひとつの転機をはらむ頼もしい歌集といえよう。

馬場あき子・帯文より

 

四六版上製カバー装 2500円・税別


服部崇歌集『ドードー鳥の骨』

サンマルタン運河は夏のきらめきを注ぎて白き船を持ち上ぐ

笛吹きが笛吹かずしてふふふふとわらひをさそふパリの祭日

二年目のパリの夜なれば驚かず青き火を噴くエッフェル塔よ

 

 パリ同時多発テロの時期を含む3年間の官僚としてのパリ生活の中から生まれた340首。定住というには短く、旅行にしては長い3年という時間ならではの貪欲な取材がスリリングである。描かれた風景の輪郭はあくまでもクリアであり、表現された事物の動きが徹してシャープなのは、パリ独特の乾いた空気を味方につけた作者の手腕であろう。

                        佐佐木幸綱

 

 

左岸より右岸にわたり右岸より左岸にもどるビルアケム橋

シテ島にあたまのあかい鸚鵡ゐて君との日々を吾に語らしむ

ふちなしの眼鏡に顔を挿げ替へて硝子のパリのパサージュに入る

行きつけのカフェの給仕と初めての握手を交はすテロの翌朝

フランスの最後の晩餐友とゐて何度もなんども灯りの消える

 

四六版上製函入 2500円・税別


浅田隆弘歌集『四季の譜』

ひとひらの蓮の花びら水に散りうすくれなゐの小舟となりき

朝まだき人影のなき園内の回転木馬みな宙に浮く

木もれ日のなかをわが影歩みをり我をはなれし人のごとくに

雪の上に赤き椿の一弁が命あるかに輝きてあり

 

何ものにもしばられることなく、気ままに自分の思うままに感じたままに短歌作りに励んでいます。作品の出来不出来は別にして、短歌を作る過程が楽しみです。夢中になって自分の描きたいことをいかに表現したらよいのか、推敲をかさねることは苦しいけれども楽しいことでもあります。           ――あとがきより

 

四六版上製カバー装 2500円・税別


田土才恵歌集『風のことづて』

人から人へ、親から子へ、孫へ

風がささやきかけるように

伝えたい思いがある、伝えたい歌がある。

 

そっと耳をすませば言葉はいのちあふれる涌井の

ようだ。

 

 

なにがなし時計いくつもならべいていずこにあらんわれのみの時

湯たんぽに湯の音とぷとぷ階上る今日の終わりの足音立てて

もの書けばたちまちペンを貸せといい意志見せはじむ一歳の春

ケアハウスの窓ひそやかに開けられて春愁ひとつ今とき放つ

風となり水とはなりてめぐりつついのちのほむら若葉縫いゆく

 

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

渡邉千恵歌集『神帰月』

 

白妙の雪纏いたる里山に昔ありけり竈の煙

ひと処ひたくれないに匂い顕つ田の畦過ぎてまた曼珠沙華

 時雨きて樹樹のもみじの深みたる篠脇山荘屋根の葺き替え

もののふの風雅つらつら敷島の道を照らして古今伝授は

舞うほどに花さんさんと山里に歌の心の配らるる宵

ちり敷ける桜絨毯ふみ急ぐ昼餉ま近き穀雨の道を

聳え立つ<(かみ)(かえり)(すぎ)>ゆさゆさと七百年の静かなる呼吸

 

 

雪の里山にしずかに立ちのぼる昔の煙。こちらの田の畦に、あちらの田の畦に、かがやくように群れ咲く曼珠沙華。岐阜県の郡上大和は、東常縁の古今伝授の里として文化的な面で知られているが、長良川沿いの自然豊かな地でもある。そんな郡上大和の文化と自然を、渡辺千恵さんが、ぞんぶんに自在にうたいあげた一冊である。佐佐木幸綱

 

四六版上製カバー装 2600円・税別

 


澤村孝夫歌集『山峡』

昔から山の中野代名詞と言われた僻地の自然を友とし、

過酷な洗礼を受けつつ楢山に落葉を攫い、稲や麦や蕎麦を作り、秋の田に十段もの高い稲架を組み、牛を飼い、杉や桧の枝打ちをし、猪と共存する生活の中から生まれた厳しくも美しい歌集。

 

蜩のひとつ啼きしが忽ちにひろがりゆきて峡明けんとす

弧を描き鳶は舞いいん声のみに足りて山深く桧枝打つ

山始めの神事を見んと従ききたる幼一様に顔を正せり
十段の稲架いつまでを結い得るや太き組み木を解きつつ思う

朝々をきりり締めゆく亡き妻の縫い置きくれし細き山帯

 

A5版上製カバー装 2600円・税別

 


短歌往来2017年9月号

◉巻頭作品21

 梅をめぐる物語/三枝昻之

 

◉特別作品33

 つるつるの世/米川千嘉子

 201号法廷/ 大口玲子

 

■一ページエッセイ

 遠い人、近い人ーあんたはエライッ/島田修三

 酔風船ー自慢と痩せ我慢/千々和久幸

 花和尚独語ー水引草の思い出/大下一真

 

評論 世紀の視座

 「いふほどもなし」考/小林幹也

 

[特集]ハード  ワーキングをうたうⅦ

 

 ◉作品八首+エッセイ

  オリオンの星/大城永信

  祈るかたちに/藤井ふさ子

  安全生活/田中徹尾

  フリージア待ち/茂木敏江 

  ロッキング・オン/螟虫 良

  寄り添う/大木澄江 

  銀の鉗子/高橋 秀

  働きますぞ /伊藤康子

  心如工画師/中田文花

  豆の夢/金森泰子

  我が社の名刺/黒岩剛仁

  親方、子方/小林真代

  黄のみずみずし/澤村孝夫

  要注意は我/兼平あゆみ

  客室整備/金子愛子

 

 ◉作品七首

 褒 賞/温井松代 

 海の底まで/平山良明

 鷗公園/村山美恵子

 獏に食べさす/佐田 毅

 泰山木/長澤ちづ

 初 夏/安藤直彦

 レースの一輪/春日いづみ

 穴熊囲い/三井 修

 棍 棒/大辻隆弘

 ダルコット峠の夏/鶴見輝子

 

◉作品十三首

 献 身/菊池 裕

 ポーの一族/阪森郁代

 杳き家族も/林田恒浩

 傘さして/糸川雅子

 空白の三日間/林あまり

 歩く男/柴田典昭

 あさがお模様/遠藤由季

 幸福の諸相/佐古良男

 テーブルは海/大谷ゆかり

 梅雨の日/後藤恵市

 ちちのみの/竹内由枝

 

◉作品八首

 透明の雨傘 /塩入照代

 裸 足 /岡田真明

 花のある光景 /前田えみ子

 枇杷に吹く風 /島内美代

 折 々 /小野澤繁雄

 夏至線 /釣 美根子

 Quo Vadis,Domine? /木村美映

 モモイロタンポポ /村山千栄子

 赤城領 /石井喜久子

 百歳嫗 /岡 一輻

 

連載ー結社の顔 宇宙風/押切寛子

 

連載ー世界を読み、歌を詠む 箱舟/坂井修一

 

連載ー浪々残夢録 保田與重郎と万葉集/持田鋼一郎

 

連載ー時言・茫漠山日誌より 死灰に咲く花 /福島泰樹

 

連載ー編集者の短歌史 仁木悦子さんの思い出/及川隆彦

 

連載ー〈歌・小説・日本語〉 都々逸その他/勝又浩

 

連載 メロディアの笛Ⅱ/渡英子

 

連載ー若い短歌作者へ 茂吉からの手紙 才媛杉浦翠子への場合/秋葉四郎

 

◉今月の新人ー作品5首 逆さ虹/宮城十子

 

今月の視点 「本当らしさ」について/嵯峨直樹

 

連載 歌誌漂流/鈴木竹志

 

新刊歌集歌書評

『御供平佶歌集全四冊』/加藤英彦

横山岩男歌集『青桐』/外塚 喬

田村広志著『岩田正の歌』/内藤 明

大松達知歌集『ぶどうのことば』/大井 学

藤岡眞佐子歌集『思愁期』/滝下恵子

大城秀彦著『満州での敗戦の記憶』/冨尾捷二

谷川電話歌集『恋人不死身説』/野口あや子

 

 

作品月評ー七月号より/一ノ関忠人

評論月評/高木佳子

全国〝往来〟情報 

編集後記

 


若松喜子歌集『砂嘴のソクラテス』

空翔けるテレビドラマの歌うたい子は大股に角を曲がって

忌のあした天がけるごと霧ながれ歌のことばとならず消えたり

青鷺が静止画像のごとたてり砂嘴のソクラテスとひそかに名付く

水草の根に潜りたる目高たちわが水播けば水の輪にくる

波除け石ひとつひとつに刻まるる名前のありて入江囲める

 

 

ひたむきに歌と真向かう。

歌がひそかに息づき始める。こんなにも豊かで、変化してゆく日常世界。

 

「短歌を創ることは、生きることはを、自分自身に問うこと」という先師・香川進の言葉を反芻しつつ、あるがままの自らの感性に歌を寄り添わせて詠み続ける。

 

四六版上製カバー装 2600円・税別

加藤走歌集『風よ、ここに』

塩のごと微かな音に風立ちてこの構内に押し寄せるもの

 

風は立ち上がるように存在感を形成し、構内に押し寄せて来るのだ。第二、第三の波も次に控えている。鋭い感性は必要条件に過ぎず、完成でとらえたものを抽象的な思弁へと昇華させた歌だ。

小塩卓哉・解説より

 

風の字が部屋の隅にて風になる娘が書きし半紙ひとひら

灼熱の舗道の上を飛蝗が歩む何かきつと麻痺してゐる

 

陽がさあつと枯葉の径に差し入りてかの日がわれを攫つてゆきぬ

目が合ふと鴉の方から目を逸らすかなしきものがむくむくと兆す

水切りの撥ねあと引きて消えてゆく石を湖底はしづかに受け取る

 

四六版上製カバー装 2600円・税別

 

 


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伊良部喜代子歌集『夏至南風』

 

南風(はえ)に吹かれ女身籠るそのむかし風の父待つ美(うま)し児いたり

戦わず勝たず敗れず生き来しを責むるが如き今日の夕映え
しらしらと明るき冥府あるというわが生れし島の真砂に
何もかも押し流しゆく大津波 かりそめの世の真実のこと
死者は青き海底(むゆう)に行くとぞ海底を抜けまた人の世に生まれ来るとぞ
産土は沖縄、移り住んだみちのく仙台。今なお残る戦争の傷跡、そして震災の悲惨。もはや私の中から何かが抜け出してしまったのか。
自らの魂の在り処を探し取り戻すために。
歌の霊異を信じながら歌う。
四六版上製カバー装 2500円・税別

野田恵美子歌集『風のあしあと』

潮騒のごとき囀りつばくろの葦の塒に吸はれて止みぬ

離れ住む母の買物携帯に訊きつつ選ぶ秋のブラウス

潮風に吹き寄せらるる花のごとかもめ群れゐる知多の渚に

胸底の埋め火かもとシクラメン夕べの窓に緋の色震ふ

氷の色の蒼空映る湖にかそかなさざ波水鳥の影

安らかに笑む母の面苦行より解き放されし尼僧のごとく

 

鳥に関わる知識と情愛が実に深く、鳥をモチーフにした作品が主流になっています。繊細でナイーブな歌は作者の人柄と相通じるものがあり、純粋な思いが伝わってきます。(青木陽子・帯文)

 

A5版上製カバー装丁 2600円税別


短歌往来2017年8月号

◎巻頭作品21首
 夏至までの日々と大岡信さん/岡井 隆
◎一ページエッセイ
 遠い人、近い人ートキさん/島田修三
 酔風船ー上から目線/千々和久幸
 花和尚独語ー朝顔の花/大下一真
◉特別作品33首
不慣れな旅/小黒世茂
神河/ 川野里子
■評論21世紀の視座
 近世和歌から近代短歌へ/屋良健一郎
[特集]30代歌人の現在
◉作品十首+春の季の愛誦歌
 スプリング・エフェメラル/山木礼子
 暁を雲雀のように落ちながら/服部真里子
 おとこ千人/野口あや子
 ち ぢ/田口綾子
 人間ですよ!/谷川電話
 月世界/小島なお
 影ほどに/吉岡太朗
 たんねぇ/佐佐木定綱
 The night is still young/伊波真人
 十二首/堂園昌彦
 もしこれが恋じゃないっていうのなら/山田 航
 花を手向ける/楠 誓英
 里帰り/阿部真太郎
 教育実習/森垣岳
 夜空には貰いそびれたきびだんご/谷川由里子
 花火、枯れ草/大平千賀
 ドンジャラと初夏/山崎聡子
 くす玉/野田かおり
 予告編/小島一記
 午後の声/岩内敏行
 絵描き歌に雨/月丘ナイル
 食べたい光/花山周子
 夏草(LANDその13)/石川美南
 嘘じゃなくフリ、三歳だから/大里真弓
 奪はれて/佐佐木頼綱
 汽水域/光森裕樹
 すいくわの匂ひ/澤村斉美
 ひとだま/三原由起子
 げつくわう記/柳澤美晴

 五月の日々/西巻真

 ワンプ/西之原一貴
◉作品七首
 まぼろし/椎名恒治
 葉守の神/前川斎子
 金の花粉/山村泰彦
 淡き空色/花山多佳子
 痕 跡/田野 陽
 閃 光/青木陽子
 解体の音/武田弘之
 照り返し/佐波洋子
 牡蠣の筏/大河原惇行
 泡立つ/駒田晶子
 百%の/五所美子
 淡青の空/斎藤佐知子
◉作品十三首
人間の残酷/松坂 弘
白 雲/池田はるみ
花は咲けども/山本 司
千の手/中西由起子
華誉列伝天竺牡丹靚女/水城春房
ラストミッション/小関祐子
記念切手/平山公一
強がり/貝沼正子
家書家伝/竹下洋一
サピエンスの喪/柿本希久
■追悼ー大岡 信
「ことばの海」に生きた父/大岡亜紀
■追悼ー清水房雄
〈除外例なき〉上巳之御節供/藤室苑子
■連載ー結社の顔 冬雷/桜井美保子
■連載ー〈歌・小説・日本語〉 日本語の韻律/勝又浩
■連載ー世界を読み、歌を詠む 卵を食べる/坂井修一
■連載ー浪々残夢録 天平のプレイボーイ/持田鋼一郎
■連載ー時言・茫漠山日誌より ベルリン詩祭/福島泰樹
■連載ーメロディアの笛Ⅱ/渡英子
■連載ー若い短歌作者へ 茂吉からの手紙 才媛杉浦翠子への場合/秋葉四郎
■連載ー編集者の短歌史 30代歌人のこと/及川隆彦
◉今月の新人ー遠く極光/田上連樟
■今月の視点 「うた」であること/大井学
■連載 歌誌漂流/鈴木竹志
■新刊歌集歌書評
『石川信雄著作集』/押切寛子ー120
山口弘子著『無名鬼の妻』/酒井佐忠ー121
加藤和子歌集『朝のメール』/村島典子ー122
奥田亡羊歌集『男歌男』/森本 平ー123
山野吾郎歌集『痩せ我慢』/伊勢方信ー124
外塚 喬著『木俣修のうた百首鑑賞』/久保田 登ー125
大谷ゆかり歌集『ホライズン』/前田康子ー126
秋山佐和子著『長夜の眠り―釈迢空の一首鑑賞』/中西洋子ー127
鈴木和雄歌集『婆娑羅一代』/永谷理一郎ー128
鈴木和雄著『珂神』/爲永憲司ー129
鈴木直子歌文集『流れる雲』/寺島博子ー130
■作品月評ー六月号より/一ノ関忠人 ー134
■評論月評/高木佳子 ー139
■全国〝往来〟情報 ー142
■編集後記 ー144
表紙画/黒沢忍
本文カット/浅川 洋

五十嵐順子『奇跡の木』

奇跡の木(Survivor Tree)と呼ばれ一本の梨の木残る 証言者として

 

グラウンド・ゼロの復旧作業中に瓦礫の中から発見されたこの梨の木は、当初深刻なダメージを受けていたということですが、手厚い手当をされてよみがえり、大きく枝葉を伸ばしていました。人生の困難に直面したとき、この梨の木の幹の手触りを思い出し、支えとしたいという思いもあります。

                  〈あとがきより〉

 

みどりごのしゃっくり見んと若き父母その親たちが取り囲みいつ

うす青くパレスチナ暫定自治区見ゆただ静かなる対岸として

畑から冬瓜を抱いてくるときにこっそり夫は笑っていたか

子に負われ捨てられにくることもよし黄葉の峠越えつつ思う

くりかえす「あなたは私の雨」という手紙のことば幾度も胸に

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

 


前川多美江歌集『水よ輝け』

朝空の光あつめて直立す原爆落下中心地の碑

花をくぐり竹山広に会いに来ぬつくづく死者は声あらぬ人

七十年後のこの生徒らを思いみる献水桶の水よ輝け

観覧車あけゆく空にゴンドラの鋼の滴吊りさげており

お母さんと呼ばれていたら一回り大きな傘を持ったであろう

 

これまでの三冊の歌集を通して、反戦・反核の思ひ、そして早世した子への鎮魂の思ひは前川多美江さんの短歌の底を流れるものとしてあつた。そのことは今度の歌集においても変わらない。一生をかけて詠み続けるテーマを自らに課すことの大切さをこの歌集は教えてくれる。(馬場昭徳・帯文)

 

A5版上製カバー装 2600円・税別


麻生千鶴子歌集『白い道』

絵の題は「水のほとり」と記したりいつか住みたし水のほとりに
船の荷を解けばかさりと音のして旅順の丘に摘みし吾亦紅
葉桜の影濃くなれる曲がり角かの日の花は白く咲きいし
駅までは行かずはづれの踏切に人を送りき初夏のこと
零したる水を掬ひしおろかさもなべてさむ八十四歳
確認しておきたいのは、麻生さんの作品の基本的なトーンが常に前向きな姿勢にあるといふことだ。これは何も麻生さんがらくらくと人生を過ごしてこられたからではない。当然、様々な困難を抱へながら生きてこられたはずである。
しかし詩に対するときの選択として、明るい面から切り取りたいといふ姿勢がこれらの作品を作らせてきたのである。改めて、その姿勢の尊さを思つてゐるところである。
馬場昭徳(解説より)
四六版上製カバー装 2500円・税別

 

 


松平修文歌集『トゥオネラ』

窓外は暮れ、青炎のごと燃ゆる薔薇幾つ風に揺れてくづれて
誰も信じるな、何も信じるな 冬森で茸をさがす老婆のやうに
樹や草の役多き劇 少年も少女も人間の役やりたがる
日暮らし雨は男待つ日の陰雨(ながあめ)で、尿雨(ゆまりあめ)は男見限る日の俄雨(にわかあめ)
夜空の果ての果ての天体(ほし)より来しといふ少女の陰(ほと)は草の香ぞする
歌集『水村』が、雁書館から刊行されたのは一九七九年九月。
『水村』に寄せる冨士田元彦社主の期待は並大抵ではなかった。
一升瓶をしつらえ冨士田さんを待たせながら、
解説を書き上げた夜のことなどが懐かしく思い出される。
・・・・・とまれ、第五歌集『トゥオネラ』四百八十五首掉尾を前に、「窓外は暮れ、」の一首が燃えながら立つ。(福島泰樹・栞より)
四六版上製カバー装 2600円・税別

 


篠田和香子歌集『雪の記憶』

その中に苦悶を溜めてゐるごとき鈍き音させ今し雪落つ

なまはげの面を付けたる瞬間に若者ふつと大きくなりぬ

目を伏せる花嫁の切手に消印は触るるごとくに押されてゐたり

江戸切子の青きグラスにさをさをと注げば酒の自づから冷ゆ

しなやかな腰に継ぎ足す竿竹の大きく撓ひて夜が明るし

 

秋田県大曲に生まれ育った篠田和香子さんに雪の歌が多いのは当然であろう。本書のタイトルも「雪の記憶」である。

雪の夜に生まれしゆゑの記憶ならむ遥かに聴こゆ雪の降る音

歌われているように雪の夜に生まれ、そのことを自分の原体験として大切にしている。

伊藤一彦・跋より

 

四六版上製カバー装 2600円・税別


短歌往来2017年7月号

◉巻頭作品21首
火事彦の歌/伊藤一彦
一ページエッセイ
遠い人、近い人 空色の瞳/島田修三
酔風船 分の効用/千々和久幸
花和尚独語 一枝の木槿の話/大下一真
◉特別作品33首
黄色い月/時田則雄
夏の湿り/ 佐伯裕子
■評論 世紀の視座 海の泪の向こうへ/加藤英彦
[特集]黒南風のうた 白南風のうた
◉作品十首+愛誦歌一首
  風 野/清田由井子
  白南風として/浜田康敬
  薫 風/松川洋子
  風車/伊勢方信
  素 足/佐藤孝子
  無人駅/岩井謙一
  時のあはひを /三輪良子
  朝 市/久山倫代
  三百の船/川涯利雄
  梢に光/小川佳世子
  草 巣/南 鏡子
  花の咲く庭/小谷博泰
  風に吹かれて/仲程喜美枝
  黒南風のころ/小泉桄代
  水 音/田中教子
  大地震以後/塚本 諄
◉作品七首
 またも遭ふ/竹村紀年子
 日 日/板宮清治
 約束はなし/小島ゆかり
 釣り忍/高久 茂
 斜めの雪渓/結城 文
 伝へむ子らに/真鍋正男
 吹っ飛ばせ/光本恵子
 翔け去りゆけり/大塚寅彦
 忘れ草/小柳素子
 同 志/古屋正作
 北 上/中根 誠
 さくらの子供/梅内美華子
◉作品八首
 海のほとりの月読の神/小寺三喜子
 いよよ華やぐ/森川和代
 法の重み/今井正和
 北を指す/君山宇多子
 庭すみのさくら大木/永井秀幸
 睡 房/大西久美子
 縮みゆく老い/依田 昇
 水の路/小林敬枝
 空を飛ぶとき/高橋まさを
 みさご/楜澤丈二
 ふるさと高松 /高橋美香子
 戦中派老ゆ /藤田耀子
 力 士 /村山 伀
■新連載ー世界を読み、歌を詠む 楽しみと苦しみと/坂井修一
■歌人回想録ー安藤美保
 小歴/武藤康史
 安藤美保のうた50首抄/清水あかね
 訂正しておきたいこと二、三/武藤康史
■連載ー結社の顔 みぎわ/河野小百合
■連載ー〈歌・小説・日本語〉 三拍子言語と四拍子言語/勝又浩
◉今月の新人ー作品5首 風、光る/矢澤愛実
■今月の視点 高齢化日本の新化/櫟原 聰
■連載ー浪々残夢録 遊行婦女たちと大伴親子・その一/持田鋼一郎
■連載ー時言・茫漠山日誌より 飯田義一死す/福島泰樹
■連載ー編集者の短歌史 職業の歌人の企画/及川隆彦
■連載ー歌誌漂流/鈴木竹志
■連載ーメロディアの笛Ⅱ/渡英子
■連載ー若い短歌作者へ 茂吉からの手紙 青年哀草果への直言/秋葉四郎
■新刊歌集歌書評
 佐藤通雅歌集『連灯』/本田一弘
 三枝浩樹歌集『時禱集』/香川ヒサ
 坂井修一歌集『青眼白眼』/三枝浩樹
 大辻隆弘歌集『景徳鎮』/魚村晋太郎
 糸川雅子著『詩歌の淵源 ―「明星」の時代』/米川千嘉子
 大辻隆弘講演集『子規から相良宏まで』/藤原龍一郎
 大原葉子歌集『だいだらぼふ』/さいとうなおこ
 南 輝子歌集『WAR IS OVER !百首』/石川幸雄
 寺島博子著『葛原妙子と齋藤史』/寺尾登志子
 三宅勇介詩集『亀霊』/江田浩司
 石井喜久子歌集『更紗石』/山野吾郎
■作品月評ー五月号より/一ノ関忠人
■評論月評/高木佳子
■全国〝往来〟情報
■編集後記
表紙画/黒沢忍
本文カット/浅川 洋

宮本清歌集『いとちゃんの息子』

風 寒し。エレベーターの工場の実験棟はただひとつ立つ

 

寒風に曝され「ただひとつ立つ」実験棟は作者自身なのだ。

自身の孤の姿をそこに重ねているのだと。

人が人として生きることの孤独、寂寥、苦さが本集のベースにある。

平林静代・跋より

 

「おれの場所」の文字残されぬ。今しがた中学生のいた橋の下に

八日目を生き抜く者もありぬべし。病院帰りに聞く 蝉しぐれ

利根川を快速電車がわたるとき、鴉の群れも共に渡りぬ

「いとちゃんの息子」と呼ばれ、「いとちゃんの息子」であったとつくづく思う

国と国の争いの種 またひとつ、芽生えて揺らぐ。島国日本

 

四六版上製カバー装 2500円・税別


岩尾淳子歌集『岸』

校舎から小さく見える朝の海からっぽの男の子たち、おはよう
ほんのりと火星の寄せてくる夕べちりめんじゃこをサラダに降らす
あんまり思い出したくないんだ戦争は、血を噴きそうな先生の喉
とけそうな中洲の緑にこの世しか知るはずもない水どりの群れ
絡みつく猫を日暮れに押しのけて立ちたるままに冷酒をそそぐ


握りしめれば手のひらから消えてしまう三十一音。
短い歌が遠い鈴の音のようにこころに響く。
歌を詠む人がいて、その歌を読む人がいる。
そこに伝わるほのかな温もり。
歌集を編みながらそんなことを思った。(あとがきより)
四六版上製カバー装 2500円・税別

御供平佶全四歌集

収録歌集

『河岸段丘』『車站』『冬の稲妻』『神流川』

戦後四十年を日本に存在して昭和とともに消え去った「鉄道公安」を、私が経験した後半の二十年を区切の既刊歌集四冊の作品全体を見直して、ひとまとめにしたものがこの一冊である。

 

『車站』

 ぴりぴりとわが青ざむる顔をすぎ彼の視線は鞄に坐る  
 バッグ割る指の見えし瞬間の充実の感替ふる何がある

 超越を心に重く年の過ぐ美学のくだり超えよわがうた

 

3000円・税別

 


藤岡眞佐子歌集『思愁期』

思春期は遙かにすぎて今思愁期老いには老いの反抗期あり

霧にうかぶ清しき桜の内らより身を投げ入れよと声の聞こえる

赦されて無限を昇りゆけるもの鳩のむくろの胸厚かりき

在るという痛みに耐えるものたちよ人間も樹も洞をもつもの

がっちゃんとこの日常に鍵かけて森に向かって歩みいだせり 

 

いったい、人はどこから来て、どこへ往こうとしているのか。そんな問いかけが、つねに歌の根底に横たわっている。春の逃げ水のむこうの彼岸を想像したり、桜の中から声が聴こえてきたり、鰭をもって大海原を泳ぎ、側溝を流れる木の葉に載せてと懇願する。こうした虚の空間へと入っていくことのできる無心さこそが、藤岡さんの歌の魅力である。

喜多弘樹・解説にかえてより

 

2500円・税別

  


短歌往来2017年6月号

◉巻頭作品21首
流響院卽詠二〇一七/水原紫苑
一ページエッセイ
 遠い人、近い人⑥ー独演会/島田修三
 酔風船○ー百回目の休日/千々和久幸
 花和尚独語◯ー食欲と草花/大下一真
■評論 世紀の視座遊びを遊ぶ/藤島秀憲
◉特別作品33首
即興小品集/小池 光
秘されし言葉/ 松村由利子
[特集] 第十五回前川佐美雄賞 第二十五回ながらみ書房出版賞発表
受賞の言葉/小紋 潤
受賞の言葉/高山邦男
●前川佐美雄賞受賞作『蜜の大地』  首抄/小紋 潤

 

●ながらみ書房出版賞受賞作『インソムニア』  首抄/高山邦男
選考を終えて
 佐佐木幸綱
 三枝昂之
 佐々木幹郎
 加藤治郎
 俵万智
◉作品七首
 薇蕨の音符/波汐國芳
 思 索/秋元千惠子
 水 仙/今井恵子
 ぱあどれ芹/雁部貞夫
 腕/横山未来子
 羽 音/山田富士郎
 九階の空/横山三樹
 春の雑踏/平林静代
 クリスマスローズ/岡崎康行
 時を積む/梅内美華子
 無事か元気か生きているか/梓 志乃
◉作品八首
 梅花片片/市野千鶴子
 冷たき兄/多賀陽美
 老いたるらし/平尾 眞
 メモリィ/髙木絢子
 白夜界/前田 宏
 ゆうれい梅/井口世津子
 昨日また明日 /宮野克行
 春の息吹/塚田キヌエ
 いのり/北久保まりこ
「忖度」の文字/内藤三郎
 五つ目の季/木村文子
 大水の記憶/太田裕万
◉作品十三首
三日月/尾崎まゆみ
愛河波浪哀歌/持田鋼一郎
ひとのたちあな/川崎あんな
黒電話/小塩卓哉
枝の弾力/小橋芙沙世
予 祝/森本 平
ことしの桜/藤元靖子
系/嵯峨直樹
残響音/川本千栄
泡/鷲尾三枝子
黄昏に/吉田淳美
予 感/小林信也
偏西風/川田 茂
雪手水/三澤吏佐子
その左手と/藤森あゆ美
■連載ー浪々残夢録 万葉の中の出雲と大和/持田鋼一郎
■連載ー時言・茫漠山日誌より 危 篤/福島泰樹
■連載ー編集者の短歌史 エピソード二つ三つ/及川隆彦
■連載 歌誌漂流/鈴木竹志
■連載ー結社の顔 徳島歌人/佐藤恵子
■新連載ー〈歌・小説・日本語〉 母音文化ということ/勝又浩 
■連載 メロディアの笛Ⅱ/渡英子
■連載ー若い短歌作者へ 茂吉からの手紙 青年哀草果への直言/秋葉四郎
■新刊歌集歌書評
清田由井子著『歌は志の之くところ』/篠 弘
島田修三著『古歌そぞろ歩き』/日高堯子
石田比呂志歌集『冬湖』/佐々木六戈
柿本希久歌集『ケモノ道』/栗木京子
竹内彩子歌集『左右の手』/小林敦子
堀井美鶴歌集『仏桑華』/西勝洋一
梅地和子歌集『小窓を見つめる』/爲永憲司
◉今月の新人ー作品5首 メーコックファーム/林 理紗
■今月の視点 価値から意味へ/彦坂美喜子
■作品月評ー四月号より/一ノ関忠人
■評論月評/高木佳子
■全国〝往来〟情報
■編集後記
表紙画/高橋千尋
本文カット/浅川 洋

青き実のピラカンサ

小鳥屋のことりの声が聞きたくてプラットフォームの端つこに立つ
半桶(はんぎり)の飯に合はせ酢かけゆけば待ちゐし団扇三つがあふぐ
「高砂」の掛け軸が好きなをさなごは先づ指さしぬ翁の方を
スポイトに与ふるは水、やはらかき水、犬は五滴のみづを飲みたり
どうしてもザリガニ釣れぬ子がひとり煮干しの下に重りを結はふ
裂き織りに義母のもんぺを織り込みぬ朱色の布もときには入れて

日常のささやかな情景のなかに、過ぎ去った記憶のなかに掬いだす、あたたかな詩情ー。

人びとや自然と交感するやわらかな心が紡いだ歌は、誰もが抱えているかなしみをゆっくりと癒し、やがて未来への架橋となるだろう。
四六版上製カバー装 2500円・税別

田村広志著『岩田正の歌』

「文学は手作り」という岩田正の一貫した思想と生き方、そして歌ー。

あまたのカロンと歌集をひもとき、ともに歩んで来た長い道のりを顧みながら、その味わい深い歌の世界に分け入ってゆく。

 

 

私にとってこの本は立ち直るための大切な一冊である。

歌に関わり始めたときから先生と呼んできた。その岩田正のことをボチボチと書き継いだのがこの一冊である。

これは私自身のために私に書いた本なのである。書き継ぐことによって、私自身が療養の鬱陶しさから幾分立ち直れたのだった。   あとがきより

 

 

四六版並製カバー装 2500円・税別


加藤和子歌集『朝のメール』

黄に圧され黄に放たれて歩みたりひと日曇れる黄葉渓谷

石の家に降りゆく雪の淋しさを思えり朝のメールを閉ざす

イギリスの老女のようにカーテンの間からまた庭を見ている

昔むかし蝉の鳴かない年があり並木は暗渠に変わっていった

怒ったり淋しがったり日常の続きの中に人は亡きかも

 

先師・高安国世の歌ごころを受け止め、身めぐりの風物や人物をつつましく歌い継ぐ。平明なしらべにたしかな言葉の年輪を重ね、いよいよ作歌世界は地味と深まりを見せ始める。

 

四六版上製カバー装 2400円・税別


南輝子歌集『War is over 百首』

悲しみをかなしみつづける父がゐる南十字星の心臓のあたり

「もしやもしや」

 

夜ひらくササン朝ペルシアの古星図は露にしめりて吸ひついてくる

「南十字星」

 

青空をめまひするまで仰ぎゐてこころ躓く青あをすぎる

「青空」

二黒土星(きのえ)(さる)歳昭和十九年われ月下に生れき月びかりさせて

「塚本邦雄の青春」

 

ムルソーの太陽はとつくにない 闇は濾過しても闇ゆすつても闇

PUNK ROCKER

 

私も、両親が戦争体験を抱えた世代である。おりにつけ聞かされた逸話から、著者や私自身がこの世に生まれた事の希有さを思い知る。平和を相続していくことも、幾多の困難を克服せねばならないのか?そのことに対する感慨を、南輝子は100の歌にして問いかけている。 塚本靑史・帯文より

 

 四六版上製カバー装 2500円・税別


大谷ゆかり歌集『ホライズン』

夜なべする君へうどんの満月が傾かぬようゆっくり運ぶ

鉛筆と定規の似合う雨の朝ななめななめに線生まれくる

目の奥にムラサキウニの鳴くような偏頭痛せり今日は満月

父母の言葉もこもこ着せられて蓑虫となる実家の茶の間

つるつるとしたもの多き世の中に桃は貴重な手ざわりをもつ

百を越すCAD起ち上がり自販機の開発室が息づきはじむ

 

ことさらドラマチックに作られているわけではないのだが、それぞれの歌の中にドラマがある。心安らぐ温かなドラマだ。登場人物が歌の中でイキイキと動いている点も、いい。

(藤島秀憲 帯より)

 

四六版上製カバー装 2500円・税別


第十五回前川佐美雄賞・第二十五回ながらみ書房出版賞 決定のお知らせ

第十五回前川佐美雄賞・第二十五回ながらみ書房出版賞 決定のお知らせ

陽春の候、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。

「前川佐美雄賞」および「ながらみ書房出版賞」が次の通り決定いたしましたので、ご報告させていただきます

 

https://www.nagarami.org/前川佐美雄賞/

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鈴木直子歌集『流れる雲』

どっこいしょと立ち上がる私よいしょと腰かける夫老いづく二人

 

晴れの日も雨の日も風の日も、いつも傍にいて共に歌を作り、病む日はその全てを支え合う。安らかならざる老いを肯い、〈どっこいしょ〉〈よいしょ〉と声を揃える、この究極の愛の姿は、『流れる雲』に溢れる愛と祈りそのものである。

佐藤孝子・序より

 

 

かなしきほどに小さき衣の干されけり一つの命()れしこの家

姑のしがらみより抜けねばと紅うすく引きて(あした)の庭を清むる

古稀過ぎて着けたる義肢は重くして幼のごとき歩みになりぬ

桃の花ふくらみくれば恋しさのつのる故郷はここよりも北

風花とうやさしき名を持つ老人の憩えるそのにわれも安らう

 

A5版上製カバー装 2600円・税別


鈴木和雄歌集『婆娑羅一代』

京の雅でも陸奥(みちのく)の素朴でも無い坂東の鄙びた歌を詠む心定まる

グループホームの往診で義歯を預かり直してまた届ける朝と昼の間に

生老病死の四文字に振り回される人生もとどのつまりは骨壺ひとつ

送り盆を済ませてホッとする夕べ 八月十五日は人生の原点

一番幸せだったのは戦争のなかった幼年時代と老々介護の今

何よりもこの一巻には作者の雄々しい人生哲学という心棒が貫かれています。どの一首にもユーモアと俳諧味に支えられた未来志向の生活術とクールな自己批判のまなざしがいきいきと光り輝いています。

黒田杏子・序より

A5版上製カバー装 2700円・税別


糸川雅子著『詩歌の淵源 「明星」の時代』

近代短歌の淵源としての「明星」は、その創刊が明治三十三年と聞くと、確かに遥かに遠い過去のことに感じられてしまうかもしれないが、振り返ってみると、それは、思いのほか近くに、地続きに広がっている世界なのである。

そして、その豊穣さから、現代の詩歌が多くの恵みを受け、多くの果実を実らせてきたことを思わせるのである。

 

「はじめに」より

四六版並製カバー装 2500円・税別


短歌往来2017年4月号

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梅地和子歌集『小窓を見つめる』

孤独感をはるかに超える冷酷な宇宙に生きる動悸苦しも

身体が冷えてふるえる夜におもう春の彼岸にたたずむ一人

微光さえ雲ににじみて消えてゆく鴉一羽の横切る時間

死がそこに扉をあけて待つを見ん真夏の夕べ心臓()れる

よき歌を生みたきこころ湧ききたりすべて金色の五月の夕べ

 

人は誰でも、たとえ玄冬の時節にある人でも、心はときめく。何故か。「歌」は、遊びは、宇宙の息吹、宇宙のリズム、生と死との溶け合いのなかで息づくものであるからだ。「文台」を大切にして、さらに