岩井幸代歌集『アダムとイヴの手』

 

夫逝きて家は四角のただの箱薄羽蜉蝣の持ち去る家庭

絡み合う君と我が四肢白亜紀の海に漂うひとすじの藻

教会の塔の先より明け始むドナウは黒き眠りのなかに

冬の夜のラフマニノフの「ヴォカリーズ」心に積もる雪の眩しさ

アルゼンチンタンゴ流れる古きカフェ仄暗き灯に沈むひととき

どうしようもなく悲しくて、悲しい思いを書いているうち短歌になったので、短歌を真剣に勉強しようと決めたのだそうです。まっすぐな人だと私は思いました。切ない感動を与える歌集です。

 

角宮悦子

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

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コメント: 1
  • #1

    遠藤 伊津子 (水曜日, 18 5月 2016 01:57)

    岩井様
     先日、残花を求めて歩いていたら、岩井様の歌集が目に止まりました。題名にひかれ購入し、一気に
    読ませていただきました。音楽、絵画、お茶等色々な分野に造形が深く、素晴らしいお義父様を持つご主人、また息子さん、お嫁さん、お孫さん、ブランドに囲まれた幸せな日々をお過ごしのご様子が伺えました。
     とても愛してらしたご主人を亡くされ、お心落としのことと思います。そんな中、あんなに素晴らしい句がおできになったのですね。
     題にもなっている「手」に並々ならぬこだわりを持たれていらっしゃることも伝わって参りました。
    普通は「お点前」としてしまうところを「お手前」としたところに岩井様のこだわりと素晴らしい感性が伺われました。中でも「一年後の再会約して別れたる三年通いし駅の改札」が心に残りました。私も夫を亡くし、そんな心境が来ることを願っております。これからも素晴らしい句を期待しております。