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日高堯子歌集『空目の秋』

第9歌集!

 

生命のよどみなく流れゆく

川の岸辺に、もう幾百年

佇んでいたことだろう。

本当は川は在ったか。

詩的幻想界を彷徨いつつ、

少しずつ生死の重荷を

解きほぐしていく。

削落としてやまない

日常と非日常とのはざまに、

母なる歌の沃野を見た。

 

『空目の秋』より5首

 

日だまりはしろい座布団ねむりつつ母とながされゆく春の川

 

絹ごしか木綿豆腐か しらはだのなぜかはかなしガーゼの布目

 

「わたしはいつ死ぬのかしら」ときく母に「あしたよ」といふ あしたは光

 

羽虫入る感触ありて胸もとをのぞけば夏のしづかな乳房

 

しろじろと歳月を空にひろげつつ大伯母のやうな雪ふりきたり

 

 

判型:四六判上製カバー装

定価:2500円(税別)

頁数:208頁

ISBN 978-4-86629-127-7

 

 

 


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安藤美保歌集『水の粒子』(文庫版)

夭折の歌人、胎動の歌集!

 

長い間、多くの人々に愛され読まれ続けてきた『水の粒子』をこの度、文庫化いたしました。

 

            ドア      ドア

フレンチスリーブの肩見ゆ扉という扉にきびきびと鍵をかけて出る母

 

 

ふいに来た彫像のように妹のからだの線は強くととのう

  

           

寒天質に閉じこめられた吾を包み駅ビル四階喫茶室光る

 

 

風車からから回れ父親が我にはぐれし五月の砂場

 

 

ずいずいと悲しみ来れば一匹のとんぼのように本屋に入る

 

 

緻密に緻密かさねて論はつくられぬ崩されたくなく眼をつむりおり

 

判型:文庫

頁数:150頁

定価:1200円(税別)

ISBN 978-4-86629-125-3

 

 

 

 


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塚田キヌエ歌集『西行つれて』

渾身の第二歌集!

 

日常におけるさまざまな哀歓を、ひたむきに著者は詠い続けて来た。美しい四季の花々・そして心優しき人々に囲まれて苦渋の日々を乗り越えた著者は、いまふたたび新しい世界をめざして出発を遂げようとしている。

―――――――――――――――――林田恒浩

 

 

 

『西行つれて』より5首

 

夫逝きし九月の空もいくたびか独り居なれど孤独にあらず

 

紅白のさるすべり燃ゆこの道に吹きているらんふた色の風

         

夫の魂もどり来しか娘の肩に杏子ひとひら光りつつ散る

 

花吹雪くゆうべをひとり町空の望の月仰ぐ 西行つれて

 

冬凪の三浦の海のひろびろと潮目くずさぬ紺の濃淡

 

 

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:208頁

定価:2500円(税別)

ISBN978-4-86629-124-6

 


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小林幸子歌集『六本辻』

歌を旅する、歌を探し求める旅人よ!

 

「辻」という場所にはこころひかれる。「四辻」は、ほの暗い印象があるが、六本の道が放射状に伸びている「六本辻」はまぶしい青空のしたにあるようだ。

「六本辻」という抽象の辻を出で入りしながら、もうしばらくうたいつづけてゆきたい。

「あとがき」より

 

『六本辻』より5首

 

あやとりはたのしきものか群青の川を取りあふ姉とおとうと

 

ひたぶるにひとを思へばゆびさきに吸いつくやうな青空の月

 

思ひ直し思ひ直して死にゐるひともあるらむ白さるすべり

 

一杯だけビールを飲まうおとうとよ だれも死者とは知らない町で

 

六本辻のラウンドアバウト幾回りしてゐるうちに人は消ゆるも

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:222頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-126-0

 


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安藤菫歌集『はるかなる虹』

安藤菫歌集『はるかなる虹』

 

脳病む娘へ。

歌を詠んではあなたのことしか出てこないのです。

統合失調症などとは一口で片付けられない、

こころ病む人間の真実。

そういう人たちに現代社会が寄り添おうとしない矛盾。

母はこれまで秘匿してきたあなたの本当の姿を

ここに明らかにします。

 

『はるかなる虹』より5首

                           あこ

バージンロード歩める如く医師の手を預けて吾娘は病棟に消えぬ

 

もぎたての桃のごとくに水弾く素肌よ若きこころは病みて

 

罪なくて脳病みし娘を迎ふるに口惜しや俯く人目気にして

 

悪人正機こころにもてば夕焼に赤唐辛子燦と華やぐ

 かげ

朝光は産湯のごとく咲き初めし薔薇洗ふべし吾わが葬りの日

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:226頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-123-9

 

 


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小林優子歌集『二月の桜』

小林優子第二歌集『二月の桜』

 

北の大地に棲む。

ここが故郷だ。

寒々とした夕陽に向かって、

あるいは降り積もる雪を踏みしめながら、

こころに温めてきた思いを

そっと定型の器に載せる。

 

 

『二月の桜』より5首

 

樹々に積む雪に夕陽の沁み入れば北のふるさと離れがたかり

 

枝々にひよどりあつめあかるめる ああ、あれはそう二月の桜

 

海見えぬ町に生まれて海のある町に生まれし男と逢いき

 

だんまりの石を濡らして夏の雨とおり過ぎたち夕かたむけて

 

わが刃にするどく傷を入れられて風の中なる一枚の魚

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:172頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-121-5

 

 

 


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大朝暁子歌集『辰砂の月』

 

円熟の第三歌集!

 

欠けゆきて極まる月の辰砂いろ冬天点す熾火のごとし

 

 

きびしい北の風土。

人間とけだものとの共棲する場所。

歌を詠みきって去る。

命を生ききって去る。

老いともにすべての生と死の意味を

思念しながら、ひそかに。

 

『辰砂の月』より5首

からふと   しすか

樺太の敷香のまちの「専賣局」地図に見つわが生れし所

 

三角の頭を持つ山があらはるる木々枯れ初むる街空のはて

 

狐でも出よと曲がれば狐をりいたく痩せをり尾を垂らしをり

 

母亡くて聞けばしみじみ意味深し「母なる大地」「母なる大河」

 

零下二十度寒さの底とふ日にあふぐ橙ぬくき十六夜の月

 

 

判型:46判上製カバー装

頁数:152頁

定価:2400円(税別)

ISBN 978-4-86629-116-1

 

 

 


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塚本敞歌集『頭上の剣』

 

頭上の剣現実となり原発の事故に国中震撼する日々

 

 

先師・宮地伸一のこころざしをもって、

 

荒ぶる老いの剣を振るうように歌う。

 

日常雑事も、作者にとっては作歌の源泉。

 

みちのくの風土をふかく内包しながら。

 

 

 

 

『頭上の剣』より5首

 

子と孫がキャッチボールをしてをりぬ吾も子とかく楽しき日ありき

 

主夫もまた楽しと思ふ時もあり妻の喜ぶ顔見たるとき

 

学友のまた一人逝く知らせあり学徒動員の日々思ひをり

 

今日一日歩きし歩数をケイタイが知らせくれたり寂しき命

 

羊の字未と書きつつまだ為さぬ思ひの一つにこたはりてゐる

 

判型:46判上製カバー装

頁数:194頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-105-5

 

 


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川野知美歌集『ムーンロード』

    ひとけ         ほっかわ

人気なき伊豆北川の海原に浮かびあがりたりザ・ムーンロード

 

 

川野さんの若さとエネルギーは、率直で、強い。

何を見ているかに注目し、

それから、じいっと絞り込んでいく目の働き。

この執拗とも思える凝視のちからは、

そこから目をそらせずにいる作者の内面をも想像したくなる。

久我田鶴子「跋」より

 

 

 

『ムーンロード』より5首

 

小さい歯ささやくように生えている笑うと見えるもっと笑って

 

参観日に茹だったような顔をして聞いているのか先生の声

 

学校より無事に帰れと祈っている戦争をしないこの国にいて

 

選手らの日に焼けた顔黒く光り球場に立つ砂鉄のようだ

 

新しき時代は来るのではなくて創るものよとわが子に叫ぶ

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:188頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-119-2

 

 

 


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井上さな江 遺歌集『風なきに』

爛漫の今年桜に会ひたりし我には我のさくら咲かさう

 

井上さんは、「短歌は態度の文学である」という「国民文学」の信念と、短歌は自分史であるという信条のもと、物象を真っ直ぐに見詰め、ありのままを飾らず詠い続けてこられた。

青木陽子「『風なきに』に寄せて」より

 

 

『風なきに』より5首

 

暁をいづくゆ湧ける黒き鳥空を覆ひて北に渡れり

 

ばうばうとわが耳底に風の鳴り転生なども信じてゐたき

 

風なきにはららきやまぬ花桃の花の絨毯やはく踏みゆく

 

降ろされて畳まるる曾孫の鯉のぼり腹いつぱいの陽の匂ひ吐く

 

補聴器を外せばしんと音の無き闇に幽く百合の匂へり

 

 

判型:A5判上製カバー装

頁数:196頁

定価:2600円(税別)

ISBN 978-4-86629-120-8

 

 

 

 


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高島静子歌集『薔薇は静かに』

本書は、四十余年の間、倦まず弛まず努力し続けた作者の第一歌集でさる。写実を基本に据えた衒いのない表現によって、日々の歓びや哀しみ、周囲の自然の姿への感動が素直に歌われている。対象に向ける善意の眼差しが、読者の心にすんなり伝わってくるであろう。

―帯文 野地安伯 

 

 

『薔薇は静かに』より5首

 

淡淡しき冬の光に包まれて薔薇は静かに命閉ぢゆく

 

娘の名書ける歯ブラシそのままに洗面所にあり新盆近し

 

直線は曲がれぬものか時時は曲がりたくなる高速道路

 

方哉さんあなただけではありません大根煮ても私も一人

 

ここがまあ市街地なるや夏草の繁れるままにあまたの空き地

 

 

 

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:204頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-115-4

 

 

 

 

 


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清水春美歌集『あした咲く花』

     判型:四六判上製カバー装 

     頁数:186頁

     定価:2500円(税別)

     ISBN978-4-86629-117-8

あした咲く花に哀しみあるようで

そっと撫でやる山茶花のつぼみ

 

山茶花は春咲くいろいろな花たちのような華やかな賑わいはなく何となくひっそりと咲く。郡上は北辺で山茶花は霜で早く汚れて完全に初めから終わりまできれいでいることはあまりないが、そんな花でも明日は咲こうと蕾をつける。

 

               木島 泉 帯文より

 

 

『あした咲く花』より5首

 

鍬置きて母と作りし笹舟は港なき川流れてゆけり

                  

畦道にひときわ高く咲く薊ときに孤独は美しき棘もつ

 

押し黙る井戸を覗けばこの世でもあの世でもなき風の囁き

 

ノートからはみ出しそうな花マルを描くときクククと赤ペン笑う

 

ゆわゆわとゆめに遊ぶかねんねこにみどりご眠る初雪の夜


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内藤タ津子歌集『甲斐が嶺の空』

家族と甲斐の山をやさしく見守る著者の渾身の第三歌集。

 

『甲斐が嶺の空』より6首

 

幼き日の母の言の葉「神様が見ていらつしやる」を今も心に

 

「母さんのババロア旨かつたな」正月を炬燵に子らは幼き日言ふ

 

コアラ抱く夫の笑顔よこの後もこの平穏の日々続けかし

 

空襲の解除に仰ぐ東の空真赤に染めて甲府炎上

                  お や ま

台風がことなく過ぎし朝々に交す挨拶「富士山のお陰」と

 

間の岳、駒、八ヶ岳、富士の峰我ら守らるこの山々に

 

 

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:196頁

定価:2500円(税別)

ISBN978-4-86629-099-7

 

 

 


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反田たか子歌集『子規の地球儀』

      判型:四六判上製カバー装

      頁数:146頁

      定価:2400円(税別)

      ISBN978-4-86629-112-3

 

 

本集で最も多く詠われているのは、戦争をテーマにした作品である。作者は戦後生まれだが、戦中のことを何も話さなかった父や、軍服店を営んでいただ祖父母、戦死した叔父などを通して、あの時代を照らしだしている。

 

               河野小百合「跋」より

 

『子規の地球儀』より5首

 

あかときの演習林を駆け巡り絵馬に戻れり野生の馬は

 

迎え酒みたいな語感ストロンチウム90という黙読すれば

 

なめらかとはいえないのだが手ずからの塑像のまなこは青年のもの

 

軍服を試着せし人あまた知る等身大の鏡一台

 

彫りふかき歩兵の文字をさらさらとすべりゆくなり葉桜の影

 


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田中教子著『覚醒の暗指』

歌の始原から現代を問う!

 

「・・・春の目ざめと同様な、一つの覚醒を暗指してゐる。」(茂吉)

今日、我々が目指すべき新しい芸術としての短歌は、茂吉の改革と斬新、またその他の先人の意識を振りかえることが、一つの鍵であるように思う。

                                                                            ー「はじめに」より

 

◆目次◆

 

はじめに

第Ⅰ章 現代短歌の混沌

第Ⅱ章 先人の創造

    第Ⅰ節 斎藤茂吉 伝統とおモダニズムからの創造

    第Ⅱ説 若山牧水『万葉集』の「死」からのひらめき

    第Ⅲ説 折口信夫と前登志夫

        第Ⅰ項 折口信夫(釈迢空)の秀歌観

        第Ⅱ項 前登志夫の古語使用

            Ⅰ「われはなりてん」考

            Ⅱ「忘れぜらめや」考

第Ⅲ章 現代短歌語抄

    第Ⅰ節「行けり」考

    第Ⅱ節「あぎとふ・あぎと」考

    第Ⅲ節 短歌の旧仮名表記考

あとがき

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:188頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-108-6

 

 

 

 

 

 


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江田浩司歌集『孤影』

湿り気をおびた曇り空の下、

憂愁の影を曳きながら歩む一人の旅人。

もう十分に言葉の豊穣な果実を捥ぎ取ったか。

果汁の滴り。

両掌に受けるのはさびしい定型の水音だ。

 

 

『孤影』より5首

傘の流れにひかり運ばれ消えゆけり時は未生の尾を曳いゐる

                       あした

いづこにも底なき銀河あらはれて詩歌かがよへ霜の朝は

 

火の中にむち打つ音を聞きながらあゆみゆける孤影なりけり

 

指さきにかをりひろがる昼さがりひかりの谷に蜜柑をもぎぬ

 

人間の命をかたるやさしさが星の明かりのかたはらにあり

 

 

判型:四六判上製カバー装 

頁数:162頁

定価:2,400円(税別)

ISBN 978-4-86629-109-3

 

 

 

 

 

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鈴木陽美歌集『スピーチ・バルーン』

故郷の風土や家族、親族をテーマとした歌が、作品世界に厚みをもたらしている。ユーモアの背後にある、人生の手触りと生きてゆくことへの思いを読み取るべきだろう。

 

               ―――――――谷岡亜紀「解説」より

 

 

『スピーチ・バルーン』より5首

 

鳥の切手花の切手を組み合わせ小さな個展の案内がくる

 

たんぽぽの綿毛残らず風に飛び<負ける勇気>をおもう日曜

 

くさまくら旅の鞄は重すぎるいつか手ぶらで死にゆくものを

                    ベル

がろんがろん腰に鳴る鐘はずすとき父から山の匂い立ちたり

 

明け方の夢のおわりはあるようなないような虹の脚に似ていて

 

 

判型:四六判上製カバー装 

頁数:186頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-111-6

 

 

 

 

 

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押山千恵子歌集『シタール、響る』

                             

シタールを聴きしはいつか藍深き空のいずこか響る

ると思いつ

 

どこからか、たしかに聴こえる、その音色。

はるか北インドの撥弦楽器の、胸に沁み入る澄んだ調べ。

その調べのように、白い記憶のように、やわらかく。

北海道の大地に暮らしが根づき、歌が根つくまでの歳月。

 

 

 

 

 

『シタール、響る』より5首

 

ぼろぼろになりしと現し身を嘆きたる父のことばが淡雪となる

 

窓を打つ雷雨にめざめ読みつげる韻律論は雫して来ぬ

 

永久凍土に眠りいし幼きマンモスのCT画像の四肢小さきこと

 

列島はさびしき弧にて寒気団せせまればいよよ夢に屈まる

 

蝦夷梟くるりと首を旋らせて春の隠れ処探さんとする

 

判型:四六判上製カバー装 

頁数:174頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-110-9

 

 

 

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古川典子歌集『鳥の時間』

 

この坂はきつと最後にのぼる坂けふホスピスの予約にのぼる

 

突然、予告された近い未来の死。

そこから振り返るときの来し方の日日のやさしさ、いとおしさ。

さりげない時間の積み重ねのかけがえのなさを

この歌集は私たちに教えてくれるであろう。

馬場明徳 帯文より

 

『鳥の時間』より5首

                        と を

「たつた一人救援列車に乗つたげなあん子はまあだ十歳やつたとよ」

 

金毘羅山が大綱まはしゐるやうな虹がかかれりさあさあ跳ばな

 

 「ハイどうぞ」見えないケーキ渡されぬ「イチゴがのつてゐます」と言はれ

                                      ろくじふはち      

                  おとうとのほほを撫でやる「元気でね」六十八歳の弟の頬

 

                  病室の窓に山裾ひろげゐる金毘羅山の夕輝きよ

 

 

 判型:四六判上製カバー装 

 頁数:192頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-113-0

 

 

 

 

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本田一弘歌集『あらがね』

『あらがね』より5首

          これのよ

山鳩はかなしみを啼く此世に生まれ出でたるたれのかなしみ

 

 

福島の土うたふべし生きてわれは死んでもわれは土をとぶらふ

 

   む                                         うな

福島に生まれしわれはあらがねの土の産んだる言葉を耡ふ

 

                       ひと

ほうたると呼べばやさしく亡き人のこゑあらはれて一つが光る

 

                     すぐ

白きものは畑をおほひ葱の葉の身のあをあをと直立つひかり

 

 

 

 

 

判型:A5判変型上製カバー装

頁数:256頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-860029-107-9

 

 

 

 

 

 

 

 

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小鳥沢雪江歌集『雨水は過ぎた』

 

転勤ぐらしの途上で出逢った地、盛岡を、生きる場として積極的に選んだのだ。

人を愛するように土地を愛する。

深く継続する愛は感情の醍醐味と言えるだろう。

そして、詠まれる盛岡は、喜びの呼吸のように眩しい。

 

                     鈴木英子 帯文より

 

 

『雨水は過ぎた』より5首

  あのひと

「啄木は多情家なれば」と渋民の男は語る旧知の如く

 

詠えども何も解決せぬ日々のうたは悲しくうたは重たい

 

春立てば天も大地もゆるみゆきわたしもほのかにゆるみゆくかな

                        ひとよ

                   ひぐらしはかなかなかなと疑いてそその日暮らしの一生を送る

 

                   こもかぶり雪の庭先春を待つ梅よ牡丹よ雨水は過ぎた

 

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:176頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-114-7

 

 

 

                   

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渡辺泰徳歌集『底生生物』

ものを観察するー真摯でやさしい眼差し。

こころの底に堆積する泥のようなものが、

時として勘定をもち、美しく輝き始める。

歌はそれをそっと掬い取る不可解な器だ。

 

ベ ン ト ス

底生生物は哀しきものよこの世より積み来るものを黙し食いおる

 

 

 

『底生生物』より 5首

 

薔薇の字をそうびと読むと知りたりし憂い少なき少年の日に

専門語封印しつつ語らえばわが過去なべて扁平となる

うつくしき周期律には逆らえぬ 核分裂は手なづけられぬ

みずうみの岸に白馬は似合いたり北バイカルに洗われていし

春まだき人間の土地に来たるもの見おろし岬に尾白鷲とぶ

 

 

 

判型:A5判上製カバー装 

頁数:190頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-101-7

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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多田政江歌集『風の呼吸』

 

 

第一歌集に相応しい瑞々しい相聞歌に本集は拓かれてゆく。

誰しもの胸の奥に仕舞われている青春の日々の思い出を

そっと呼び起こすような歌たちであり、

純粋さ、直向きさがどの作品からも伝わってくる。 

 

                ―平林静代 帯よりー

 

 『風の呼吸』より5首

 

まっ青なこの空きみに届けんと山のポストに絵はがき落とす

 

照明の消えたる靴屋のショーウインドーピンクの長靴歩き出さぬか

 

車内灯消して行き先<回送>に終バス今日はすでに過去形

 

さわさわと風の呼吸が変わるころ梨より林檎が美味しくなりて

 

                   イスラムのチャドルの女吐く息も声も殺して黒衣の中に

 

 

判型:四六判上製カバー装 

頁数:266頁

定価:2600円(税別)

ISBN 978-4-86629-104-8

 

 

 

 

 

 

 

 

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丹波真人歌集『朝涼』

『朝涼』より5首

 

すいめんに真鯉の背びれ触るるたび生れてしづかにひらく水の輪

 

へちま棚しげりて文机おく部屋をくらめるまでにへちま下がれり

 

恋人にあらねど月々会ひをれば君はわれには特別なひと

 

外見はダイナマイトに似る西瓜爆ぜることなく弾ける甘さ

 

七十をこえたるわれの夢のなか洗づるをみなは裸身にあらず

 

 

判型:A5判上製カバー装 

頁数:322頁

定価:3000円(税別)

ISBN 978-4-86629-103-1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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田川喜美子歌集『何処へ』

田川喜美子第二歌集!

 

的確な描写、強い定型意識、批判精神、ユーモアなど、竹山広から学んだものは数知れないと思うが、すべての基本は見ることにあるのではないだろうか。

ー藤島秀憲・解説よりー

 

『何処へ』より5首

 

田川さんのさんの発声低くして竹山広の声はこだます

 

七十五歳の相聞歌よししんしんとお息吸ふて読む『千日千夜』

 

ぼんやりと煙草をふかしゐる夫が知らない人に見える夕くれ

 

晩年の私をさがすやうにして日くれて窓の硝子を磨く

 

目が合つて待つてくれるは長崎の百円電車よ春の町ゆく

 

判型:四六判上製カバー装 

頁数:204頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-096-6

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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米山和江歌集『徳島堰のさくら』

 

『徳島堰のさくら』より5首

 

            とくじま

世の移り寡黙にとどめし徳島の水のめぐみに田植はじまる

 

しず

寂かなる墓処にわれは妻となり背をながすごと石碑をあらう

 

 

湯上りにタオルをまとう三歳に男が見えてかなしかりけり

 

 

日に日にちからの見えて茄子苗はわれの畑の顔となりたり

    

        ひと

会果てていずれは孤りその夜を幼のように師は眠らんか

 

 

判型:四六判上カバー装 

頁数:206頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-100-0

 

 

 

 

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橋本千惠子歌集『未完からの出発』

 

 

歌とは永遠に未完の作品である。

未完であるがゆえに言葉としらべのせめぎ合いが続く。

先師千代國一からの厳しいメッセージを反芻しながら、

多くの死と多くの生と向き合ってきた虚心な歌びとの影が揺れる。

 

 

橋本千惠子第二歌集『未完からの出発』より五首

 

芽吹き来し青耀へる生を見すわが身のめぐり黙なすもの等

 

英一を追慕の声のつづく中雪の降りきて心にこもる

 

怒られし記憶なきままもの言ひの静かなりしと父を思へり

 

十二万体刻む希ひに荒彫りのひとつ笑ひの仏をのこす

 

                   身のめぐり幾人逝きぬ白萩のゆれのかそかに風の吹き過ぐ

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:222頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-102-4

 

 

 

 

 

 

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:定価2500円(税別)

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河村郁子歌集『彩雲』(昭和9年生れ歌人叢書8)

 

 

この歌集は作者の飽くことのない好奇心が作らせた一冊と言えるかもしれない。子供の時に昭和の戦争を体験し、少女がから娘になって行くころに戦後の学ぶ自由を身につけ、高度成長期に経営者となり成功を収め、平成の世の平和を楽しまれたひとりの女性の人生が分かる。新しい年後を迎える準備に入った現在から思えば長い年月のようではあるが、一瞬だったとも思える時間がたくさん詰まっている。大らかな歌に深い味わいがある。

 

ー解説・池田はるみーより

 

 

判型:四六判変型並製ビニールカバー装

頁数:140頁

定価:1800円(税別)

ISBN 978-4-86629-093-5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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玉城寛子歌集『島からの祈り』

 

 

『島からの祈り』より5首

 

洞深く埋もれし息の切れ切れに私はこ・こ・よ南風も眇眇

 

芙蓉咲くに「土人」の声に散らされて滾つ怒りも泥にまみれる

 

墜落のニュースを聞きて今日もまた狂わんほどに空ばかり見る

 

六月の摩文仁の崖を這いのぼる波涛は二十四万の非戦の叫び

 

九条を抜け殻にして笛を吹く宰相の行く手にハーメルンの道

 

 

 

 

 

ここには多くの社会的事象が詠われています。

とりわけ沖縄に関する作品が多く詠まれています。

かえり見れば、私たちの追い求める姿とはあまりにかけ離れた沖縄の現実が、

私の心を揺さ振り衝き動かしたのだと思います。

多くの島人の心が安らぐ日まで、また私の生が続く限り、

このことは詠い続けていかなければならないと今日も空を見上げています。

                                -あとがき よりー

 

 

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:196頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-095-9

 

 

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曽我亮子歌集『夕陽のまつり』

 

杳き日に父くちずさみゐし「イッツァ・ロングウェイ」あなたの正義胸に緩む

 

幼らを招きて小さき雛の膳ならべて笑ましし母恋ひ止まず

 

父の忌も過ぎて流離の思ひあり寂しき吾等の初夏ならむ

 

寸松庵色紙臨書しをれば春の鳥鳴き過ぎてゆく寂しき曙

 

夏の夜の夢かとぞ見るハッブルの捉へて送る銀河の葬送

 

 

曽我さんは若き時からこつこつと一人で歌を作っていらしたようだが、私の知っている曽我さんの歌はここ十年ほどのものである。

しかも曽我さんは私事を話されないので恋愛時代や結婚生活について私は何も知らないのだが、大恋愛の末に結ばれたらしい夫とも当然ながらさまざまな葛藤があったのだろう。

の影の部分を臆さずうたっているところに、私は歌人としての曽我さんの心意気を見るの                             

                    である。

                                           鹿取未放・「跋」より

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:166頁

定価:2300円(税別)

ISBN:978-4-86629-091-1

 

 

 

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鈴木通子歌集『モノクローム』

 

 『モノクローム』より5首

 

障害ある児は別れし父親を出張中といまだに言うも

 

障害ある二児持ちたりと語るとき人おどろきて我を見給う

 

子を残し去りし夫よなれもまた母と別れし少年時代

 

語らいはつきることなし障害者の友と障害者の母なる我と

 

夕映えの華やぎもちて急ぎゆくかけがえのなきひとときのため

 

家族を置いて去って行った父親を、出張中と告げる児を視つめている母親の心情は察して余りあろう。

その優しさが、作者をして鬱の病を持たせてしまった一因であることを思うと、誠にせつない。

 

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:188頁数

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-094-2

 

 

 

 

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井上美知子歌集『甘樫丘より』

亡母の家も見ばやと登る甘樫丘に踏む土匂はむばかり

 

生駒市に住む作者の産土は明日香である。その産土の臍のような甘樫丘より、作者は世界を眺め、その眺めの奥に匂いたつ亡き父母や妹がいた風景を遠望する。達観した境地から、自らの老いを、そして生々流転する世を、ときにユーモアをまじえつつ詠む。

帯文・萩岡 良博

 

『甘樫丘より』より6首

 

水たまりの雲を呑みほしひとまはり大きく見えて鹿の寄りくる

 

両の手の杖ゆるゆるとわたりくる老い待つ車の列の静かさ

 

くさめしてわが耳出でし花びらの幻を聴き耳を病み初む

 

金庫ふかく仕舞はれてありし詠草も盗みて読めよわれの偸盗

                                                                                                                                                   くち

                                                                   この唇のかたちなら「ぞうさん」が出かかつてゐるよ葉月のみどり児

                                                                           

                                                                   父母は木霊となりて吾を待つと思ふばかりにたどる飛鳥路

 

 

判型:四六判上製カバー装 

頁数:214頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-097-3

 

 

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蓮見安希歌集『青にとけゆく』

寡黙にいのちと触れ合いながら、

草木も人間も、私すらも透けて見える日。

 かぎりなく深みを増す青の世界へ

自在に、そして、かすかに紛れてゆくのみ。

 

『青にとけゆく』より5首

                    かな

青銀の波がしづかによせてくる遥かなる日の愛しみつれて

   を                                                                                                                                 ふ

わが男の子と白猫ベッドに眠りゐる天よりふいに降りし如くに

           はな

瀧のごと散る桜を見き下影に立ちて泣きたる日もありしかな

 

かぎりなく軽くなりゆくいのちかと瓔珞のごとスカーフまとふ

 

味爽の空にのこりし二日月はかなきものは青にとけゆく

 

 

判型:四六判上製カバー装 

頁数:158頁

定価:2400円(税別)

ISBN 978-4-86629-090-4

 


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山田震太郎歌集『ゆめのなかほど』

ぎらぎらとした本格的な夏がやってくる。私の好きな夏である。少年の時から、この季節は気に入っている。怠けていても、あまり目立たないし、時間がたっぷりと流れている感じで、生きているという実感があるからである。山田震太郎『夏をつかむ』より

 

四六判上製カバー装 3000円・税別

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鈴木りえ歌集『夕映えの湖』

 

著者の作品は、対象への暖かく優しい視線を特徴とする。歌い方、題材の捉え方がつねに肯定的である。もしそれが無意識の結果だとすれば、作者の人間性の根本に世界に対するそのような愛と肯定感があるという証であり、短歌を作る上での意識的な態度だとすれば、そこに作者の歌に対する認識と作歌哲学があるだろう。 

谷岡亜紀・解説より

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内野信子歌集『つまくれなゐ』

自然やいとしきものたちへの温かなまなざし、

人間としてひたむきに生きようとする姿勢に心打たれる。

巧緻でたおやかな作品は、さらなる世界への展開を予感させて

やまないものがある。

                         ――林田恒浩ーー

 

『つまくれなゐ』五首

 

つまくれなゐと母の呼びゐし花が咲きこころ惹かるる一軒となる

 

草の実を扱きて握る手のひらにいまだ疼けるのゆめ

 

ゆきむしのひとつ流れてまたひとついづく邑のうへにか雪降る

 

木末よりいつきにひらきゆくコブシ讒説はしる早さといづれ

 

                 催花雨の来そうな空をともに見て一会とならむひとと別るる

 

判型:四六判上製カバー装 

頁数:192頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-086-7

 

 

 

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藤田冴歌集『湖水の声』

この豊潤な一冊を読んで来て、なほこの上、作者にいふことがあるであらうかと考へました。作者は、充分に謙虚なのでありますから、これを言ふには、多少、誤解をおそれず言ふ必要がありますが、「完全を求めないこと」といふ言葉が、私の脳裡をよぎりました。すこし、あらつぽく、リアリズムと喩法とのアマルガムを、これからいよいよ、期待したいと思ひます。岡井 隆・栞より

 

四六判上製カバー装 2500円(税抜)

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萩原桂子『灯の文字』

 

運動場に満ち照る()の文字瞰てをれば夢ゆめ過疎の町と思はず

 

 

 

作歌に、評論に、さらに絵本の読み聞かせに、宮崎県高鍋町で意欲的に活動する荻原桂子さんの充実の第二歌集である。「灯の文字」の歌は「高鍋城灯籠祭り」に関わる作であるが、荻原さんにとっては五句三十一音の短歌の言葉こそが、自らの心を明るく照らす「灯の文字」ではあるまいか。この一冊はそう読者に思わせる。                          伊藤一彦

 

四六判上製カバー装 2500円(税抜)

 

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くぼたかずこ歌集『お気に召すまま召されるままに』

わたくしも老舗の歳になりました分けてあげましょ一年二年

唐紅

 

人生の交叉点ですこの店はアラフォー女子にみたびの恋か

薄桜

 

しゃがすみれたんぽぽすいせんはなだいこんこぶしは白く友よさよなら

薄桜

 

ゼラニウム。秋、冬、春、夏、また一年。ツバメの街に日々は過ぎゆく

杜若

 

 

とんとんとん。

時をのぼりおりし、日々を彩るうたがここにある。

友を送るうた、母のうた、酒場のうた、

心を尽くすうた・・・。

ドキュメント短歌380首。

 

四六版並製カバー装 1500円・税別



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栗原浪絵歌集『藍色の鯨』

『藍色の鯨』には歌作を始めてからの栗原さんの人生が反映されており、彼女の表現のセンスがそうした暮らしの折々を詩的香りに包んでいる。この歌集の特徴はまっすぐに前を見つめる健やかさにあるが、その特徴を支える軽やかな文体がこころよい。       三枝之・跋より

 

四六判上製カバー装 2500円(税抜)

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大島史洋『短歌こぼれ話』

 

仄暗い古書店の奥から、じっと神保町界隈を静かに眺めている眼。その眼は、広く短詩型文学の世界を渉猟しつつ、わかりやすい言葉と表現で珠玉のエッセイとなる。

 

読後感の何とも言えぬさわやかさをとくと味わってください。

 

四六判並製カバー装 2000円(税抜)

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山本雪子歌集『楤の木』

人生には幸せな時間が流れている。

見るもの、聞くもの、そのすべてが輝く光を帯びているはずだ。

掬い取るように、丹念に、日常の出来事を詠みながら、

しなやかに刻まれてきた年輪は、くっきりと確かな歌の姿を見せてくれる。

 

四六判上製カバー装 2500円・税別

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萩岡良博歌集『周老王』

 

雪の森に雪けむり立つきらきらと時間はときに見ゆることあり

 

もみづる日をみなご生まるたまきはるくらきうつつのあかりとなれよ

 

しづくして虹消えはてし宇陀の野の伝承ひとつ緑青を噴く

 

譫妄の父泣き語る戦ひの空をほととぎす啼きてわたれり

 

いくたびも問ふ森に問ふいくたびも霧に洗はれもみぢするため

 

母は沼おぼろおぼろと深みゆきてぬきさしならぬまでにいとほし 

 

 

たしかに聴こえる。

大和宇陀の野や山から、ひそかに伝わってくる古代歌謡のひびき。

古代のまぼろしが時として日常の中に紛れ込みながら、骨太い詩魂を形成した。

 

いったい、家族とは何か、同胞とは何か、世界とは何か。

 

 

A5版上製カバー装 2500円・税別


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鈴木香代子歌集『あやめ星雲』

肉体をもたぬいのちは涼しからんあやめ星雲もはるけき人も

 

 

いのちに触れる。

今ここにあるいのち、

森羅万象を流れ行くいのちを歌う。

他界のまなざしをもって、

日常の生の起伏を見つめる時、

あたらしい鼓動が歌に宿り始める。

 

病廊をゆくいもうとは角曲がりふいに消えたりわれはおののく

祈るほかなけれど指は組まざりき此岸に一本の綱手繰るため

木もれ日の道はしばらく続きおり次の悲へゆく序奏のように

 

自閉症アスペとアガペ似ておりぬ独りの愛は独りにかえる

ゆるらかに水抱くコップ一生かけわれら不可逆の水運ぶなり

 


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鹿取未放歌集『かもめ』

 

受胎告ぐるどの天使も羽たくましくひざまづくとは支配に似たり

締め切り日は〈世界終末〉の後にありテーブルのうへに卵が一つ

プログラミングされをるのみにてケータイに〈夜更かしでね〉と囁かれをり  

学会に行きて戻りてさらに行く子に見えない()()をただ振つてゐる

タンパク質ファミリーの図を見てあれば賑やかにして邃し身体

A、C、G、T A、C、G、T かもめはかもめ空があをいよ

 

言葉の連鎖は命の連鎖。

豊穣にして切っ先の鋭い言葉と言葉の相剋。

心たゆたい、屈折しつつ歌の曠野に一人称の影を落とす。

 

ゆっくりとほどかれていく魂の痛ましさの声を聴く。


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清田由井子著『歌は志の之くところ』

いのちと自然、社会とのかかわりの中で、

歌を詠むとはどういうことなのか。

その根柢をつねに問い続け、成熟していく心と思想を、

火の国阿蘇から発信し続ける、渾身の歌論。

歌とは述志の文学である。

 

<本書・目次より>

抒情としての今日性

前衛歌人のメモワール

否定から肯定の思想へ

いかにあるべき女歌

うたは「訴え」―豊饒の涙をつづる―

黒の彼方

歌の根柢―八十年前の雪―

魂の原野―福島泰樹論―

ひそかなる花野の闘い―安永蕗子論―

いさちる渚の歌人―谷川健一論―


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石井喜久子『更紗石』

銀嶺の赤城は雄々しさながらに関八州をべるごとくに

冬に月の魂しづめとぞ筆もてば墨の香しるく匂ひつつ立つ

亡びしは滅びの色の草もみぢ更地のままに秋立ちにけり

()の孫はけふははたちの祝膳かこめばほのぼの溢れくるもの

子らは去りふたりの老いにゆるゆると時は流れて小寒となる

 

過ぎ去っていった歳月のなかで、陰翳をもってよみがえる旅の記憶、亡き人々の顔、そして山河草木。目を閉じて、深く静かにこころをめぐらせれば、かれらは歌のすがたとなって現れてくる。

 


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藤元靖子歌集『はらはら零る』

白い花を探して歩く 今朝はすぐ見つかるものをさがして歩く

棒切れで自分の周りに円を描く くるっと一まわり元へ戻れた

悲しみは色なく音なくわたくしを流線形にのこしおく風

夕かげに木の葉一枚かえすように帰されたなら紛れればよい

忽ちというにはあらず十日月の傾きながら西へ巡る間

 

自然にさりげなく寄り添い、

その深い懐にそっと抱かれる。

淡々として、平明に、自在に。

 

そんなふうに歌を詠む

言葉は木の葉、しらべは風


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辻尾修歌集『海を見ながら』

十一時二分を知らする何もなき船旅にゐて両眼を(つむ)

月に一度島に教へに来てくれるピアノ教師を釣りでもてなす

人文字に分校の子ら足らざれば親もまじりて航空写真撮る

バナナ売らぬ土地日本になけれども越してゆきたる二歳に送る

シスターの運転で来しシスターは手土産持ちて眼科に入りぬ

一万六千人の冥福祈るサイレンが一万五千人のわが町に鳴る

 

 

 

事柄の大小を問はず、相手に近いところまですつと心を寄せることが出来る。このことは想像力と関係するのだらうが、辻󠄀尾さんが歌を作る上で、共感性の強さが大きな力になつてゐることは間違ひない。

馬場昭徳解説より

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

 


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桝田紀子歌集『夜香木匂う』

 

私は、短歌とはそれが気の利いた高等な表現手段ではなくても、だれでもが素直にみんなと伝達し合える文学なのだ、とつくづく思うのである。それは、全ては自分の日常の言葉で、それを短歌表現に託する心の強さとして働くからである。

浜田康敬・跋より

 

四六判上製カバー装 2500円(税別)

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国定里子歌集『各務原』

公園の桜の大樹五十年けものめく幹につぼみあふれつ

農をせし彼の日の麦を疎み来て弥生の店の麦の穂いとし

梅雨曇り俄の照りに白昼のわが身の影は足元にあり

英国など早く侵略し公然とひと迫ひはらひ国を盗みき

西瓜食み黒き種のみ判別すその様にして詐欺の解れば

 

国定里子さんの歌は独特だ。

多くは生活周辺の嘱目であるが何を歌っても歯切れがいい。

省略の文学であることを心得ているからであろう。

近現代の秀歌をなぞるような傾向は何処にもない。影響を拒否しながら作歌する強靭な姿勢とともに純朴な美しさがある。

島崎榮一

四六版上製カバー装 2300円・税別

 

 


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石垣蔦紅『青き地平線』

老いの日は日日是好日老いの夜も愉快なりけり夢また楽し

 

めぐり合いとは愛すること。

この地上、何一つさえぎりもののない地平線のおおらかな青。

二人いっしょに老いの日々を温かく支えながら歌う。ハワイ在住歌人の試みる短歌とTANKAの世界。

 


oh,how I wish
I could melt
into the blue horizon,
drawing up my forehead
to the airplane window

(このままに青き地平線に溶け込みてゆきたし機窓に額寄せつつ)

 

四六版並製 2000円・税別


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畑彩子歌集『虫の神様』

あかときに蜩鳴けり ふるさとは大き緑の虫篭なれば

海沿いの墓地へとつづく坂道を大潮坂と祖父のみ呼びき

山手線乗って降りればあとかたもなく新宿は消え果にけり

青空を三日見ないと死ぬという息子よ今日はくもりのち晴れ

「はる」という詩の音読を繰り返す次男の声が食卓照らす

 

文字通りの知力、胆力に長けた著者の久しぶりの第三歌集。Ⅰ部は出産や育児が主題だが、対象への距離を保って客観的な軽快感がある。Ⅱ部、Ⅲ部では虫のような小さな生命へのつよい思い入れをみせ、また身近な人々との交歓を通して自ずと自覚されてゆく生の時間との葛藤もあって、文学を志した日の青春性の回復がはかられてゆく。

かつても生半可な苦悩などはいわなかっつた著者の、ひとつの転機をはらむ頼もしい歌集といえよう。

馬場あき子・帯文より

 

四六版上製カバー装 2500円・税別


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服部崇歌集『ドードー鳥の骨』

サンマルタン運河は夏のきらめきを注ぎて白き船を持ち上ぐ

笛吹きが笛吹かずしてふふふふとわらひをさそふパリの祭日

二年目のパリの夜なれば驚かず青き火を噴くエッフェル塔よ

 

 パリ同時多発テロの時期を含む3年間の官僚としてのパリ生活の中から生まれた340首。定住というには短く、旅行にしては長い3年という時間ならではの貪欲な取材がスリリングである。描かれた風景の輪郭はあくまでもクリアであり、表現された事物の動きが徹してシャープなのは、パリ独特の乾いた空気を味方につけた作者の手腕であろう。

                        佐佐木幸綱

 

 

左岸より右岸にわたり右岸より左岸にもどるビルアケム橋

シテ島にあたまのあかい鸚鵡ゐて君との日々を吾に語らしむ

ふちなしの眼鏡に顔を挿げ替へて硝子のパリのパサージュに入る

行きつけのカフェの給仕と初めての握手を交はすテロの翌朝

フランスの最後の晩餐友とゐて何度もなんども灯りの消える

 

四六版上製函入 2500円・税別


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浅田隆弘歌集『四季の譜』

ひとひらの蓮の花びら水に散りうすくれなゐの小舟となりき

朝まだき人影のなき園内の回転木馬みな宙に浮く

木もれ日のなかをわが影歩みをり我をはなれし人のごとくに

雪の上に赤き椿の一弁が命あるかに輝きてあり

 

何ものにもしばられることなく、気ままに自分の思うままに感じたままに短歌作りに励んでいます。作品の出来不出来は別にして、短歌を作る過程が楽しみです。夢中になって自分の描きたいことをいかに表現したらよいのか、推敲をかさねることは苦しいけれども楽しいことでもあります。           ――あとがきより

 

四六版上製カバー装 2500円・税別


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田土才恵歌集『風のことづて』

人から人へ、親から子へ、孫へ

風がささやきかけるように

伝えたい思いがある、伝えたい歌がある。

 

そっと耳をすませば言葉はいのちあふれる涌井の

ようだ。

 

 

なにがなし時計いくつもならべいていずこにあらんわれのみの時

湯たんぽに湯の音とぷとぷ階上る今日の終わりの足音立てて

もの書けばたちまちペンを貸せといい意志見せはじむ一歳の春

ケアハウスの窓ひそやかに開けられて春愁ひとつ今とき放つ

風となり水とはなりてめぐりつついのちのほむら若葉縫いゆく

 

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

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渡邉千恵歌集『神帰月』

 

白妙の雪纏いたる里山に昔ありけり竈の煙

ひと処ひたくれないに匂い顕つ田の畦過ぎてまた曼珠沙華

 時雨きて樹樹のもみじの深みたる篠脇山荘屋根の葺き替え

もののふの風雅つらつら敷島の道を照らして古今伝授は

舞うほどに花さんさんと山里に歌の心の配らるる宵

ちり敷ける桜絨毯ふみ急ぐ昼餉ま近き穀雨の道を

聳え立つ<(かみ)(かえり)(すぎ)>ゆさゆさと七百年の静かなる呼吸

 

 

雪の里山にしずかに立ちのぼる昔の煙。こちらの田の畦に、あちらの田の畦に、かがやくように群れ咲く曼珠沙華。岐阜県の郡上大和は、東常縁の古今伝授の里として文化的な面で知られているが、長良川沿いの自然豊かな地でもある。そんな郡上大和の文化と自然を、渡辺千恵さんが、ぞんぶんに自在にうたいあげた一冊である。佐佐木幸綱

 

四六版上製カバー装 2600円・税別

 


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澤村孝夫歌集『山峡』

昔から山の中野代名詞と言われた僻地の自然を友とし、

過酷な洗礼を受けつつ楢山に落葉を攫い、稲や麦や蕎麦を作り、秋の田に十段もの高い稲架を組み、牛を飼い、杉や桧の枝打ちをし、猪と共存する生活の中から生まれた厳しくも美しい歌集。

 

蜩のひとつ啼きしが忽ちにひろがりゆきて峡明けんとす

弧を描き鳶は舞いいん声のみに足りて山深く桧枝打つ

山始めの神事を見んと従ききたる幼一様に顔を正せり
十段の稲架いつまでを結い得るや太き組み木を解きつつ思う

朝々をきりり締めゆく亡き妻の縫い置きくれし細き山帯

 

A5版上製カバー装 2600円・税別

 


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若松喜子歌集『砂嘴のソクラテス』

空翔けるテレビドラマの歌うたい子は大股に角を曲がって

忌のあした天がけるごと霧ながれ歌のことばとならず消えたり

青鷺が静止画像のごとたてり砂嘴のソクラテスとひそかに名付く

水草の根に潜りたる目高たちわが水播けば水の輪にくる

波除け石ひとつひとつに刻まるる名前のありて入江囲める

 

 

ひたむきに歌と真向かう。

歌がひそかに息づき始める。こんなにも豊かで、変化してゆく日常世界。

 

「短歌を創ることは、生きることはを、自分自身に問うこと」という先師・香川進の言葉を反芻しつつ、あるがままの自らの感性に歌を寄り添わせて詠み続ける。

 

四六版上製カバー装 2600円・税別

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加藤走歌集『風よ、ここに』

塩のごと微かな音に風立ちてこの構内に押し寄せるもの

 

風は立ち上がるように存在感を形成し、構内に押し寄せて来るのだ。第二、第三の波も次に控えている。鋭い感性は必要条件に過ぎず、完成でとらえたものを抽象的な思弁へと昇華させた歌だ。

小塩卓哉・解説より

 

風の字が部屋の隅にて風になる娘が書きし半紙ひとひら

灼熱の舗道の上を飛蝗が歩む何かきつと麻痺してゐる

 

陽がさあつと枯葉の径に差し入りてかの日がわれを攫つてゆきぬ

目が合ふと鴉の方から目を逸らすかなしきものがむくむくと兆す

水切りの撥ねあと引きて消えてゆく石を湖底はしづかに受け取る

 

四六版上製カバー装 2600円・税別

 

 


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伊良部喜代子歌集『夏至南風』

 

南風(はえ)に吹かれ女身籠るそのむかし風の父待つ美(うま)し児いたり

戦わず勝たず敗れず生き来しを責むるが如き今日の夕映え
しらしらと明るき冥府あるというわが生れし島の真砂に
何もかも押し流しゆく大津波 かりそめの世の真実のこと
死者は青き海底(むゆう)に行くとぞ海底を抜けまた人の世に生まれ来るとぞ
産土は沖縄、移り住んだみちのく仙台。今なお残る戦争の傷跡、そして震災の悲惨。もはや私の中から何かが抜け出してしまったのか。
自らの魂の在り処を探し取り戻すために。
歌の霊異を信じながら歌う。
四六版上製カバー装 2500円・税別

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野田恵美子歌集『風のあしあと』

潮騒のごとき囀りつばくろの葦の塒に吸はれて止みぬ

離れ住む母の買物携帯に訊きつつ選ぶ秋のブラウス

潮風に吹き寄せらるる花のごとかもめ群れゐる知多の渚に

胸底の埋め火かもとシクラメン夕べの窓に緋の色震ふ

氷の色の蒼空映る湖にかそかなさざ波水鳥の影

安らかに笑む母の面苦行より解き放されし尼僧のごとく

 

鳥に関わる知識と情愛が実に深く、鳥をモチーフにした作品が主流になっています。繊細でナイーブな歌は作者の人柄と相通じるものがあり、純粋な思いが伝わってきます。(青木陽子・帯文)

 

A5版上製カバー装丁 2600円税別


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五十嵐順子『奇跡の木』

奇跡の木(Survivor Tree)と呼ばれ一本の梨の木残る 証言者として

 

グラウンド・ゼロの復旧作業中に瓦礫の中から発見されたこの梨の木は、当初深刻なダメージを受けていたということですが、手厚い手当をされてよみがえり、大きく枝葉を伸ばしていました。人生の困難に直面したとき、この梨の木の幹の手触りを思い出し、支えとしたいという思いもあります。

                  〈あとがきより〉

 

みどりごのしゃっくり見んと若き父母その親たちが取り囲みいつ

うす青くパレスチナ暫定自治区見ゆただ静かなる対岸として

畑から冬瓜を抱いてくるときにこっそり夫は笑っていたか

子に負われ捨てられにくることもよし黄葉の峠越えつつ思う

くりかえす「あなたは私の雨」という手紙のことば幾度も胸に

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

 


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前川多美江歌集『水よ輝け』

朝空の光あつめて直立す原爆落下中心地の碑

花をくぐり竹山広に会いに来ぬつくづく死者は声あらぬ人

七十年後のこの生徒らを思いみる献水桶の水よ輝け

観覧車あけゆく空にゴンドラの鋼の滴吊りさげており

お母さんと呼ばれていたら一回り大きな傘を持ったであろう

 

これまでの三冊の歌集を通して、反戦・反核の思ひ、そして早世した子への鎮魂の思ひは前川多美江さんの短歌の底を流れるものとしてあつた。そのことは今度の歌集においても変わらない。一生をかけて詠み続けるテーマを自らに課すことの大切さをこの歌集は教えてくれる。(馬場昭徳・帯文)

 

A5版上製カバー装 2600円・税別


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麻生千鶴子歌集『白い道』

絵の題は「水のほとり」と記したりいつか住みたし水のほとりに
船の荷を解けばかさりと音のして旅順の丘に摘みし吾亦紅
葉桜の影濃くなれる曲がり角かの日の花は白く咲きいし
駅までは行かずはづれの踏切に人を送りき初夏のこと
零したる水を掬ひしおろかさもなべてさむ八十四歳
確認しておきたいのは、麻生さんの作品の基本的なトーンが常に前向きな姿勢にあるといふことだ。これは何も麻生さんがらくらくと人生を過ごしてこられたからではない。当然、様々な困難を抱へながら生きてこられたはずである。
しかし詩に対するときの選択として、明るい面から切り取りたいといふ姿勢がこれらの作品を作らせてきたのである。改めて、その姿勢の尊さを思つてゐるところである。
馬場昭徳(解説より)
四六版上製カバー装 2500円・税別

 

 


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松平修文歌集『トゥオネラ』

窓外は暮れ、青炎のごと燃ゆる薔薇幾つ風に揺れてくづれて
誰も信じるな、何も信じるな 冬森で茸をさがす老婆のやうに
樹や草の役多き劇 少年も少女も人間の役やりたがる
日暮らし雨は男待つ日の陰雨(ながあめ)で、尿雨(ゆまりあめ)は男見限る日の俄雨(にわかあめ)
夜空の果ての果ての天体(ほし)より来しといふ少女の陰(ほと)は草の香ぞする
歌集『水村』が、雁書館から刊行されたのは一九七九年九月。
『水村』に寄せる冨士田元彦社主の期待は並大抵ではなかった。
一升瓶をしつらえ冨士田さんを待たせながら、
解説を書き上げた夜のことなどが懐かしく思い出される。
・・・・・とまれ、第五歌集『トゥオネラ』四百八十五首掉尾を前に、「窓外は暮れ、」の一首が燃えながら立つ。(福島泰樹・栞より)
四六版上製カバー装 2600円・税別

 


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篠田和香子歌集『雪の記憶』

その中に苦悶を溜めてゐるごとき鈍き音させ今し雪落つ

なまはげの面を付けたる瞬間に若者ふつと大きくなりぬ

目を伏せる花嫁の切手に消印は触るるごとくに押されてゐたり

江戸切子の青きグラスにさをさをと注げば酒の自づから冷ゆ

しなやかな腰に継ぎ足す竿竹の大きく撓ひて夜が明るし

 

秋田県大曲に生まれ育った篠田和香子さんに雪の歌が多いのは当然であろう。本書のタイトルも「雪の記憶」である。

雪の夜に生まれしゆゑの記憶ならむ遥かに聴こゆ雪の降る音

歌われているように雪の夜に生まれ、そのことを自分の原体験として大切にしている。

伊藤一彦・跋より

 

四六版上製カバー装 2600円・税別


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宮本清歌集『いとちゃんの息子』

風 寒し。エレベーターの工場の実験棟はただひとつ立つ

 

寒風に曝され「ただひとつ立つ」実験棟は作者自身なのだ。

自身の孤の姿をそこに重ねているのだと。

人が人として生きることの孤独、寂寥、苦さが本集のベースにある。

平林静代・跋より

 

「おれの場所」の文字残されぬ。今しがた中学生のいた橋の下に

八日目を生き抜く者もありぬべし。病院帰りに聞く 蝉しぐれ

利根川を快速電車がわたるとき、鴉の群れも共に渡りぬ

「いとちゃんの息子」と呼ばれ、「いとちゃんの息子」であったとつくづく思う

国と国の争いの種 またひとつ、芽生えて揺らぐ。島国日本

 

四六版上製カバー装 2500円・税別


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岩尾淳子歌集『岸』

第26回ながらみ書房出版賞受賞!!
校舎から小さく見える朝の海からっぽの男の子たち、おはよう
ほんのりと火星の寄せてくる夕べちりめんじゃこをサラダに降らす
あんまり思い出したくないんだ戦争は、血を噴きそうな先生の喉
とけそうな中洲の緑にこの世しか知るはずもない水どりの群れ
絡みつく猫を日暮れに押しのけて立ちたるままに冷酒をそそぐ
握りしめれば手のひらから消えてしまう三十一音。
短い歌が遠い鈴の音のようにこころに響く。
歌を詠む人がいて、その歌を読む人がいる。
そこに伝わるほのかな温もり。
歌集を編みながらそんなことを思った。(あとがきより)
判型:四六版上製カバー装 
頁数:216頁
定価:2500円(税別)
ISBN 978-4-86629-055-3

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御供平佶全四歌集

収録歌集

『河岸段丘』『車站』『冬の稲妻』『神流川』

戦後四十年を日本に存在して昭和とともに消え去った「鉄道公安」を、私が経験した後半の二十年を区切の既刊歌集四冊の作品全体を見直して、ひとまとめにしたものがこの一冊である。

 

『車站』

 ぴりぴりとわが青ざむる顔をすぎ彼の視線は鞄に坐る  
 バッグ割る指の見えし瞬間の充実の感替ふる何がある

 超越を心に重く年の過ぐ美学のくだり超えよわがうた

 

3000円・税別

 


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藤岡眞佐子歌集『思愁期』

思春期は遙かにすぎて今思愁期老いには老いの反抗期あり

霧にうかぶ清しき桜の内らより身を投げ入れよと声の聞こえる

赦されて無限を昇りゆけるもの鳩のむくろの胸厚かりき

在るという痛みに耐えるものたちよ人間も樹も洞をもつもの

がっちゃんとこの日常に鍵かけて森に向かって歩みいだせり 

 

いったい、人はどこから来て、どこへ往こうとしているのか。そんな問いかけが、つねに歌の根底に横たわっている。春の逃げ水のむこうの彼岸を想像したり、桜の中から声が聴こえてきたり、鰭をもって大海原を泳ぎ、側溝を流れる木の葉に載せてと懇願する。こうした虚の空間へと入っていくことのできる無心さこそが、藤岡さんの歌の魅力である。

喜多弘樹・解説にかえてより

 

2500円・税別

  


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青き実のピラカンサ

小鳥屋のことりの声が聞きたくてプラットフォームの端つこに立つ
半桶(はんぎり)の飯に合はせ酢かけゆけば待ちゐし団扇三つがあふぐ
「高砂」の掛け軸が好きなをさなごは先づ指さしぬ翁の方を
スポイトに与ふるは水、やはらかき水、犬は五滴のみづを飲みたり
どうしてもザリガニ釣れぬ子がひとり煮干しの下に重りを結はふ
裂き織りに義母のもんぺを織り込みぬ朱色の布もときには入れて

日常のささやかな情景のなかに、過ぎ去った記憶のなかに掬いだす、あたたかな詩情ー。

人びとや自然と交感するやわらかな心が紡いだ歌は、誰もが抱えているかなしみをゆっくりと癒し、やがて未来への架橋となるだろう。
四六版上製カバー装 2500円・税別

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田村広志著『岩田正の歌』

「文学は手作り」という岩田正の一貫した思想と生き方、そして歌ー。

あまたのカロンと歌集をひもとき、ともに歩んで来た長い道のりを顧みながら、その味わい深い歌の世界に分け入ってゆく。

 

 

私にとってこの本は立ち直るための大切な一冊である。

歌に関わり始めたときから先生と呼んできた。その岩田正のことをボチボチと書き継いだのがこの一冊である。

これは私自身のために私に書いた本なのである。書き継ぐことによって、私自身が療養の鬱陶しさから幾分立ち直れたのだった。   あとがきより

 

 

四六版並製カバー装 2500円・税別


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加藤和子歌集『朝のメール』

黄に圧され黄に放たれて歩みたりひと日曇れる黄葉渓谷

石の家に降りゆく雪の淋しさを思えり朝のメールを閉ざす

イギリスの老女のようにカーテンの間からまた庭を見ている

昔むかし蝉の鳴かない年があり並木は暗渠に変わっていった

怒ったり淋しがったり日常の続きの中に人は亡きかも

 

先師・高安国世の歌ごころを受け止め、身めぐりの風物や人物をつつましく歌い継ぐ。平明なしらべにたしかな言葉の年輪を重ね、いよいよ作歌世界は地味と深まりを見せ始める。

 

四六版上製カバー装 2400円・税別


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南輝子歌集『War is over 百首』

悲しみをかなしみつづける父がゐる南十字星の心臓のあたり

「もしやもしや」

 

夜ひらくササン朝ペルシアの古星図は露にしめりて吸ひついてくる

「南十字星」

 

青空をめまひするまで仰ぎゐてこころ躓く青あをすぎる

「青空」

二黒土星(きのえ)(さる)歳昭和十九年われ月下に生れき月びかりさせて

「塚本邦雄の青春」

 

ムルソーの太陽はとつくにない 闇は濾過しても闇ゆすつても闇

PUNK ROCKER

 

私も、両親が戦争体験を抱えた世代である。おりにつけ聞かされた逸話から、著者や私自身がこの世に生まれた事の希有さを思い知る。平和を相続していくことも、幾多の困難を克服せねばならないのか?そのことに対する感慨を、南輝子は100の歌にして問いかけている。 塚本靑史・帯文より

 

 四六版上製カバー装 2500円・税別


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大谷ゆかり歌集『ホライズン』

夜なべする君へうどんの満月が傾かぬようゆっくり運ぶ

鉛筆と定規の似合う雨の朝ななめななめに線生まれくる

目の奥にムラサキウニの鳴くような偏頭痛せり今日は満月

父母の言葉もこもこ着せられて蓑虫となる実家の茶の間

つるつるとしたもの多き世の中に桃は貴重な手ざわりをもつ

百を越すCAD起ち上がり自販機の開発室が息づきはじむ

 

ことさらドラマチックに作られているわけではないのだが、それぞれの歌の中にドラマがある。心安らぐ温かなドラマだ。登場人物が歌の中でイキイキと動いている点も、いい。

(藤島秀憲 帯より)

 

四六版上製カバー装 2500円・税別


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鈴木直子歌集『流れる雲』

どっこいしょと立ち上がる私よいしょと腰かける夫老いづく二人

 

晴れの日も雨の日も風の日も、いつも傍にいて共に歌を作り、病む日はその全てを支え合う。安らかならざる老いを肯い、〈どっこいしょ〉〈よいしょ〉と声を揃える、この究極の愛の姿は、『流れる雲』に溢れる愛と祈りそのものである。

佐藤孝子・序より

 

 

かなしきほどに小さき衣の干されけり一つの命()れしこの家

姑のしがらみより抜けねばと紅うすく引きて(あした)の庭を清むる

古稀過ぎて着けたる義肢は重くして幼のごとき歩みになりぬ

桃の花ふくらみくれば恋しさのつのる故郷はここよりも北

風花とうやさしき名を持つ老人の憩えるそのにわれも安らう

 

A5版上製カバー装 2600円・税別


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鈴木和雄歌集『婆娑羅一代』

京の雅でも陸奥(みちのく)の素朴でも無い坂東の鄙びた歌を詠む心定まる

グループホームの往診で義歯を預かり直してまた届ける朝と昼の間に

生老病死の四文字に振り回される人生もとどのつまりは骨壺ひとつ

送り盆を済ませてホッとする夕べ 八月十五日は人生の原点

一番幸せだったのは戦争のなかった幼年時代と老々介護の今

何よりもこの一巻には作者の雄々しい人生哲学という心棒が貫かれています。どの一首にもユーモアと俳諧味に支えられた未来志向の生活術とクールな自己批判のまなざしがいきいきと光り輝いています。

黒田杏子・序より

A5版上製カバー装 2700円・税別


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糸川雅子著『詩歌の淵源 「明星」の時代』

近代短歌の淵源としての「明星」は、その創刊が明治三十三年と聞くと、確かに遥かに遠い過去のことに感じられてしまうかもしれないが、振り返ってみると、それは、思いのほか近くに、地続きに広がっている世界なのである。

そして、その豊穣さから、現代の詩歌が多くの恵みを受け、多くの果実を実らせてきたことを思わせるのである。

 

「はじめに」より

四六版並製カバー装 2500円・税別


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大原葉子歌集『だいだらぼふ』

 

潰れるかも知れぬ銀行しよひこみて見舞ひくるるよこの青年も

風のなき黄落の森の華やぎは日雀とび去りゆきてさらなり

川水にななめに降り込む雪のかげ千の小魚の走れると見き

松ぼくりもつと落とすと石抛る幼よいくつもよき恋を得よ

農道の草に捨てある山椒魚 生とも死とも()とも(せう)とも

 

 

巨人伝説の山とのおごそかな対峙。

そこに歌の発想の始源をしかと定め、

大きくしなやかに拡散してゆくしらべ。

 

思念の深みから探り出す、

 

たしかな現実の手ざわり。


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梅地和子歌集『小窓を見つめる』

孤独感をはるかに超える冷酷な宇宙に生きる動悸苦しも

身体が冷えてふるえる夜におもう春の彼岸にたたずむ一人

微光さえ雲ににじみて消えてゆく鴉一羽の横切る時間

死がそこに扉をあけて待つを見ん真夏の夕べ心臓()れる

よき歌を生みたきこころ湧ききたりすべて金色の五月の夕べ

 

人は誰でも、たとえ玄冬の時節にある人でも、心はときめく。何故か。「歌」は、遊びは、宇宙の息吹、宇宙のリズム、生と死との溶け合いのなかで息づくものであるからだ。「文台」を大切にして、さらに、珠玉の作品を残すことを祈る。良い出会いに報いるためにも。

飯岡秀夫・序より

 

四六版並製カバー装 1200円・税別


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西村慶子歌集『むさしあぶみ』

しろじろと遠き桜のつらなりを眺めをりしにはやもみどりに

おのれひとりの時もつ夫かしづかなる目を向けてゐる盆踊りの輪

うすべにの小花が茎を巻きのぼるもぢづりかなし芝にはなやぐ

あてもなきあゆみたのしみ里山にあくがれてゐる童女さながら

時をかけ聴かうと耳に手を添へて悲しきかたちのわれとなりゐつ

 

過ぎ去っていった歳月のなかで、陰翳をもってよみがえる、夫の、友の声、そして草花。目を閉じて、深く静かにこころをめぐらせれば、かれらは歌のすがたとなって現れてくる。

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森みずえ歌集『水辺のこゑ』

娘を乗せて電車曲がりてゆきしあと駅のさくらのしんと匂へる

生まれたる水辺のほかをまだ知らず水とりのひな母に従きゆく

ひしめきて稚魚のぼりくる朝の潟はなのやうなる海月も混じる

雪やなぎ白たわわなるその下に二人子睦みゐたる日のあり

森の上にひとたび浮いてゆつくりと水に降りゆくしらさぎの脚 

 

鳥の声、虫の声、風に揺れる木々の声。

みんな純真な嬰児(みどりご)のように思えてくる日。

誰かがどこからか私にそっとささやきかけてくる。

 

もう、急がずに衒わずに

歌を詠めばいいのだよ。

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

  

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松岡秀明歌集『病室のマトリョーシカ』

ホスピスへの入院希望を書く紙に誰の意志かを(ただ)す欄あり

それぞれの(せい)へひとみな帰りゆく追悼試合終はり日暮れて

わが横でメス動かせる相棒は裁縫上手な大阪女

嬰児(みどりご)の碧の眼濡れてあれば海原の始めここにありと見ゆ

森といふ器に母は寝転びて父なるわれは子を空に抱く

踊り手でありし男の病室にオディロン・ルドンの花咲きほこる

マトリョーシカ分かちてつひに現はるるうろをもたないさき人形