斎藤美知子歌集『時空はるかに』

定価:2,750円(税込)

判型:四六判上製カバー装

頁数:170頁

ISBN978-4-86629-332-5

前歌集の『アレジアは雨』からほぼ十年。

この歌集にはさらにいとおしい家族たちを著者はひたすらに詠い上げている。

作品はいかにもしっとりとした詩情にあふれ、著者ならではの世界をさらに切り開いて行こうとする姿勢が強く窺える。長年つれそってきた一人を偲ぶ作品は、人間としてのかなしみにあふれ、切々として読む人の心を執えてやまないものがある。

 

帯文 林田恒浩

 

 

 

 

<引用 六首>

さゐさゐと葉に降る雨の閑かなり白あぢさゐは誰が魂ならむ

 

疲れ兆す身にはしなくも沁みとほる夏うぐひすの透明の声

 

冥界の姉とわれとをつなぐ路爪木崎さかりの水仙を訪ふ

 

さすらひの想ひはきざす昼の月かくあはあはとわれに晩年

 

連なりて無蓋の貨車が北へゆくながく忘れてゐたる風景

 

はからずも泪こぼれき伏す夫が掌を述べて言ふ「今日もありがたう」