矢野しげ子歌集『輪廻のひとこま』

第二歌集!

 

夫の他界に悲観の日々もあった。

次々に襲ってくる病を克服してきた。

先師・山名康郎に歌学びをした懐かしい日々。

世界を旅し、日本を旅し、多くのものを見て来た。

さまざまに去来するもの。

このさびしい輪廻の駅に無言で立つ。

 

 

 

 

『輪廻のひとこま』より五首

 

雪の降る朝はモノクロ雲垂れて竜の目に見ゆる信号の青

 

夢を追ふ旅の坂道ふり帰る素足のわれに夕日ひたひた

 

言ひたきこと言へずくよくよ帰り来ぬ傘の雫をシュッと振り切る

 

老後のためと始し短歌読み返す相聞歌一首だになきは寂しき

 

蝉のこゑもか細くなりぬわれもまた未知なる輪廻のひとこまを生く