豊岡裕一郎歌集『ネコぎらいと猫』

定価:2,640円(税込)

判型:四六判並製カバー装

頁数:186頁

ISBN978-4-86629-315-8

 

第二歌集!

 

この世とあの世との境目に、

あるいは現実と幻想の交差点に、

猫がうろついている。ぼくも同じだ。

異界のまどろみに腕を入れて、言葉たちをもぎ取る。

ぼくの世界はどこにあるのか。酩酊し、さ迷い続ける旅人。

 

 

 

<引用5首>

 

わが歩み過ぎりゆくとき猫の耳ほっそりと立つ眠りながらに

 

上を向き夜空を照らしめぐる灯はこの世の側ゆえだれも応えず

 

おんなというほのかな業(わざ)も世にありて ほそやかな肩を夏陽に曝す

 

存在のゆらぎのように陽をあびるマンホール縁の小砂の若草

 

かぎりなく偶然の景であるさびしさよ木々の罅入るよごれた空は


鈴木英子歌集『喉元を』

定価:2,640円(税込)

判型:四六判上製カバー装

頁数:176頁

ISBN978-4-86629-3141

待望の第五歌集!

 

月島、勝どき橋、佃、晴海。

そこは東京の異界、作者の産土の地。

現実をそのままに受容し、あらんかぎりの思いをこめて、娘に、母に、すべての日常の中ですれ違ってきた人々に。

あかあかと血の夕映えを吐き続ける。心が震える。歌が顫える。

 

 

『喉元を』より五首

 

桜さくら戦後をふぶき一本の樹命、寿命を迎えるらしき

 

セルロイドみたいな声だ 本当に愛しているのは他人ではない

 

身の内に積もる憂いをわたくしも春に噴くかな春を噴くかな

 

われの手がはるか武将の太首を刎(は)ねたることのなきとは言えず

 

わたしのなかの鍾乳洞が喉元を過ぎたしずくを湛え続ける

 

 


橋田昌晴歌集『虹立つ』

定価:2,200円(税込)

判型:四六判上製カバー装

頁数:148頁

ISBN978-4-86629-311-0

第二歌集。

 

素材に対する独特の把握力、あたたかみを伴う笑いの要素、作中に生きる五感等々に裏打ちされた諸作は、一段と円熟味を増しており、どの作品においても橋田昌晴が紛れもなく息づいている。

本書において「虹」は大いなる意味を有する存在である。

ウクライナの橋上に、コロナ禍の空に、作者の心に、虹は鮮やかに架かっている。

 

                      ―――――野地安伯「解説」より

 

 

 

『虹立つ』より五首

 

遺言書を書き終えたりと告げたれば生きて欲しいと妻は涙す

 

パソコンのキーボード叩くまでもなく患者の病名が顔に出ており

 

メラノーマの手術終わりぬ南天に赤く明るく火星煌めく

 

向日葵の種子は多くの実を結び「復活」の日は遠からず来ん

 

長引けるコロナ禍の中雨あとの虹を見つけて告げに来る妻

 


布々岐敬子歌集『野に還りゆく』

定価:2,750円(税込)

判型:四六判上製カバー装

頁数:210頁

ISBN978-4-86629-302-8

 

この歌集は本人の知らないところで、人生の締め括りをつけるように、出されることになりました。最後の詰めが出来ないことは残念でしょうが、一方では<そんなことは構わない>と、笑飛ばしているような気もします。

            高見澤紀子(布々岐敬子 姉)「あとがき」より

 

 

 

 

『野に還りゆく』より5首

 

リストラをされないだけで幸福という幸福論 右肩下がり

 

桑の木の見分けもつかず桑畑は打ち捨てられて野(や)に還りゆく

 

ゆるゆると日の落ちてゆくこの夕べ異邦人には寂し過ぎぬか

 

物置の屋根に山栗ひとつ落つ ゆきたい処へ行けという声

 

気がかりの消えぬ真昼間雲も無くおのがじしなり山茶花の白

 

 

 

 

 


西真行歌集『<結石>を神と言おうか』

定価:2,640円

判型:四六判上製カバー装

頁数:148頁

ISBN978-4-86629-283-0

 

第一歌集!

 

二ヶ月間におよぶ左尿管結石の闘病の記録である。

作者はうたを詠うことによって生きていられたのかもしれない。

 

ひとりで病院や家のベッドに臥しながら、

身体から漏れる言葉。

誰にも聞こえない声。

 

それらを短歌の定型におさめることで自らを支えていたのではないか。

 

江戸雪 解説より

 

 

 

 

寝るために耐える力の必要で大地の重さに身体あずける

 

結石を神と言おうか憤怒せる 肉体通しこころ試さば

 

澱みにて住む魚たちは清流に住みたる魚をうらみておるや

 

何もない青い空のみ写したり決意といってもなにも浮かばぬ

 

結局は石神さまは言っている頼らず生きよ自分で生きよ

 

 

 


名嘉真恵美子歌集『別れと知らず』

定価:2,200円(税込)

判型:四六判並製カバー装

頁数:196頁

ISBN978-4-86629-285-4

 

第三歌集!

 

沖縄をうたう。ふるさとをうたう。

 

戦争と抑圧の歴史はこの島の風土に加わってたえず何事か問いかけてくる。

その問いがしなやかな言葉と思索をもたらし、明日の光を導くことを痛切に願っている。

 

 

 

 

 

「世を捨てよ身を捨つるより」祖父の言葉思ひてゐたり豚煮詰めつつ

 

心かろく死に遠き日々蒼天にひとの生の緒ふはふはとせむ

 

日の丸を燃やす意味さへ朧にして復帰反対デモに連なりき

 

沖縄の百年の鬱土地狩りのはじまりの記憶にいきる人たち

 

アボカドの種すべりゆくするすると掴み損ふ たぶん自分を

 

 

 

 

 


永田吉文歌集『実朝の風』

定価:2500円(税抜)

判型:四六判上製カバー装

頁数:220頁

ISBN978-4-86629-237-3

 

第三歌集!

 

鎌倉の駅前客を待つバスに

    さつと乗り来る実朝の風

 

旅人は風に歌う。

恋は花に紛れようとする。

太陽は月光を全身にあびながら。

何の衒いがあろうか。素の心のままに歌う。

 

 

 

身近なる小田急・横浜両線の町田駅わがうき世の要

 

夢二絵の和服姿の女性立つそこより入るは風韻の道

 

一本の傘を杖とし佇める歌の聖は何を詠はむ

 

まみどりの森にかこまれ緑なす水面をゆらす鳥々の声

 

陽の光気持ち良き日はわが身にも発散しゆく何ものかある

 

 

 

 


秋山周子歌集『二十三階の窓』

定価:2,500円(税別)

判型:四六判上製カバー装

頁数:192頁

ISBN 978-4-86629-219-9

 

現代女性歌人叢書 25

 

第三歌集!

 

晴れわたった蒼空、

曇る空、雨の空、雪の空、月がかがやく夜の空。

毎日同じようで違っている空。

その下にひろがる街並みに、

人々の暮しがあるのだ。

 

二十三階の窓辺にひとりことばを紡ぐ。

やわらかな詩魂がつつむ。

 

 

 

 

生きてあらば晴耕雨読の耕す日音きしませた芝刈りおらん

 

あの春はさくらばかりを追いしかな 箕面、大仙、長谷寺、吉野

 

シリウスは耀き居待ちの月は照る友はこの世のどこにもおらず

 

超高層の屋上に見る東京はビル、ビル、川、海 人影あらず

 

一年に一度か二度の凪という空はみずいろ海はそらいろ

 

 

 

 


松森邦昭歌集『脳の海』

定価:2,500円(税別)

判型:四六判上製カバー装

頁数:162頁

ISBN978-4-86629-216-8

 

第二歌集!

 

季節のめぐりとともに在る。

旅とともに心の揺らぎが在る。

自らを語らず、老いを語らず、日常を嘆かずに。

脳外科医であるこの歌人の眼差しは

深い慈愛そのものだ。

 

 

 

転べども慈姑(くわい)の角(つの)には力あり寄るなさわるな一人でたつと

 

夏至の宵遊女すらりと立つごとくあやめは白き化粧うかして

 

皮下注射つまみし皮膚の伝え来るだるさ辛さや心の叫び

 

地球儀に絹のハンカチかけしごと海原おおう秋のたか雲

 

光あび春寒沼に亀ありて首ながながと花ながめおり

 

 


中平武子歌集『しらべは空に』

版型:四六判上製カバー装

頁数:234頁

定価:2,500円(税別)

ISBN 978-4-86629-180-2

 

第二歌集!

 

中平さんの浪漫的な想像力は、

橅の木に向かえば橅の内なる音とつながり、

日に輝く菜の花の中ではひとひらの菜の花となるというように、

身体変幻のしらべを強く響かせる。

ーーーーーーーーーーーーーーー日高堯子跋より

 

 

ぶなの木のうちなる音を聞かんとし橅は吾とひとつになりぬ

 

菜の花のひとひら一片日を受けて輝く朝はわれも菜の花

 

皆おなじ答を言ふと詰る声 死にたき人は深夜の電話に

 

人との距離保つに雀に似てゐるや ためらひがちに友の手をとる

 

ここに座しともに桜を仰ぎたる時もどしをり夕暮の園

 

 


仲西正子歌集『まほら浦添』

判型:四六判上製カバー装

頁数:220頁

定価:2,500円(税別)

ISBN978-4-86629-179-6

師・桃原邑子の志を継ぐというよりもっと自然に

沖縄での暮らしに根ざした詠わずにはいられないものが

仲西さんに沖縄や家族をうたわせている。

それは、意外なほどのスケールで、

世界や歴史を俯瞰させる力をもっている。

そのことを私は尊いと思う。

 

帯文ー久我田鶴子

 

 

 

 

                  たま

樹によれば樹、地に臥せば地の命なり 弾はずれて来て我を生みし母

 

ブラジルへ渡れず父はこの島で甘蔗の穂花の煌めきを見て

 

戦さ世に生まれし命も記名され平和の礎かなしき記録

              しーしうがん

十五夜におびき出されし男等が獅子御願の円陣をくむ

                      

産土を踏みし小さき黄の靴を手のひらに置き光に出だす

 

 


筒井幸子歌集『ならやまの月』

定価:2500円(税別)

判型:四六判上製カバー装

頁数:182頁

ISBN 978-4-86629-166-6

ふるさとと呼ぶにはあはき東京をすぎてゆくとき橋のきらめく

 

晩年、先師前登志夫はよく言っていた。

「詠み人知らずの趣がいい」とー。

折々は古典の世界や師の言葉に立ち返り、

これからも筒井幸子さんの詠み続けるであろう。

自然との言問いを通して言葉を紡ぐこと、

それは自らの帰る場所を知ることに他ならない。

           /遠山利子「解説」より

 

 

 

春日野に群れゐる濡れし眼のうなゐ乙女が秋をつれきぬ

 

青草の宮址の空にひばりあがり歩いても歩いてもたどり着けない

 

塩壺にしほが減りゆく毎日を塩を充たしてまた最初から

 

木枯しの夕べ空ゆく黄の蝶を見たといふ子の手をひき帰る

 

とろとろと小豆煮てゐるいちにちの箸でつまめばくづるるわたし

 

 

 

 


中西由起子歌集『夏燕』

判型:四六判上製カバー装

頁数:180頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-140-6

《現代女性歌人叢書 21》

 

光まばゆい海の砂浜。

やわらかく起伏した土手道。

都市の喧騒のなかのしじま。

そんな場所にひっそりと置き忘れた歌があった。

 

さびしい心に似つかわしいのは

透明な響きだ。

 

『夏燕』より5首

やわらかな曙やさしき夕茜 天は静かな姉妹を生みぬ

 

枝の間に青き空見えさびしさの芯となりゆく花の老木

 

夏燕ひとたび行けばもう来ずと思う駅舎を低く飛びおり

 

たぶんどこかで繋がりおらん心臓とトマト畑の鋏

の音と

 

落武者のわれかもしれず遠望の城が小さな鳥影となる

 

 


小林優子歌集『二月の桜』

小林優子第二歌集『二月の桜』

 

北の大地に棲む。

ここが故郷だ。

寒々とした夕陽に向かって、

あるいは降り積もる雪を踏みしめながら、

こころに温めてきた思いを

そっと定型の器に載せる。

 

 

『二月の桜』より5首

 

樹々に積む雪に夕陽の沁み入れば北のふるさと離れがたかり

 

枝々にひよどりあつめあかるめる ああ、あれはそう二月の桜

 

海見えぬ町に生まれて海のある町に生まれし男と逢いき

 

だんまりの石を濡らして夏の雨とおり過ぎたち夕かたむけて

 

わが刃にするどく傷を入れられて風の中なる一枚の魚

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:172頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-121-5

 

 

 


野田恵美子歌集『風のあしあと』

潮騒のごとき囀りつばくろの葦の塒に吸はれて止みぬ

離れ住む母の買物携帯に訊きつつ選ぶ秋のブラウス

潮風に吹き寄せらるる花のごとかもめ群れゐる知多の渚に

胸底の埋め火かもとシクラメン夕べの窓に緋の色震ふ

氷の色の蒼空映る湖にかそかなさざ波水鳥の影

安らかに笑む母の面苦行より解き放されし尼僧のごとく

 

鳥に関わる知識と情愛が実に深く、鳥をモチーフにした作品が主流になっています。繊細でナイーブな歌は作者の人柄と相通じるものがあり、純粋な思いが伝わってきます。(青木陽子・帯文)

 

A5版上製カバー装丁 2600円税別


西村慶子歌集『むさしあぶみ』

しろじろと遠き桜のつらなりを眺めをりしにはやもみどりに

おのれひとりの時もつ夫かしづかなる目を向けてゐる盆踊りの輪

うすべにの小花が茎を巻きのぼるもぢづりかなし芝にはなやぐ

あてもなきあゆみたのしみ里山にあくがれてゐる童女さながら

時をかけ聴かうと耳に手を添へて悲しきかたちのわれとなりゐつ

 

過ぎ去っていった歳月のなかで、陰翳をもってよみがえる、夫の、友の声、そして草花。目を閉じて、深く静かにこころをめぐらせれば、かれらは歌のすがたとなって現れてくる。

那須愛子歌集『希求はるか』

海は母 地球に生命育みつつ四十億年すべて許し来

一生われを守ると君が約束のふいに聞こえてあとは海鳴り

まだ暗き街へ仕事に行く吾娘へマヤ人も飲みしココアを沸かす

震へながらマイクを握る戦争を厭ひし母の影に押されて

人間は水と恋とで出来てゐるはるか原初の平和希求す

 

 

繰り返し詠われる青の歌、海の歌から、人間の根源に立ち返って思索をしながら生きている那須さんの生き方、歌への姿勢を感じました。         木村雅子・序より

南條暁美『往き帰る』

坂道の角を曲がれば弟の生れし家なり馬酔木が匂ふ

ページ繰る記憶残して返り来ず亡き弟に貸したる詩集

六歳のわが目に被爆の天主堂煉瓦の浮遊してゆくごとし

梯子のびて若き男が赤き玉を拭きはじめたり風の交差点

好きな場所選んで人は皆ゴビに葬られるとふ広大な墓所

終電の遠く過ぎゆく音のして生きる日々とは往き帰ること

 

「旅が私の人生そのもの」と南條さんはいう。その旅とは、自らの来歴をたどる旅であり、歴史を遡る旅である。さらには人間の生死が見えわたるような場所への旅であろう。                 

 

小林幸子・解説より

 四六版上製カバー装 2500円・税別

永谷理一郎『忘れ物を取りに帰ろう』

忘れ物を取りに帰ろう 敗戦後の無限に開けた青空のメモを

原爆が昭和史を分けた アメリカではエンゼルと呼ぶサタンの花束

銀座にはママたちの夢が棲んでいた 沈んで浮いて消えた夢たち

メビウスの軌道がそっと用意され 平和の顔した戦争がくる

絆には黒い絆もあるという 原発進めた絆くろぐろ 

 

反骨の気概とやわらかな心が凝視する世界は暗か明か?

この限りあるいのちを生きる者の眼に時代はどう映るのか?

するどい批評性をたたえた歌の数々と明快な論の展開。

八十五歳、人生の忘れ物を探し続ける颯爽とした口語短歌の旅人。

 

四六版上製カバー装 1500円・税別

 

中村雅子歌集『雪に従ふ』

身めぐりを踏みかためをりし肢萎えの犬のいばりが新雪に濃く
逃げられぬまま水の星に身をゆだね雪にけぶれる原発みをり
ともなふは風ばかりにてたよりなく足のしづまぬ凍てし雪ふむ
しもづきに入りて這ひずり草ひけど終らぬがまま雪に埋もるる
小樽運河の昏みにゆらぐ斜の灯に浮かび乱るる雪のはなやぎ

 

どうしようとも雪は雪

だが北の大地を埋める白は

幻白さながら心に残る

どのように雪に従うか

その応えは歌のなかにある

 

福田龍生 帯文より

四六判上製カバー装 2500円・税別

野々村學歌集『霞町七番地』

うぐいすの声の聞こえてふりむけばテレビの中の六月の森

遠雷のやがてとどろに近づきて光る投網を幾たびも打つ

しぐれ来て高野の山のほのぐらき女人堂よりタクシーを呼ぶ

ひたひたと日の傾けばこの街に補聴器店のまたひとつ増ゆ

縁側に新聞読むと妻に告げあとは静かな梅雨の水底

 

昭和十二年「霞町七番地」に生を受けた一つの命が、戦争を挟んで生きて来た、人生の記録としての短歌。対象を決して突き放すことなく、優しく肯定的に見守る温もりが、この歌集の最大の魅力だろう。谷岡亜紀•解説より

四六判上製カバー装 2500円•税別

中澤百合子歌集『青き麦なり』

この朝を始発電車の音を聞く醒めずに逝きし母のその刻

幼子の黄の傘二つ通り過ぎまた静かなり朝の坂道

海辺より道は始まる 糸杉の並木の果ての白き教会

少年は青き麦なり すんすんと母を越えたり喉仏見ゆ

父を恋う一日なりけり秋は石蕗の黄花ぬらして止まず

 

新築の家の二世帯用表札、幼子の黄の傘、少女らの他愛のないおしゃべり、閉鎖されたピアノ教室等々、どこの街にもある住民の日常生活のひとこまであろうが、中澤さんの観察に掛かると、それらが俄かに生き生きとした生命観を帯びてくる。 三井修•跋より

 

四六判上製カバー装丁 2500円•税別

 

 

 

長井隆子歌集『ミモザの下に』

残る生を心つくして生きたしと思ひ深むるミモザの下に

共に見る人無きはさびし又すがし出て来てモネの睡蓮の前

諦めと変るこころも詮なきか水撒くサンダルが日ざしに熱し

にぎはひし宴のあとをいたく暗きわが顔電車の窓に映れり

体重き今宵は早くい寝むとす新しき花柄のシーツを敷きて

 

四六判上製カバー装 2500円•税別

北村芙沙子•中川禮子•結城文訳 ウィリアムIエリオット監修『茂吉のプリズム』

『赤光』Shakkō  Red Light

 

かがまりて見つつかなしもしみじみと水湧き()居れば砂うごくかな

crouching 

I observe the sand moving

as the water

springs up

feeling its sadness deeply

 

kagamarite

mitsutsu kanashi mo

shimijimi to

mizu waki ore ba

suna ugoku kana

 

 

死にしづむ火山のうへにわが母の乳汁(ちしる)の色のみづ見ゆるかな

in a volcano,

quiet as death,

I can see the water­

its color,

my mother’s breast

 

shi ni shizumu

kazan no ue ni

waga haha no

chishiru no iro no

mizu miyuru kana

 

四六判並製カバー装 2000円•税別

電子書籍版…1000円

 

title "Prism of Mokichi"

written by Mokichi Saito

translated by Kitamura FusaKo & Yuki Aya & Reiko Nakagawa & William Elliott

 

Mokichi Saito is the most famous tanka poet in Japan. 

He was born at 100 years ago, and he made the foundation of Japanese  modern tanka poetry. 

 

We have translated into English his first poem book.

 

2160yen

e-book…¥1000

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長嶺元久歌集『カルテ棚』

■第10回筑紫歌壇賞受賞!

「わたくしを診た医者はみな死にました」宣らす翁を畏みて診る

聴診器はづせば聞こゆクックーと軒下の樫に飛び来たるらし

待機するAEDと語りたり「今日も出番がなくて良かつたね」

診療のはじめに交はす「こんにちは」そに病む人の塩梅を知る

 

医師にして優れた歌人は多い。本書の長嶺元久氏も内科医として医業に励みつつ熱心に作歌を続けてきた。長嶺氏の歌集『カルテ棚』の大きな特色は、来院した患者の歌の数の多いことと思う。そして、それらの作品が、患者に対する愛情に満ちていることはもちろん、温かいユーモアを醸していることに、読者は快い読後感を味わうであろう。作者のヒューマンな人柄のたまものに違いない。伊藤一彦

 

A5判上製カバー装 2730円•税込

 

梛野かおる歌集『Largo』

シロフォンの音色が叩く冬の窓つたえていない言葉を思う

白桔梗かすかに揺れて思い出は水の匂いのなかにあらわる

指先で伝えていたよ受け止めていたさと風舞う高架のホーム

すれ違う人の鞄がぶつかって沈めたはずの悲しみは来る

永遠の少し手前のこのあたり同じ角度に背もたれ倒す

 

コミュニケーションをはかることは日常の言葉によってできるが、心に横たわる思いを伝えるための言葉は詩や歌の言葉、すなわち文学によってしか表せない。(三枝浩樹•栞文より)

 

自らの思いを大切に、言葉を匠につないで歌っている。著者の声は胸深く届く。そして、直感での把握によって歌の広がりを得ている。(中川佐和子•栞文より)

 

四六判上製カバー装 2625円•税込

野村二郎歌集『二月の雨』

冬眠の蛙をめさます程に降れ二月の雨を湯船に聞くも

雪除けて切りいる杉の株の面(おも)湯気立ち匂う生木と匂う

霞こめる葦原なめてみどり立つ雨蕭々(しょうしょう)と降りつづくなか

車止め秋田杉林見ておれば羚羊尾を振り笹むらに入る

 

『二月の雨』に詠われている作品は、生きとし生けるものたちを、あたたかく見つめている作者の世界観をひそやかに顕たしめている一冊である。

 

四六判並製カバー装 1800円•税込

 

西澤惠子歌集『各駅停車』

留守宅の門扉のわきに犬槙が衛兵のごとまっすぐに立つ

一人降り二人降りして初夏の午後くつろぎ漂う各駅停車

娘との喧嘩の後のショッピング拘りつつも連れだって行く

亡き父が庭隅に植えし山紅葉巨木となりて影を作れり

橋の上にシャッターチャンスを持つ人の肩に桜の花びらの散る

 

槙は隙間なく葉を茂らせ、枝を伸ばす。

まさに衛兵のごとくまっすぐに立ち、内の様子は隠れて見えなくする。 晋樹隆彦•序より

 

四六判上製カバー装 2625円•税込

 

 

中沢明子歌集『花豆のうた』

カナカナの声脳天に落ちてきて生きるというはこんなにひとり

小春日和の縁のすみにはいつの日か選り残したる母のいんげん

鹿島槍登る約束きみはして私は今も待ち続けている

細長き爪は父より受け継ぎぬ押さえきれない感情なども

 

八ヶ岳南麗は豊かな自然

そこに暮らす生活のなかから

うたが生まれた

 

四六版並製カバー装 2010円•税込

 

 

中嶋ふじえ歌集『白い百合』

あやまたず過たず夫よ生きてほし小暗き垣根まがりてゆきぬ

寝不足の汚れし顔を俯けて庭の雑草むしりつづける

大声をあげて泣きたきに堪えている闇に間近くなにかが迫る

 

四六版上製カバー装 2730円•税込

 

中島彰代歌集『塩をもすこし』

大和野の陽につつまれて待ちをればちやんちやん祭りの列近づきぬ

我が内に母は生きいて厨辺に問へば応へて塩をもすこし

 

家族中心に中島彰代さんはいる。温かな湯気を立てながら、夫や子や孫たちを抱きしめる。

そこが、古都奈良であっても東京であっても、ニューヨークやヨハネスブルグであっても変わらない。

久我田鶴子跋文より

 

46版上製カバー装 2,520円•税込

 

 

中西敏子歌集『天のみづおと』

飛魚は空とぶ形に売られをり夕暮れどきの小さき市場

この春のいのち終へたる花びらを川はやさしく彼岸へ送る

惹かれたる薩摩切子の藍色はたとへば死後に見る空の色

 

中西敏子さんの歌に良質の透明感があるのは、その人生を誠実に懸命に生きてきた証が伝わってくるからである。

歌から現れてくるのは、どこか悠然としたところがあり、作品にも意志の強い自立した女性像がある。

山名康郎 跋より

四六版上製 2625円税込

 

永冶智恵子歌集『日だまりに添う』

永冶さんは東京農大成人学校以来もう二十年近く、熱心に世田谷の短歌サークルに通って来られている。

その永冶さんが金婚式を機に、初めての歌集を出された。

定年を迎えし夫とはや十年小春日和の日だまりに添う

『日だまりに添う』は、人生の小春日和にやさしくまどろむ夫婦愛の歌集である。谷岡亜紀(帯文より)

 

四六版並製カバー装 1500円•税込

 

 

 

中島裕介歌集『Starving Stargazer』

ベツレヘムに導かれても東方で妻らは餓える天動説者
Staring at the star of Bethlehem, she's a starving stargazer!

共生のための矯正の、嬌声のクレゾールに包まれている
The more I dose the dog with a drug, the less my drive to dive is ... Really?

 

音と音、意味と意味、イメージとイメージの響き合いを味わえばそれでよいのではないか。そう考えたら、たちまち楽しくなってきた。 栗木京子帯文より

 

四六判変形箱入り 2000円•税別

title Starving Stargazer 

written by Yusuke Nakajima

2160yen

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