野村二郎歌集『二月の雨』

冬眠の蛙をめさます程に降れ二月の雨を湯船に聞くも

雪除けて切りいる杉の株の面(おも)湯気立ち匂う生木と匂う

霞こめる葦原なめてみどり立つ雨蕭々(しょうしょう)と降りつづくなか

車止め秋田杉林見ておれば羚羊尾を振り笹むらに入る

 

『二月の雨』に詠われている作品は、生きとし生けるものたちを、あたたかく見つめている作者の世界観をひそやかに顕たしめている一冊である。

 

四六判並製カバー装 1800円•税込