中西由起子歌集『夏燕』

判型:四六判上製カバー装

頁数:180頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-140-6

《現代女性歌人叢書 21》

 

光まばゆい海の砂浜。

やわらかく起伏した土手道。

都市の喧騒のなかのしじま。

そんな場所にひっそりと置き忘れた歌があった。

 

さびしい心に似つかわしいのは

透明な響きだ。

 

『夏燕』より5首

やわらかな曙やさしき夕茜 天は静かな姉妹を生みぬ

 

枝の間に青き空見えさびしさの芯となりゆく花の老木

 

夏燕ひとたび行けばもう来ずと思う駅舎を低く飛びおり

 

たぶんどこかで繋がりおらん心臓とトマト畑の鋏

の音と

 

落武者のわれかもしれず遠望の城が小さな鳥影となる