渡邊千紗子歌集『野の花』

庭土をわたしの裡を木々の葉をまづかに濡らせり初あきの雨
かすかなる音にふり向けば地に転ぶ椿の紅の未だ鮮し
ご詠歌を唄ふ鈴の音も揃はせて心ひとつになりしひと時
かくのごと終はありたし真白なる沙羅の花落つ清らなるまま
子に孫に継がれゆくらむこの寺も花咲く木々も吾らの思ひも
 
花鳥風月、山河草木すべてが、渡邊さんの自然と一体化していて順直な作品となっている。
より美しく洗練された品格と相俟って、風に光に、山に、その瑞々しさは雅びやかといってもよいだろう。

 

勝山一美(序文より)

四六判上製カバー装 2500円•税別


 

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渡辺知英子歌集『無垢の音』

朝光の凍てし大気を融かすごと無垢なる音に鶴翔びゆけり

見上げれば桜花の暈におおわれる影をもたない午後の空間

虫の音も一音となれる静か夜に子はとつとつと未来を語る

白木蓮の限りの白を愛しむに錆いろを深めゆくものもあり

水溜りに花をこぼしてゆく風は誰が影ならん春近くして

 

一巻を通して飾らない日常から著者の生きる姿勢が見えてくる。その内面の深い思いが、時に強く、時に静かな認識として、如実に表現され、その内実を窺い知ることができる。

鈴木諄三•序より

 

2400円•税別

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渡辺美智子歌集『老鶯のソロ』

おお何と鮮やかな老鶯のソロあんずの茂みがかすかに動いた

千鳥舞ふ春用ショールすべらせて金婚式の被写体となる

蜜蜂の翅の重さに揺さぶられぶんぶん眠たき菜の花の午後

メダカ模様の夏帯締めてゆく会議水切瓦の白き図書館

輪になつて座る教室よその子も孫もわたしを渡辺さんと呼ぶ

土まみれの軍手のうへにほこほことねむる子猫は胡瓜のにほひ

 

築地正子に「いまが詠みざかり」と評された作者である。自由自在である。多彩である。盛り沢山である。そして何より自然体である。そんな作者の自画像が「老鶯のソロ」なのだろう。本歌集中の歌に対する自負なのだろうと読んだ。佐佐木幸綱

 

A5判上製カバー装 2500円•税別

 

 

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若松輝峰歌集『酔候』

 

川螻蛄(げら)の跳ぶ水面(みなも)は茜色となり母の育ちし村暮れむとす
字を縦に書かざる国の少年の手を執り「春(スプリング)」と書かせてやりぬ
燐寸ほどの膨らみ見せて危ふげに赤蕪は立ち風に逆らふ
白ワインのコルクを抜きて祝ふべき何一つなくグラス差し上ぐ
曲肱(きょくこう)の楽しみの域にはあらざれど醒めては飲み呑みては眠る

 

 

若松さんは異能の人だとつくづく思う。書道で身につけてきた「こころを込めて対象に向う」姿勢。うたを貫くものは、終始変わらぬ反骨の精神であり、歌集『酔候』は、まつろわぬ魂の軌跡なのだ。  真鍋正男•跋より

 

四六判上製カバー装 2600円•税抜

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渡辺けい子歌集『西明り』

若葉にも似る輝きを母われに与えて少年己は知らず

てのひらに木の芽をひろげポンと打つ遠く住む子に聞こえるやうに

ゆくりなく出会ひて夫となりし君の言葉は或日のわれのこえかも

美しき言葉を話す人にあれとまづ言ひましき嫁となるわれに

老いの果てのしばしを霧の晴るるごと母に確かなることば戻り来

ままならぬ一生もよろしと九十二歳の母が今年の桜を仰ぐ

 

西伊豆の風土を詠んだ歌、

また初期の思春期の子をもつ母親の心情を詠む歌など、

佳品も少なくない。屈折した子の心に寄りそうような

母親の姿が、そのまま現在の著者に重なり

私にはインショウぶかいものだった。

温井松代•序より

 

46判上製カバー装 2625円•税込

 

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渡辺松男歌集『蝶』(再版)

=完売となりました=

=第46回迢空賞受賞= 

電子書籍版は継続販売しております=

 

わが感覚すすき野のへにありしかどこのかろさ死後のごとく気づけり

吾ゆ耳の離れてぞあるそのなかにこほろぎの鳴く必死のみゆる

うつうつとせるなかにある華やぎは地中の蛇のうへ歩くかも

ひまはりの種テーブルにあふれさせまぶしいぢやないかきみは癌なのに

 

孤独なけものどもが跳梁跋扈する

異界の住民どもが拍手喝采する

 

詩歌の時空を自在に遡行し、飛翔し続ける感性の冴え

それが「松男うたワールド」!

 

 

四六版上製カバー装 二七三〇円•税込

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渡英子著『メロディアの笛』

=第10回日本歌人クラブ出版賞受賞!=

 

白秋が生きた時代とは何だったのか?

豊富な資料を駆使し、その時代を体感しつつ考察した精緻にして創造的な白秋論!

 

「日本語のひびきや、愛唱性に富むリズムに耳を傾け身を任せる愉悦は、白秋の詩章が与えてくれる恩寵である。はなやかな哀韻があってもいい。」(あとがき」より)

 

四六版上製カバー装 2835円•税込

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渡辺松男歌集『蝶』

電子書籍版も販売しております=

 

わが感覚すすき野のへにありしかどこのかろさ死後のごとく気づけり

吾ゆ耳の離れてぞあるそのなかにこほろぎの鳴く必死のみゆる

うつうつとせるなかにある華やぎは地中の蛇のうへ歩くかも

ひまはりの種テーブルにあふれさせまぶしいぢやないかきみは癌なのに

 

 

孤独なけものどもが跳梁跋扈する

異界の住民どもが拍手喝采する

 

詩歌の時空を自在に遡行し、飛翔し続ける感性の冴え

それが「松男うたワールド」!

 

四六版上製カバー装 二七三〇円•税込

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渡辺松男歌集『〈空き〉部屋』

父も母もだれもまさぬにひかり満ちせつなかりしよ いえ ただ 花野

膝を折り休みにつかんとする木々のけはいあり淡く雨のふる夜

滅多に話さざる叔父が泣き骨壺に入らざる骨の父を砕きつ

立てるまま骨壺を抱くわが耳にとどかぬところに青嵐巻く

 

アノマトペ、比喩、アニマを駆使し、内包する

悲しみ、不安、恐れを

独自の素材を媒介にして

形象化する。

 

四六版上製カバー装 2625円•税込

 

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