渡辺知英子歌集『無垢の音』

朝光の凍てし大気を融かすごと無垢なる音に鶴翔びゆけり

見上げれば桜花の暈におおわれる影をもたない午後の空間

虫の音も一音となれる静か夜に子はとつとつと未来を語る

白木蓮の限りの白を愛しむに錆いろを深めゆくものもあり

水溜りに花をこぼしてゆく風は誰が影ならん春近くして

 

一巻を通して飾らない日常から著者の生きる姿勢が見えてくる。その内面の深い思いが、時に強く、時に静かな認識として、如実に表現され、その内実を窺い知ることができる。

鈴木諄三•序より

 

2400円•税別