定価:2,750円(税込)
判型:四六判上製カバー装
頁数:152頁
ISBN978-4-8629-382-0
送料:160円
第六歌集
いつだったか、パシフィック・ホテルがまだ湘南の海に美しい姿を保っていた頃、国道134号線の松並木で正月の箱根駅伝の応援をした帰りに、最上階の展望レストランで、一度だけ家族五人で食事をしたことがあった。まだ息子は幼く、両親も健在だった。眼科に、光る海と烏帽子岩。左手に江の島と三浦半島。正面のはるか沖に伊豆大島。そして右手に富士山と伊豆半島が、はるばると見渡せた。よく晴れた、穏やかな冬の午後だった。
その両親ともすでにこの世になく、就職した息子は今、家族四人でアメリカのデトロイト郊外に暮らしている。時は夢のように流れ去っていった。
<あとがき>より
<引用五首>
徐々に徐々に父はおかしくなりゆきて描きかけの裸婦スケッチ残る
忘れる事は救いであるか貝殻を拾うがごとく歌を拾えり
感情を失いてのち老い人の顔は大悲の顔に近づく
精神もともに燃え尽きゆきたるか火葬場にいま西日及べり
始まりの光は朝の窓に差しやがて静かに目覚める人よ