服部秀星歌集『天球の音楽』

定価:2,750円(税込)

判型:四六判上製カバー装

頁数:226頁

ISBN978-4-86629-373-8

第一歌集

 

タイ国の窓から覗く灯り見ゆ異国の地にて仲間働く

 

鋭角に鳥が翔びたつ元日のくらき庭より朝陽のなかへ

 

秋天の東京駅を描きにゆくオフィスに人の仕事する午後

 

大手食品会社の人事部に勤務、監査役までつとめた時代の作から、退職して、家庭人さらには社会人として自由な日々を過ごす時代の作まで、長い期間にわたる幅広い人生の時間をうたった一冊。四季・自然・社会・家族・家庭を、豊かな好奇心、奥深い感性でうたう一首一首に作者のなみなみならぬ才能を読む。新宿の朝日カルチャーセンターで出逢った才能である。   <帯文 佐佐木幸綱>

 

 

<引用五首>

 

気まぐれに角をまがれば突然の空にひろがる満開の桜(はな)

 

静かにも寝息をたてる妻のいて幸福(しあわせ)とはこういうことか

 

うす桃の辛夷の花を写しいてかぜに揺るれば風を描きたし

 

天球の音楽地球(テラ)にふりそそぎ生命(いのち)生ましむ 愛のごとくに

 

陽の移り座れる位置の翳りゆけば筆持つ指が冷たくなりぬ