玉井まり衣歌集『しろのせいぶつ』

定価:2,200円(税込)

判型:四六判並製カバー装

頁数:120頁

ISBN978-4-86629-298-4

 

「静物」と言ふ名のうつはをじつとみるほんとうにさうかうたがつてゐる

 

 

この歌集の歌達は、妙にたどたどしく、妙に歪んていて、そのくに妙にシンプルで澄んでいる。

それは、対象であれ、それに投影される自分であれ、謎は謎として受け入れようとする著者の誠実さによる。-----森本平「解説」より

 

 

 

『しろのせいぶつ』より五首

 

プラスチックの光がキレイと君は言ふ 背骨は少し傾けてゐる

 

しづかなるガラスの向かふに置かれてる歪な壺にさはれない指

 

眼の前を二本の素足が歩いてく ひざの裏から春の産む少女

 

手や足やその他の私を撮つてゐるアルバムに撮影者はいない

 

凍る夜にマスクのあなた話してる喉は抉れた顔の続きだ