小林喜美子歌集『久三郎の笛』

判型:四六判上製カバー装

頁数:172頁

定価:2,400円(税別)

ISBN978-4-86629-189-5

 

葛藤と親愛・・・・

距離を置いてきた命終に向かう父、

生後すぐに別れ既に世にない母、

二人への思いを中心に能登の風土の中で歌われる心の歴史。

自然と風景、生活を清新な言葉で

掬いとる歌群には繊細な心の息つぎがある。

 

 

 

 

ひとふさのあをき胡桃を山苞に夫が採り来ぬあをき胡桃を

 

ときとして貰はれゆきし妹も去りし母らも羨しみたりし

 

降る雪はうちへうちへと降りつもり囲炉裏のそばに祖父母座らす

 

灰色の煙たなびき風上に野焼きの人の動く腕見ゆ

 

負の時に言葉はあふれあふれ来てどうしようなく書き留むるなり