三平忠宏歌集『館山』

判型:四六判並製カバー装

頁数:170頁

定価:2,000円(税別)

ISBN978-4-86629-170-3

 

房総の館山生れ。ひとたびは故郷を出て、

職を終えて帰郷。

海山のまばゆい陽光。一揆もあった。

終戦間際の緊迫感も体験した。

歌を詠むことで手繰り寄せられる

忘却の時間は、かなしみの形象だ。

安房びとの心は、敬虔な伝承者のように

歴史と社会と風景に向き合う。

 

 

明治より首都防衛の要塞を築きゐしとぞ東京湾の口

 

ひとつづつ枇杷に袋を被するは百年前の安房にて始めぬ

 

雲間より抜けし冬陽は大島に溶接アークを浴びせるごとし

 

燃え尽きし柴燈の燠を丸太にて叩きならせり火渡りの道

 

海に臨み空気の澄める館山は結核患者の療養地なりき