坪内稔典歌集『雲の寄る日』

判型:A5判変型上製カバー装

頁数:146頁

定価:2400円(税別)

ISBN978-4-86629-165-9

 

 

いつも傍らに誰かいる。河馬が、女性が、自分という他者が。そっと、やさしく、ささやきかけるように歌を詠む。真剣に。寂しくはない。底抜けに明るく楽しい、謎めいた世界の住人へ。

さあ、ひととき言葉すら忘れて、風の吹くままにまかせて歌おう。

 

 

 

ねんてんという俳人がころがってあの冬瓜になった、おそらく

 

河馬だっておしゃれなんだよころがって秋の日差しのかたまりになる

 

応仁の乱のさなかの三月の桜のつぼみ、みたいだ、あなた

 

水張ると田んぼに空がすぐ戻るそんな感じだあいつのキスは

 

草を引く老後を夢にしていたがむしろだんだん草になりたい