田中薫歌集『土星蝕』

定価:2500円(税別)

判型:四六判上製カバー装

頁数:234頁

ISBN978-4-86629-143-7

 

画帖には二十歳の君が描きたる二十歳の私パステル褪せて

 

新木場の荒き潮を眺めをり三十年ともに生き来し人と

 

トマト赫く熟れゐる畑の道をゆく君知らざりし日には戻れず

 

 「人生」は長い時間の橋をわたって見なければ見えない。

「人生」は立ち止まることもできないし、後戻りもできない。

そんな当たり前のことを、この歌集はあらためて実感させてくれる。

「人生」を真面目に生き、「人生」を正面からうたいつづけてきた作者の歌集だからこそと納得させられる。ー佐佐木幸綱

 

 

 

永遠の動体として静止するドガの踊子にも世紀明く

 

昏い空の底なき邃さ見えてくる打上花火の華ひらくとき

 

会ひみてののちの心はいつしんに三十余年恋ひつつ憎む

 

ヘッセの指が殺めしパルテベニヒカゲ 愛執は標本の姿して

 

断捨離の初めの贄としてピアノ我が家を二百キロ軽くせり