日高堯子歌集『空目の秋』

第9歌集!

 

生命のよどみなく流れゆく

川の岸辺に、もう幾百年

佇んでいたことだろう。

本当は川は在ったか。

詩的幻想界を彷徨いつつ、

少しずつ生死の重荷を

解きほぐしていく。

削落としてやまない

日常と非日常とのはざまに、

母なる歌の沃野を見た。

 

『空目の秋』より5首

 

日だまりはしろい座布団ねむりつつ母とながされゆく春の川

 

絹ごしか木綿豆腐か しらはだのなぜかはかなしガーゼの布目

 

「わたしはいつ死ぬのかしら」ときく母に「あしたよ」といふ あしたは光

 

羽虫入る感触ありて胸もとをのぞけば夏のしづかな乳房

 

しろじろと歳月を空にひろげつつ大伯母のやうな雪ふりきたり

 

 

判型:四六判上製カバー装

定価:2500円(税別)

頁数:208頁

ISBN 978-4-86629-127-7