大朝暁子歌集『辰砂の月』

 

円熟の第三歌集!

 

欠けゆきて極まる月の辰砂いろ冬天点す熾火のごとし

 

 

きびしい北の風土。

人間とけだものとの共棲する場所。

歌を詠みきって去る。

命を生ききって去る。

老いともにすべての生と死の意味を

思念しながら、ひそかに。

 

『辰砂の月』より5首

からふと   しすか

樺太の敷香のまちの「専賣局」地図に見つわが生れし所

 

三角の頭を持つ山があらはるる木々枯れ初むる街空のはて

 

狐でも出よと曲がれば狐をりいたく痩せをり尾を垂らしをり

 

母亡くて聞けばしみじみ意味深し「母なる大地」「母なる大河」

 

零下二十度寒さの底とふ日にあふぐ橙ぬくき十六夜の月

 

 

判型:46判上製カバー装

頁数:152頁

定価:2400円(税別)

ISBN 978-4-86629-116-1