喜屋武岬 干瀬の白波さわぎ立つ逝きたる者のいのちの果てに
沖縄を歌う。戦で不条理に散っていったあまたの死者の魂魄を歌い継ぐ。志の文学たるこの定型に渾身の力をこめて、怒り叫び、拳を上げる。
そんなある日のこと――。
作者は青海の彼方に燦然と輝くまぼろしの琉球国を見た。
『喜屋武岬』より5首
寄せ返す波濤の傾りの春めきて死者も唄うべし浜下りのうた
海鳴りにいざなわれしは遠き日のさびしき心 末枯れの岬
野辺山の牧場の牛の目の奥に二十歳の吾の麦わら帽子
愛憎が憎しみの棘に変わる時たとえば蝶になりえぬ毛虫
つま
摩文仁野に夫奪われし吾が母のまぐわう事無き七十余年
判型:A5判上製カバー装
頁数:196頁
定価:2700円(税別)
ISBN 978-4-8669-118-5