押山千恵子歌集『シタール、響る』

                             

シタールを聴きしはいつか藍深き空のいずこか響る

ると思いつ

 

どこからか、たしかに聴こえる、その音色。

はるか北インドの撥弦楽器の、胸に沁み入る澄んだ調べ。

その調べのように、白い記憶のように、やわらかく。

北海道の大地に暮らしが根づき、歌が根つくまでの歳月。

 

『シタール、響る』より5首

 

ぼろぼろになりしと現し身を嘆きたる父のことばが淡雪となる

 

窓を打つ雷雨にめざめ読みつげる韻律論は雫して来ぬ

 

永久凍土に眠りいし幼きマンモスのCT画像の四肢小さきこと

 

列島はさびしき弧にて寒気団せせまればいよよ夢に屈まる

 

                     蝦夷梟くるりと首を旋らせて春の隠れ処探さんとする

 

四六判上製カバー装 2500円(税別)