古川典子歌集『鳥の時間』

 

この坂はきつと最後にのぼる坂けふホスピスの予約にのぼる

 

突然、予告された近い未来の死。

そこから振り返るときの来し方の日日のやさしさ、いとおしさ。

さりげない時間の積み重ねのかけがえのなさを

この歌集は私たちに教えてくれるであろう。

馬場明徳 帯文より

 

『鳥の時間』より5首

                        と を

「たつた一人救援列車に乗つたげなあん子はまあだ十歳やつたとよ」

 

金毘羅山が大綱まはしゐるやうな虹がかかれりさあさあ跳ばな

 

 「ハイどうぞ」見えないケーキ渡されぬ「イチゴがのつてゐます」と言はれ

                                      ろくじふはち      

                  おとうとのほほを撫でやる「元気でね」六十八歳の弟の頬

 

                  病室の窓に山裾ひろげゐる金毘羅山の夕輝きよ

 

 四六判上製カバー装 2500円(税別)