渡辺泰徳歌集『底生生物』

ものを観察するー真摯でやさしい眼差し。

こころの底に堆積する泥のようなものが、

時として勘定をもち、美しく輝き始める。

歌はそれをそっと掬い取る不可解な器だ。

 

ベ ン ト ス

底生生物は哀しきものよこの世より積み来るものを黙し食いおる

 

 

 

『底生生物』より 5首

 

薔薇の字をそうびと読むと知りたりし憂い少なき少年の日に

専門語封印しつつ語らえばわが過去なべて扁平となる

うつくしき周期律には逆らえぬ 核分裂は手なづけられぬ

みずうみの岸に白馬は似合いたり北バイカルに洗われていし

春まだき人間の土地に来たるもの見おろし岬に尾白鷲とぶ

 

A5判上製カバー装 2500円(税別)