多田政江歌集『風の呼吸』

第一歌集に相応しい瑞々しい相聞歌に本集は拓かれてゆく。

誰しもの胸の奥に仕舞われている青春の日々の思い出を、そっと呼び起こすような歌たちであり、純粋さ、直向きさがどの作品からも伝わってくる。 ―平林静代 帯よりー

 

 

『風の呼吸』より5首

 

まっ青なこの空きみに届けんと山のポストに絵はがき落とす

 

照明の消えたる靴屋のショーウインドーピンクの長靴歩き出さぬか

 

車内灯消して行き先<回送>に終バス今日はすでに過去形

 

さわさわと風の呼吸が変わるころ梨より林檎が美味しくなりて

 

イスラムのチャドルの女吐く息も声も殺して黒衣の中に

 

 

四六判上製カバー装 2600円(税別)