曽我亮子歌集『夕陽のまつり』

 

杳き日に父くちずさみゐし「イッツァ・ロングウェイ」あなたの正義胸に緩む

 

幼らを招きて小さき雛の膳ならべて笑ましし母恋ひ止まず

 

父の忌も過ぎて流離の思ひあり寂しき吾等の初夏ならむ

 

寸松庵色紙臨書しをれば春の鳥鳴き過ぎてゆく寂しき曙

 

夏の夜の夢かとぞ見るハッブルの捉へて送る銀河の葬送

 

 

曽我さんは若き時からこつこつと一人で歌を作っていらしたようだが、私の知っている曽我さんの歌はここ十年ほどのものである。

しかも曽我さんは私事を話されないので恋愛時代や結婚生活について私は何も知らないのだが、大恋愛の末に結ばれたらしい夫とも当然ながらさまざまな葛藤があったのだろう。

その影の部分を臆さずうたっているところに、私は歌人としての曽我さんの心意気を見るのである。

鹿取未放・「跋」より