鈴木通子歌集『モノクローム』

 

 『モノクローム』より5首

 

障害ある児は別れし父親を出張中といまだに言うも

 

障害ある二児持ちたりと語るとき人おどろきて我を見給う

 

子を残し去りし夫よなれもまた母と別れし少年時代

 

語らいはつきることなし障害者の友と障害者の母なる我と

 

夕映えの華やぎもちて急ぎゆくかけがえのなきひとときのため

 

家族を置いて去って行った父親を、出張中と告げる児を視つめている母親の心情は察して余りあろう。

その優しさが、作者をして鬱の病を持たせてしまった一因であることを思うと、誠にせつない。

 

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:188頁数

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-094-2