内野信子歌集『つまくれなゐ』

自然やいとしきものたちへの温かなまなざし、

人間としてひたむきに生きようとする姿勢に心打たれる。

巧緻でたおやかな作品は、さらなる世界への展開を予感させて

やまないものがある。

                         ――林田恒浩ーー

 

『つまくれなゐ』五首

 

つまくれなゐと母の呼びゐし花が咲きこころ惹かるる一軒となる

 

草の実を扱きて握る手のひらにいまだ疼けるのゆめ

 

ゆきむしのひとつ流れてまたひとついづく邑のうへにか雪降る

 

木末よりいつきにひらきゆくコブシ讒説はしる早さといづれ

 

                 催花雨の来そうな空をともに見て一会とならむひとと別るる

 

判型:四六判上製カバー装 

頁数:192頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-086-7