森みずえ歌集『水辺のこゑ』

娘を乗せて電車曲がりてゆきしあと駅のさくらのしんと匂へる

生まれたる水辺のほかをまだ知らず水とりのひな母に従きゆく

ひしめきて稚魚のぼりくる朝の潟はなのやうなる海月も混じる

雪やなぎ白たわわなるその下に二人子睦みゐたる日のあり

森の上にひとたび浮いてゆつくりと水に降りゆくしらさぎの脚 

 

鳥の声、虫の声、風に揺れる木々の声。

みんな純真な嬰児(みどりご)のように思えてくる日。

誰かがどこからか私にそっとささやきかけてくる。

 

もう、急がずに衒わずに

歌を詠めばいいのだよ。

 

四六版上製カバー装 2500円・税別