水鳥のごとくアイロンすべらせてシーツの小さき波を消したり
〈「シーツにアイロンをかける場面と水鳥が水面をすべる光景の連想が見事。比喩が大らかで、のびのびしていて、読者を楽しい気分にみちびいてくれる」。幸綱氏が小寺作品の特質をとらえて高く評価したこの一首から歌集タイトルは採られた。〉 伊藤一彦・跋より
さくら背に母と並びて写真撮る石段ひとつ高さ違えて
掠れゆくこともしないで突然の別れのごとくインクが切るる
五枚目に漸く呼吸の合いてきて夫と二十枚の障子張り替う
もう少し雨と呼ばれていたいから川面の水に溶けないわたし
五秒後に落としてしまう西瓜抱き写真のなかで微笑む少女
四六版上製カバー装 2500円・税別