高野しずえ歌集『花開く』

 

悲しみは短歌に詠みて打ち捨てよと言いたる人の今になつかし

金髪のジーパン姿の研修生名はマルガリータ女子大生なり

難産にて命落としし仔をさがす親牛の声は真夜に聞こゆる

両の手に落葉拾うやほろほろと秋逝く匂い胸に上りき

嬰児の髪にそよろと触れて行く微風は夢の仲間なるらし

 

影にさえつまずきそうになる我に駆け寄りくれる三歳の孫

 

本集の素材と内容は多彩であり、単なる酪農育牛でなく、如何に生くべきかを問いかけるルポルタージュ文学としての側面が強く、後世にリレーすべきものは何かを問いかけている。

                       内田紀満

  

 

A5版上製カバー装 2500円・税別