垂れ下がる反旗映せる水に沈み眠たさうなり肥えた鯉たち
日没の慎み容れて教室はだれのものでもない刻に入る
言ひかけて言はず去る児は不平ではなくて母恋ふ瞳をよこす
影あらばわれは生き行く一本の葦なる比喩を疎んじながら
手のひらにつつむ湯呑に湯が六分そのぬくもりの一生と思ふ
他界の眼。生も死も一枚の研ぎ澄まされた刃物で切り刻まれた断片にすぎない。現実も夢も、家族も生徒も、変化する風景ですら、自らの心象を吹きすぎてゆく風の輪郭。
さらば歌よ!反世界を揺るがす木魂となれ!
四六版上製カバー装 2500円・税別