川本千栄歌集『樹雨降る』

ドーナッツ・竹輪・蓮根・フエラムネ 穴あいて天はいつも落雷

両の手を厚く重ねて本に置く 私の夏はかがやく欅

時雨ふいに降る時は降るその時は濡れればいいのだ木の間の雨に

サンタはママかと語気荒く聞く子のおりて未だわれには恩寵のごと

ものの隅見えざる深き闇にても抱かれる時は眼を閉じるなり


やわらかく、しなやかな言葉を刻む生の時間。あたかも木々の葉や枝から落ちる水滴のように。


日常の時空の隙間からわずかに洩れ聴こえてくる声をそっと掬い取るゆるぎない感性の横溢!


A5版上製カバー装 2700円・税別