菅野初枝 本保きよ歌集『立葵の咲く日々』

洩れ出でて地上を照らす灯し火の一つだになき夜空の深さ

告ぐる日もなくて消えゆくおもひかと白くのこれる月に淋しむ

霜よけにかけしむしろも陽反りゆく今年はじめて咲く花の上

菅野初枝

 

〈ラ・セーヌ〉の濃きコーヒーよ わが裡に風荒れしまま秋深みゆく

板切れに父は〈七人無事〉と書き立ち退き先も焼け炭で書く

うから四人奪う戦と知らざりき十二月八日 今朝の空澄む

本保きよ

 

姉妹の二人歌集である。長い長い歳月と歴史を温めて世に出ることになったことをまず喜び、お祝いしたい。

中沢玉恵

 

四六版上製カバー装 2500円•税込