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十年の時間は過ぎぬサンフランシスコに紙飛行機かふわりと着地
別れれば独りで歩む背を見つつ母はひたぶると思いくるるか
オレンジのグラジオラスは君のようなぎ倒されてる台風ののち
歩む道は息子とわたしに違いあり秒針どどどと傾き進む
石を投げ石が消えゆくところまで歩いてみよう それから それから
辛く重い過去を秘め持ちながらこの歌集の風景はけっして暗いものではない。日本とアメリカを往復しながら、日本語と英語を往復しながら、明るく軽やかに短歌のつばさをはばたかせている。作者にとってこの古い日本の詩の形式は、こころのスケッチのためのこの上なく親密で、なくてはならないツールなのだ。
小池光 帯文より
四六判上製カバー装 2500円•税別