中村雅子歌集『雪に従ふ』

身めぐりを踏みかためをりし肢萎えの犬のいばりが新雪に濃く
逃げられぬまま水の星に身をゆだね雪にけぶれる原発みをり
ともなふは風ばかりにてたよりなく足のしづまぬ凍てし雪ふむ
しもづきに入りて這ひずり草ひけど終らぬがまま雪に埋もるる
小樽運河の昏みにゆらぐ斜の灯に浮かび乱るる雪のはなやぎ

 

どうしようとも雪は雪

だが北の大地を埋める白は

幻白さながら心に残る

どのように雪に従うか

その応えは歌のなかにある

 

福田龍生 帯文より

四六判上製カバー装 2500円・税別