寺田惠子歌集『集真藍』

君の住む街を通りて行く先はモネの「睡蓮」咲く美術館

一枚の板を彫り抜く職人芸「ほたるぶくろ」を吾は求めぬ

スプリング•エフェメラルと人の言ふ春の妖精しなやかに咲く

アンネの薔薇咲いてゐるとか二人して探しゆくなり初夏の教会

藍色の小花を集め咲く紫陽花 その花の名は集真藍(あづさあゐ)とか

 

集真藍という漢字に広がるイメージは、とても美しく、声に出して「あづさあゐ」とつぶやいてみると懐かしくなる。その言葉に惹かれ、こだわり続けた彼女の文学的な感性を私は信じたいと思います。

角宮悦子

 

四六判上製カバー装 2500円•税別