梶原房恵歌集『桃の表情』

音もなく土に沈みてきさらぎを弥生へ渡す雨の明るし

畑に咲くさだめなき風ある時は花摘む吾のふところに入る

仕分けゆく桃の表情 木の下に壮年の姿(かげ)顕ちてくるなり

草ぐさの結実までの物語聞くごとく居る鎌を休めて

 

果樹園には桃の木々、

咲き競う花々は野を桃色に染め上げ、

やがて甘い香を放つ極上の果実となる。

桃への深い愛情が歌となって、

たっぷりとみずみずしい果汁を滴らせる。

 

A5版上製カバー装 2500円•税別