佐々木邦雄『遠花火』

はしご酒臨界越えてワープせし

      宇宙の果ての止まり木にとまる

 

初期の作品と思われるが、宇宙的な孤独感をも纏っている。そのスケールの大きさには、驚嘆するばかりである。自在で詩精神の横溢した世界である。  光栄堯夫•跋文より

 

シーシュポスの呪縛断ち切りうら若きミューズの神と短歌に遊ぶ

閉ざされし「赤の広場」に雨しぶきわが青春のレーニンは杳く

ぬばたまの夢の続きか遠花火あがりてはまた音もなく消ゆ

わが裡に潜める鬼の持ちゐたるナルキッソスとふ冷たき刃

モウダメダともマダコレカラとも思ひつつ季(とき)にたゆたふ欅の古木

 

四六判上製カバー装 2400円•税別