福留佐久子歌集『青き鉢花』

十代に夢あきらめし八十路のひと通信講座で絵画始める

髪型の似合ふを褒むればおすましで媼は答ふ「皆もこげんよ」

下半身と上半身を別々の境地ならしめ雨の露天風呂

歩幅の差あれど気分の差はなきか散策の歩調けふは夫と合ふ

青色はこころ癒すと誰か言ふ意図せず増えし青き鉢花

 

絵画を習い始めようする八十歳の老人や、記憶を喪失してでも、その声で「私」を認識してくれている媼、散髪をしてもらって若返った姿を褒めると「昔もこげんよ」と、地元言葉で返す媼等々、それらに寄せる作者の視線は暖かい。

浜田康敬•跋文より

 

四六判上製カバー装 2300円•税別