村島典子歌集『地上には春の雨ふる』

にんげんは必ず死ぬと告げられて地球の出づる月の平原

入口は出口なるべし診察室の扉のなかは真つ青な空

青ぶだう紫ぶだう水晶のごときしづけさ死者のいきざし

この島をえらびて棲みしわれの子の胎にありにし日のごとき海

花ゆれて夕暮あましこのくにを愛するものら野をわたりゆく

 

苦しみ、悩み、かなしむほどに歌は異形の輝きを見せる。大和吉野、近江、沖縄•渡嘉敷の風土との邂逅を経て。前登志夫にもっとも近い詩的磁場で、今なおこの世に他界を見続けている。

四六判上製カバー装 2500円•税別