石川輝子歌集『水無瀬川』

不意によぎる時雨にうたれ炎なす狭間のもみじ蒼白となる

池底よりわく水あれば氷河期の浮水植物はまなうらに咲く

かえで葉の翳あやなせば含羞のおもて湧きくる峡の石仏

バラ色の未来ゆめ見しわが影のいたく小さく夜の道をゆく

 

鮮烈な歌集『シネマ』を遺した新芸術派の石川信雄、その実妹の第一歌集。一人旅を愉しんだみずみずしい初期作品で、のびやかに各地の風土を称える。透明な感受性に注目する。(篠弘)

 

四六版並製カバー装 1200円•税別