南鏡子歌集『山雨』

ほうほうといのち浮き立つ春日(はるひ)なれ むらさきの鶴みづいろの鶴

ひんやりと萩の風くる夜明けがた月もうさぎももう消えて

誰も居ぬちちははの家山雨して梅のあを実に酸こごる頃

雨の日は車前草もひくく濡れてをりあをいいのちの雨のおほばこ

 

南さんの歌はすみずみまで充実して、満ちている。どこもとんがっていない、壊れていない。さびしいさびしいと訴える歌が目に立つが、その「さびしさ」こそ充実してつやがある。  光田和伸•跋より

 

46判上製カバー 2500円•税別