岩澤ます子歌集『好文木』

尋常(つね)ならぬ姿さらしてなほ生くる梅に讃辞の神酒(みき)をそそぎつ

百年を過ぎたる梅の深き黙(もだ) 青苔•宿木•洞を抱へて

単数の一羽はさみし複数の二羽あたたかし番を見つつ

のびのびと少年らしく良き名なり長十郎という名の梨は

親の株•子株•孫株•曾孫(ひこ)株と継ぎつつ椎の百年過ぎぬ

 

梅の木の根元に三体の〈わらべ地蔵〉が居た。それぞれ柔和に、首をかしげて、丸い顔でにこやかに談笑しているではないか。思わず合掌してしまった。あたかも梅の古木を守っているかのようであった。  吉宗紀子•跋より