羽場喜彌歌集『心象風景以後』

散りしける桜もみぢの黄をふめばまことかそけき音立つるかな

かたはらに眠れる妻はまどかなる菩薩の貌せり汗に覚むれば

性愛のことなどふとも思ひたり晩夏光ゆらぐ道あゆみ来て

いささかの湿り帯たるはなびらを救ひのごとく掌に受けて

好きなもの少量あればそれでよし生の証しもお酒のことも

 

歌誌「心象」創刊•発行人。会社経営者として半世紀近くの苦悩多き日々。齢九十を越えてなお、人生の現役たり続けたうたびとを支えたものは何だったのか。酒を愛し、妻を愛し、歌をこよなく愛した。余燼尽きるまで、なお•••

 

四六判上製カバー装 2625円•税込