伊東ミイ子歌集『やわらかな域』

観る人も訪う人もなき滝桜ゆわんゆわんと揺れる夏の日

なにもかも失せゆく母のメモリーに吾を産みくれし霜月がある

思考せよ何が変わるか深くふかく漆黒の闇に物見ゆるまで

ことさらに白黒つけることもなしグレーゾーンのやわらかな域

 

敢えて、簡単には白黒をつけない。そういう行き方がある。それは、ほんとうに辛い時や悲しい時を生き抜くための知恵なのかもしれない。

3.11の後もなお、しぶとく考えつづけ、歩み続けていかねばならない私たちの、有効な方法を“やわらかな域″に見る。 久我田鶴子

 

A5版上製カバー装丁 2625円•税込