水本光歌集『残照の野に』

よき桃を作る秘訣は日に一度樹にふるることと父は言ひたり

桃畑に摘花続けて日すがらを蜜蜂のごと花粉を浴びぬ

指先より離れて土の上にのる種子に願ひをかけて覆土す

菜園に住める蜥蜴はひすがらを青虫食みてわれを励ます

谷川の崖を覆へる羊歯の葉に猿の親子がぶらさがりゆく

 

農業を愛情を込めて歌っている点において、そして、農業に従事するなかで培われた自然への豊かで鋭い眼差をもっている点で意義と特色をもつ。伊藤一彦•跋より

 

四六判上製カバー装 2625円•税込