工藤章歌集『愛日ー遥かなるシュプール』

アイガー、メンヒ、ユングフラウの峰々を思ひ描けば冬は楽しも

さくら花春の光に耐へきれず花びら散らす風のかたちに

地震•津波•やませの絶えぬみちのくに合掌土偶の祈りはつづく

揺られつついつしかふるさと思ひ出す津軽の海の少年のわれ

黄昏の孤峰に対きて自問する「老いを生き抜く勇気のありや」

 

心ゆくまでアルプスを滑る。新雪にシュプールを描く。

自らの人生の来し方、その軌跡のように歌が弾む!

 

A5判上製カバー装 2625円•税込

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コメント: 2
  • #1

    篠崎禎子 (金曜日, 06 9月 2013 10:34)

    最近心に残る一書でした。
    75歳から短歌教室に通い、主にそこでの作品をまとめたとのことですが、短期間でここまで成し遂げる胆力・集中力には感服しました。
    短歌のみならず、一線を退いてから始めたというたくさんの趣味、特に山スキーには度肝を抜かれました。
    [愛日]という表題も含め、単なる短歌集を超えて、老境に在る人々への絶大な応援歌だと思いました。
    私は少女期雪国で育ちましたので、桜・雪・風 四季折々の風物すべてがわが思い出と重なり、胸熱くなる思いで読みました。

  • #2

    北向 遼 (月曜日, 09 9月 2013 18:01)

    「八十歳の第一歌集です。」とあとがきにありました。八十歳には、どんな世界があるのでしょうか。

    黄昏の孤峰に対きて自問する「老いを生き抜く勇気のありや」
    抱き来し夢の残りのいくばくか照りかげり見ゆ行き合ひの空

     八十歳は、かつて見た夢を実現する季節なのかもしれません…

    遙か来しゴールドコストの潮騒にサンダル脱ぎて渚かけゆく
    傾斜四十度ワールドカップのダウンヒル蝸牛となりてわれは降りゆく
    プロコフィエフ「古典交響曲」を聴くたびにシベリア疾駆の蒸気機関車

     純粋に求め、はげしく、静かに行動する時を重ねながら…

    散華せる兵らは何を祈りしかサザンクロスを静かに仰ぐ
    智恵子様 怖いもの降るふるさとに「ほんとの空」はなくなりました
    みちのくはいつまで都のロジなるや黄金(くがね)に人馬、食に原発 ロジ~ロジステックス
    本屋消え薬局やたらに増える都市(まち)どこを病むのか誰も知らない

     過去の過ちも今の過ちも噛みしめ…

    ふるさとのゆたけき光り孕みたるりんご「つがる」をゆっくりと剥く
    地吹雪は二月の白魔 視野(め)を覆ひ呼吸をふさぎ抒情を奪ふ
    散り際の木々のつぶやき聞きたくてぶなの林へ歩み入り来つ

     うぶすなの風土につつまれながら…

     そのような、老熟の喜怒哀楽のシュプールから、冬のひかりのような美しさとあたたかさが漂ってきた歌集でした。